第10話「王国商館・王国の影」
影猫たちを走らせて街中で怪しい人物がいないかを探させる。感覚を繋げる事が出来るが、複数体と同時につなげるとこちらが情報を処理できないので一体ごとに確認する。
「しかし、この状態は、無防備だな・・・」
片目で猫の見ている風景を確認しながらだと、見ている風景が混ざりよくわからないことになる。
「・・・どこかに身を隠せて兵士たちにが来れない場所を探してからか・・・」
「いい場所があるわよ?」
「・・・念のために聞きますけど、妖精の森じゃないですよね?」
行ったり来たりあっちこっちで疲れそうだが・・・そういや、こちらに召喚される前にクレープを友人らと食べたのだが最後だったなと思い出す。
半日、一日喰わなくてもそれなりに動くが、いかんせん非日常が突撃してきたので疲労はだいぶたまっている・・・。
「屋根の上なら兵士たちもこれないわよ?」
「・・・そこ行けるのアラクネさんだけですよ?」
城の中に潜伏できるような場所がないため、仕方なく屋根に上る。シールドを足場にして屋根に飛び上がる。
「・・・しまった、メイドさんに言伝でもしておいた方がいいのか・・・?」
「私が行こうか?」
「おい、危険生物」
「その呼び方は無いと言いたいけど、普通の人間には脅威だったわね」
「・・・森に引きこもってるせいで常識が欠如しましたか?」
「酷い言われようだけど、気にしたら負けよ?」
アラクネは屋根から飛び降りると城に侵入する。
「・・・こちらは魔法召喚師さんを探さないと・・・」
シールドで身体を多い、影猫達と感覚を繋ぐ。
街中では消火活動がだいぶ進んでいるが、火はまだ燻っている。混乱に乗じて火事場泥棒を行う者。女性を暗がりに連れ込み犯そうとする者。犯罪者たちを背後からの一撃で意識を刈り取り他に怪しい人物を探す。
「・・・火事に乗じて盗みとは・・・それにしても、勇者は何をしているんだ?」
ミノタウロスを追うのに夢中で街の中の混乱は兵士に丸投げ。部外者である勇者がこちらの常識は知らなくても、ある程度は予測できると思うが・・・。
「・・・!」
火事の街中から離れる人間を複数補足。後をつけさせて、怪しい人物が入っていった建物を確認。・・・商館にに見えるが、入っていった人物は商人には見えない。他には兵士の宿舎に、城に向かっていた者もいる。
城に向かっていた者は連絡係かだった。緊急事態だろうか円卓に座っている国王、そして貴族らしき人物たちと言葉を交わしている。影猫の見ている部屋に姫などの姿はないが、城の周辺にいる貴族だけが集まっているのだろう。
「ハズレか・・・」
「え、何が?」
いつの間にか戻っていたアラクネが食べ物を所持している。パンとキャベツらしき野菜。キャベツだよな?
「・・・何してるんですか?」
「見てわからない?食事よ?糸をだいぶ出したからね・・・キャッ」
キャッっていう言う意味が分からないが、流しておこう。
「・・・パン、一つもらえません?」
「・・・流すのね」
パンを一個放り投げる。コントロール悪いのか、手の届く位置からだいぶ外れている。
『魔刃鍛造』
柄のない、刀身そのものの刀を作り出し、パンを突き刺す。
「何という魔力の無駄遣い・・・」
「投げるの下手なせいだろ」
「糸を張り付ければ問題ないわ」
いや、精神的に蜘蛛の糸まみれにされた食べ物を口に含みたいとは思わないんだが・・・。
「・・・自分で食べれるんですか?」
「罠張ってから待った動物をしとめて食材にしてるわよ」
聞きたくなかった。深呼吸して影猫達の動きをみる。やはり、商館らしきところがあたりだった。商品の輸送なら怪しまれずに大荷物を運べるからか?
