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第11話「王国・勇者の希望」

 『ヒーリング』召喚魔法師のクレア・コラプサーに治癒の魔法を使う。

 見える範囲では外傷はない。服の下に傷を負っていたらと思うが、意識のない女性の服を脱がすのは精神的にきついのでどうにか手段を考える。アラクネとは既に分かれて囚われの獣人たちを任せたし。メイドたちに頼むためにはもう一度城に戻らなければならない。


「手詰まり、とはいかないまでも、厳しいな・・・・・・」


 ふと、魔力枯渇ではないか?という疑問がわき上がる。身体に異常がなく、精神に異常があるならば、身体に回復魔法をかけても、意味はない。そして、近場で激しい戦闘があったにも関わらず、目を覚まさないのは、精神が疲弊しているからでは・・・?

 最初も謝罪の言葉を零しながら意識を失っていった。

 

「・・・やるしかないか」


 『魔刃鍛造』を用いて、ナイフを作り出す。指先を切ろうとして、戦闘で汚れている事を思い出し、魔力で水を集め洗う。残念ながら制服の内側にあるハンカチも汚れていて拭くものがないので、そのまま親指少しを切りつけ、血が流れるのを確認。


「失礼、あとで説教されますのでごめんない」


 魔法召喚師を抱きかかえ口に親指を添える。赤ちゃんにミルクを上げるのこんな感じだったなとどうでもいいことを思い出しながら、流れる血を飲ませる。


「・・・!」


 殺気を感じ、シールドを展開。


「今のを防ぎますか、さすがですね?魔王の力の恩恵ですか?」


「弓の。今、取り込み中なんだ?後にしてくれないか?具体的には来世あたりで」


「は、何を馬鹿なことを、今すぐその人を解放しないさい。そして、無駄な抵抗をせずに、投降するのです」


 木々の間から弓を構えた弓の勇者が現れる。名前なんだっけ?


