閑話・魔法学園の魔法使い
今回も勇者はお休み中です。
次からは勇者視点に戻ります。
・・・『転移』
クレア・コラプサーは転移の魔法を使い、エスター王国から魔法学院の研究室に瞬時に移動する。
「急いで、解毒の用意をしないと、それに、他の人達も心配だし、急がないと・・・」
勇者の下から体を動かして勇者を床に横たえる。矢を背中から抜いて、服を脱がしにかかる。
「・・・この服どうなってんのよ・・・?」
勇者の服に悪戦苦闘していると、研究室の扉が開かれ、メイド服のような服を着た少女が入ってくる。
「・・・部屋の主が何をしようと構いませんが、同意の上ですよね・・・?」
「いや、違うの、毒を受けたから、治療したいのよ」
ほう、と目を細めて、部屋に入ってきた少女は矢を拾い、舐める。
「ちょ、毒って言ったのに!」
「大丈夫ですよ、人間に使う毒など」
矢を放り捨てると、勇者の服を力ずくで引き裂く少女。
「な」
「緊急事態でしょう?毒は麻痺毒と眠り毒に加えて、魔法毒の魅了効果を発揮する毒物です。万能解毒薬があったはずではないですか?」
「え、ん、どこだった、かな・・・?」
「自分の研究室のものぐらい把握しておいてください、まぁ、隣の部屋の奥の棚の上の方にありますよ」
「わかった」
少女は立ち上がり、風呂場へ行くと、桶を拾い、勇者の横に戻ってくる。
傷口から血を吸い出し、桶に吐く。
「・・・ん、やはり、この血は・・・とても、美味しいですね・・・はぁ、治療せねばならないのに、とても欲しくなりますね・・・」
数度血を吸い出したところでクレアが戻ってくる。
「何して」
「毒を体に残したままでは治療の意味がないではありませんか」
「ああ・・・?」
思考停止したクレアから薬を奪い、傷口に掛ける。瓶の中身が半分程になった所で勇者をひっくり返し、口から少量飲ませる。
「・・・ふむ、魅了毒のせいで意識がないのですね」
「どうすればいいの?」
「このまましばらくは安静にしておいた方がいいかと。・・・血と汗のにおいが酷いのでせめてお風呂に入れたいのですが・・・」
そう言って服をはぎ取る。
「ちょぉ、シルビア、心の準備が!」
慌てて顔を隠すも指の隙間からチラチラと勇者の体を凝視しする。
「クレア、指の隙間からチラチラ見るくらいなら、隠す必要もないでしょう」
「い、でも、乙女としてね?」
「・・・年齢的に手遅れでは」
「25歳はまだ大丈夫・・・!」
「人間の間では20過ぎればオバサンの仲間入りではなかったですか?」
「・・・」
床にorzの態勢で倒れこむクレア。
「・・・こちらはこっちでやっておくので、学園長に一応顛末は話しておいた方がいいのでは?」
「そうだった・・・ああ、でも、あっちの状況ももう一度確認してこないと、転移で様子見てくるし、勇者の事たのむわ」
「わかりました。気を付けてくださいね?あなたがいないと部屋の掃除のしがいもありませんので」
「そこ?」
「そこです」
クレアは転移の魔法を使い、エスター王国へ転移する。
「こちらは体を拭くのと、替えの服を用意せねばなりませんね・・・」
*
しばらくしてクレアは王国から戻ってく来た。その後学園長の元へ。
服飾を得意とする仲間の元へ。途中で魔法使いの従者に話しかけられる。
「おや、シルビア、男性用の珍しい服を持っていますね?」
「クロード、ええ、クレアが連れてきた方のですよ。戦闘で破損したらしいので復元できないかと」
「おや、クレア殿が戻っているのですか?」
「先ほど」
「ふむ、ありがとう」
それだけ聞いて急いで歩き出す。
「・・・これだから、主人命の飼い犬は・・・」
「そこも人気でしょ?」
「ああ、よかった、この服を復元できないかしら?」
「服でしょ・・・?」
怪訝そうな顔で手に取ると、改めて疑問符を浮かべる。
「何、これ?」
「服」
「そこは見ればわかるわ、どんな技術で作られてるのよ?ここまで正確で均一な方法で作られてるとか人の手で作られていると思えないわよ?」
「え、そうなの?」
「・・・まぁ、服にそこまで興味ないからだろうけど」
「彼の服全て持って来たけど、あ、下着は一応洗っておいたわよ?」
「・・・下着は無事みたいだけど、代わりの服は?」
「毒を受けて動けないから、そのままベッドに置いてきたわ、代わりのシーツとか持って行ってお風呂に入れる予定よ」
「・・・うわぁ、全裸で放置されるとか・・・しかも病人でしょ・・・何してんのよ」
「まずいかしら」
「・・・まぁ、いいわ、替えの服も渡しておくから」
「でも、その前にお風呂に入れないと」
「病人なんだから拭いてあげてー?」
*
「学園長失礼します」
「・・・おお、クレアか戻っていたのか・・・いつだ」
学園長と呼ばれた女性は見るからに若い。エルフ。長命種の中でもポピュラーすぎる存在。しかしながら、あまり人との交流はせず森に引きこもる種。そんな種族が学園長を担っている。
「つい先ほど」
学園長に促されてソファに座る。
「で、どうだった?」
「まず、姉さんの行方は不明のまま、手がかりも一切なし、痕跡を消されたか、姉さん本人が消したか。わからなかった」
「そうか、こちらでも調べてはいるが、いかんせん学園出身で信頼のおける人間となると数は限られてくるからな・・・悪い」
「いいんですよ、で、勇者召喚の魔法陣ですが、成功してしまいました」
「・・・まったく、嫌な予感ばかりが当たるな」
「エルフは占いが得意でしょ」
「占いたくないほど明確な火種でしょう?勇者召喚成功。しばらく荒れることになるわ。今まで勇者召喚の魔法を独占していた教国からは脅迫文が何通も届いている、・・・どいつもこいつも必死だ」
「・・・すいません」
「気にするな、学園長としても、一人の友人としても、当然のことだ。何の相談の無しにいなくなられるのは辛いさ」
「・・・ええ」
「それで、勇者の方は?」
「こちらに一人連れてきてしまいました」
「・・・ふむ、イケメンか?」
「聞くところ違いませんか?」
「既に手を出したのか?」
「出してませんよ、興味を持つところ違いますよね?」
「冗談だ、だが、そんなことをすれば黙ってないのでは?」
「・・・王国でも勇者の扱いに困っていたと思われます。あちらの友人の話では、私が連れてきた勇者は元の世界に帰還を望んでいたようで」
「なるほど、他の勇者は帰還を望まなかったと」
「ええ、姉さんの召喚魔法はあちらで死んだ人間か死にかけている人間を勇者として力を加えてこちらに召喚する魔法です。勇者としての加護は武器を手に取って初めて手に入れられる」
「王国は勇者専用の武器が複数残っていたはず」
「ええ、ですので、勇者の武器を手にしていないので、勇者の加護は持っていないらしいですよ」
「・・・なるほど、帰還を望むなら、帰還の魔法を用意せねばな。教国の勇者が祖国へ帰還した。という話は聞かないからな・・・あれはあれで脅威だからな」
「ええ、私の命に代えても帰還の魔法は用意しますよ」
「無理はするなよ?」