「・・・半日の出来事なのに、異様に長く感じる」
「見つかったの?」
「ええ、外に人員は割いていませんが、人がいます・・・なるほど」
「何かあったの?」
おそらくは逃げるための通路だろう?奥の部屋のさらに奥に続く通路を発見した。影猫に追わせたおかげで内部に侵入するのは容易いが、奪還は難しい。
まず、商館に入るために扉が一枚。次に、倉庫に入るために一枚。そして、倉庫の隠し扉が一枚。この時点で三枚の扉をぶち破らなければならい。
「・・・アラクネさん、亜人と思われる人たちが鎖につながれています」
「ほんと?」
「ええ、つながれている人たちを妖精の森で保護することは可能ですか?」
「・・・無理。とは言えないけど、難しいと思うわ・・・」
「そうですか・・・なら、解放するだけにしましょうか」
「・・・解放したところで、助かるの?」
「生きたければ、逃げ出すのではないですか?」
「無責任じゃない?」
「残念ですが、僕は神ではないので。僕の手で助けられるのは限られていますよ。ましてや、僕はここの世界の人間じゃない・・・帰還する為に利用できそうだから解放、可能ならば妖精の森で保護を。と、思っただけですよ」
「・・・ずいぶん、あっさり切り捨てるのね・・・?」
「そりゃ、助けられるなら助けたいですよ。ですが、出来ないことをしようとすれば、こちらの行動もうまくいかない。誰かを助けるのは、自分の行動に支障が無いようにするのが当然ですよ」
子供を助けるために、死んだ自分の事は言えないけど。と思うが、手が出てしまったのだし、仕方がない。と押し込める。
「・・・で、どうやって助けるの?」
「商館を燃やします。商品を失えば痛手ですからね。逃がそうとするでしょう。ね?」
「うわぁ、悪い顔してる」
空中にシールドを展開し商館へ。既に影猫たちに火を付けさせて回ったので残りは時間の問題。
「・・・どこだ?どこにいる?」
商館の扉をぶち破り中に入る。迷うことなく倉庫に、そして、倉庫の奥に。火事が発生したおかげで人員はいない。奴隷たちのおかれている部屋にたどり着くと、一人の男が奴隷たちの牢の鍵を外そうとしていた。
「・・・お、まだ残っていたか、おい、奴隷共を」
『魔刃鍛造』レーヴァテイン。
男の額に剣を向ける。
「魔法召喚師はどこにいる?」
「な、」
「時間がない、燃やすぞ?」
「・・・奥だ」
「ありがとう」
剣を下ろし、横を通り過ぎ、ようとしたが、男が剣を奪おうとこちらに腕を伸ばす。
「・・・忠告は、したぞ?」
男の動きが止まる。アラクネの糸に絡めとられた男が天井につるされる。
「任せても?」
「影猫たちがいるから問題ないわ」
影猫たちはしっぽを使い牢の鍵を開けていく。奴隷たちはアラクネに任せれば大丈夫だろう。
扉を破壊して奥に進む。
「・・・ここか」
「ゆ、勇者・・・!」
相手が反応するよりも早く動く。剣を一閃させながら、魔法を展開。
『ベルセルク』
身体強化し力任せに剣を振るう。兵士たちが反応するよりも速く、速く、速く。
数名の兵を切り捨て、燃やす。
「魔法召喚師どのを、渡して貰おうか?」
「断る」
指揮官らしき人間は召喚師を抱え、奥に。逆に兵たちがこちらに向かう。
「捨て駒ご苦労」
『ソニックブーム』
衝撃波で兵士たちを壁に突き刺さるオブジェに変えて、あとを追う。洞窟をそのままくりぬいた通路。身体強化の魔法を相手も使っているのか、おもいのほか距離が開いたのか・・・。
通路はすぐに行き止まりになる。
「・・・見事に罠にはまった感じか」
目を閉じ、風の流れがないかと感じる。
幽かに感じる風の流れをたどると、横穴に目立たないように岩肌の色が違う部分がある。
扉をぶち壊して中を探る。気配はないため、すぐに駆け上がる。
「・・・ここは」
階段の先にあったのは森。
「・・・逃げら」
剣が飛来したので、剣を振るう。
「逃がさない」
森の中を剣の飛来した方へ進む。相手は森の中という状況を利用して、姿を見せず剣を投げ続ける。
「・・・あくまで、姿をあらわさないか・・・」
『クエイク』
地面を揺らし、相手の位置を探ろうとするが、一切の反応はない。
『吹き荒れろ、全てを蹴散らせ、隠れた敵を引きずり出せ、テンペスト』
吹き荒れる風が刃となり木々を切り刻み、森を砂塵の嵐で覆い尽くす。
「そこか・・・!」
『貫け、ウィンドカッター』
テンペストに吹き飛ばされて、空中に投げ出された敵を魔法によって貫く。
「・・・あとは、魔法召喚師がどこにいるかだな・・・」
自身を中心に風の魔法で盛大に吹き飛ばしたが、魔法召喚士を飛ばしてなければいいなと思いながら、召喚師をさらった敵の元へ。
「・・・召喚師はどこに?」
「・・・言うと、思う、か?」
「仕方がないな、脳を引きずり出して、直接動かすか」
「・・・」
剣を向けるが、男は既に死んでいた。
「・・・仕方がないな・・・」
魔法の中で使えそうなのは影鬼だけ。他の全ては攻撃のための魔法であるため、むしろこれしか選択肢がない。
犬、なら、鼻で探せるかもしれない。とりあえず、一体影犬を作り出す。
「僕と、そいつ以外の人間がいるかわかるか?」
コクリ。と頷き、犬は走り出す。だいぶ離れた位置にある木の根元のくぼみに召喚師は隠されていた。大した偽装がなされていないのはこちらを処理してすぐさま召喚師を連れていくつもりだったのだろう。
「・・・とりあえず、ヒーリングかけておくべきか?」