「断る」


「では、仕方ない」


 魔法召喚師を抱きかかえているにも関わらず、矢を放つ。


「・・・冗談だろ」


 影犬が矢をはたき落とさなければ、魔法召喚師に間違いなく当たっていた。


「なんのつもりか、聞いてもいいんだろうな・・・?」


「人質をとられたので仕方なく人質ごと魔王の手先を殲滅した。仕方がありませんが、魔王の脅威を減らすためには必要なことでしょう?」


 矢の対処を影犬に任せ、魔法召喚師を地面に寝かせて、シールドで覆う。


「使い魔を使うとは、卑怯ですね、一対一で戦えないのですか?」


「おいおい、無関係な人間を殺そうとして何言ってんだ?」


 勇者を召喚した人間だが、なおさら魔王とは無関係だろう。


「杖の、君も無関係に兵士たちを殺して回っただろう?」


「なるほど、お前と話す意味はなさそうだな」


 『魔刃鍛造』ゲイボルグ。アイルランドが英雄・クーフーリンの武器とされるゲイボルグ。突けば心臓を貫く、因果を捻じ曲げる槍。どこまで再現できているかわからないが。


「リーチの差を理解できないのですか?槍ごときで弓にかなうと?」


「うるせぇよ、いちいち口から糞はいてんじゃねよ、ゴミが。悪臭で環境汚染してんじゃーねぞ」


「ようやく本性を現したか、ゴミは君だろう?人類に仇なすケダモノめ」


 弓を構え矢を放つ。しかし、狙いはこちらではなく、魔法召喚師。


「なっ!」


 矢を慌てて打ち払う。


「おまえ・・・!」


「そこまで怒りを露わにするということは、そちらの女性もやはり魔王の軍勢か。ここで二人まとめ」


「・・・それ以上しゃべるなゲスが・・・」


 ゲイボルグを投げる。


「は!武器を捨てて投降するのですか?残念ながら、今更認めませんよ?」


『貫け!ゲイボルグ』


 声に反応したのかゲイボルグは軌道を変え、弓の勇者の胴をかすめる。投降するきなど、かけらも、無い。 


「くっ、不完全ながら追跡する力があるのか・・・!」


『魔刃鍛造』銀の腕。水銀のような液体が両腕を覆う。手の甲に結晶体が付いている以外特徴がない。


『ベルセルク』身体を強化する魔法が複数同時に発動。全身を燐光がおおい、魔力による補助が行われる。


「聞く耳もたずですかっ!」


 一直線に距離を詰める。矢が放たれるのを見て、液体に包まれた腕を広げ矢を受ける。手に突き刺さると思われたが、液体が形を変え、手の平に集中。弓を受け止める。


「何だそれは・・・?」


 掴んだ矢を撃とうとしたが、射出することが出来ない。


「ちっ、金属じゃないのか、魔力そのものを物質化したダークマターといったところか」


 放った矢をこちらも撃ち返す。という手段をとりたかったのだが、矢が金属ではないため、砲弾として使用することが出来ない。距離を詰めて普通に拳打に変える。


「魔法使いのくせに近接戦闘だと?勇者である僕にかなうと」


 弓を剣のように構える。


「はっ!」


 技術も何もない振り下ろし。日本で剣道の相手をしていたほうがまだ脅威と思える。振り下ろされる弓を左手でつかみ、引き寄せる。バランスを崩した腹にアッパーカットをぶち込む。弓を手放した勇者が腹をおさえて転がる。


「・・・おいおい、これだけでダウンか?」


「が、よく、も」


「しゃべれる元気があるんだな、もう少しぶっ飛ばしておくか」


 転がる勇者を蹴り飛ばし、魔法召喚師から遠ざける。隠し玉があるかもしれないので先ほど戦闘をし、テンペストで木々を薙ぎ払った場所まで蹴り飛ばす。


 『シールド』一応動けるようになった時の為に、拘束しておく。シールドはシールを作る範囲内に何かあった場合、それを壊さずにシールドを生成する。この特性を利用すれば、相手を拘束できる。ただし地面や床にしか拘束できないが。


「さて、弓の、お前に聞いておくべきことがある。偽ることなく答えればよし」


「き、話す、ことな、ど、ないね」


 内臓にダメージを与えすぎたか?


「お前は、本気で俺が魔王と手を組んでると思ってるのか?」


「当、然」


「少し考えればわかると思うが、いつ、魔王と手を組めると?」


「別、行動、したでしょ、う」


「たったそれだけでか?」


「勇者、として、救いの、声を、無視した、お前は、人間じゃ、ない」


「あー、はいはい、特に根拠はないわけね」


 時間の無駄だと判断。今のうちに召喚師殿を連れてこの国を出ようと決める。魔法召喚師の元へ戻ると、鎌、楯、斧の三人が召喚師を前にどうするべきか、言葉を交わしていた。


「斧、鎌、楯、どうかしたんですか?」


「その訳仕方は酷いと思います」「せめて名前で・・・」


 鎌と楯を無視して斧が二人の前にでる。


「・・・この召喚士殿をどうするべきかとな、いきなり運んでも問題があるかもしれないしな」


「お。僕に、任せてくださって構いませんよ」


「・・・行くのか?」


「ええ」


「帰還する為の方法はあったのか?」


「まだですよ。ですが、ここにいても、僕も、召喚師殿も危険だ。召喚師殿が戻りたいというなら戻ってきますが・・・ここは安全ではないですしね」


 会話しながら、魔法召喚師を確認。盗聴器など仕掛け等をされていないと思おうが。そもそも存在しないよね。抱き上げようと背中に手を回すと、召喚師が目を覚ます。


「ん、んん?」


「あ、目が覚めましたか?」


「ああ、ああ、ごめんな、さい。ごめんなさい」


 涙を流しながら謝罪の言葉を続ける召喚師。


「謝られても、何が・・・」


 唐突に背中に衝撃を受ける。


「・・・!」


「何」「敵」「弓の勇者か・・・!」「誰よ!?」


 慌てて召喚師に覆いかぶさる。


「きゃ」


「敵!」


「・・・出て来い」


「あああ、くそ、なんだ、これ・・・」


「動かないで、毒よ」


 召喚師・クレアの冷静な声に安堵をする。


「・・・召喚士殿、そいつを連れて逃げられるか?」


「時間を頂戴、あなたたちは?」


「問題ない」


 『ミラーウォール』


「これで、遠距離魔法から身を守れるはずよ」


 『プロテクト』『ヘイスト』『クイックドライブ』『パワー』


「頼むぞ召喚士殿、そいつ」


「や、めろ・・・」


 薄れゆく意識の中で、黒衣相手に戦闘を仕掛ける三人の背中に手を伸ばす。


 ・・・『転移』

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