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来るべき時(4)




すると、お父様とキアしか喋ってなかったのに1人の大臣がキアに話しかけた。

その顔色はさっきより悪くなっており精魂(スピリット)対圧のせいだと思われた。



「では、九体の死体は我々の手によって

調べられたのだが全てが人間という結果だった。君の言う通り八体が吸血鬼だったら反応がでるだろう。」


とその大臣は言った



「……その八体の吸血鬼が吸血鬼と人とが混ざり出来た”半吸血鬼”だとしたら…?話は違う。」



「半吸血鬼…?」



思わず口に出すと、キアの真紅の瞳に捕らえられた。まっすぐに見つめられてほんの少し胸の鼓動が早く鳴っていくのが分かった



「”半吸血鬼”とは、人間と吸血鬼との間に出来た子供のことを言う。


この”半吸血鬼”は人と交わることで生まれたため、一時的に『人』にもなれ、『吸血鬼』となると普通の吸血鬼が人を吸った場合だとその人間は死ぬのに対して、”半吸血鬼”が人を吸った場合だと一旦は死ぬが、再びこの世に蘇る事が出来る。


…あの時、奴らは死ぬ直前『人間』と、化してから死んだんだ。だから結果は「人間』としか出なかった。」



とキアは私に向かって説明してくれた。



「じゃあ、半吸血鬼に血を吸われても

私達はまた生き返ることができるのね!」


なら良かったわ…

と安心していると、



キアは


「……あぁ、蘇る事ができるぜ?

血に飢えたあの吸血鬼となってな」


とキアは目線を冷たい灰色の床に向けながら言った。



そ、そんな…

そんな吸血鬼今まで知らなかった。

キア・マクタガートは何にも悪くないじゃない。それなのに、三年間も牢屋に入れられて



「此処にきたのは、真実を明らかにするだけでなく貴方にこの国を救って欲しくて来た」


とお父様がゆっくりと重々しくキアに話しかける。するとキアは目を開いて一瞬驚いたけど、その後冷静になったように口を閉じて



「何か、起こったのか…?」



「あぁ。今、国に散らばっている吸血鬼が入った氷の結晶が溶け始めている。

このままでは、吸血鬼が出てきてしまう


…貴方なら分かるはずだ。

五つの村を順に周り氷を凍らせてを戻してほしい。そして氷の謎を解いとくれ。」



とお父様はキアに向かっていった。体の横の拳は震えていた。それが恐怖で震えているんじゃないことくらい私にも分かった。

力が入っているんだ。


すると、キアはベッドから降りてゆっくりとお父様の前に近づいた。歩くたびに足の足枷の重りが床に引きづられてギギッと変な擦れる音がした。



「…陛下、それは無理な事だ。

俺は今牢屋に服役中なんでな 国を救う前に

罪を償わなくちゃ、ならない。」



「…っ何故?!

私も思うの。貴方しかこのリコラ王国を救えないわ。それに貴方は何も罪を犯してないわ」


私が思わず口に出すとキアは悲しそうな目で



「……さっき言ったよな。姫君。

”半吸血鬼”に血を吸われた人間は吸血鬼となって蘇ると。」



「ええ、聞いてたわ!

しっかりとね!………え、それじゃまさか」



「あぁ、…もう聞いてくれるな」



私は息を飲んだ

じゃ、じゃあ、半吸血鬼によって殺された

エミリアさんは吸血鬼となって蘇り


…キアの手で殺されたのね。


だから、お父様や大臣は”九体の死体”だと思ったの。だって、エミリアさんの遺体にも

斬られた傷があったから。


なんて、悲しいの。幼馴染を2度も死なせてしまう苦しみは私には分からないが、お母様がそんな事にあったら私も牢屋に入ってしまう気がする。



「お願いだ、キア・マクタガート。


出来ることなら私が国を救いたい。でも私の手では出来ないのだ 頼む」



お父様は、キアに向かって頭を下げた。



「お、お父様!!」



「国王陛下!!頭を上げてください!」


お父様が誰かに頭をさげるなんて…

見たことないわ。そんなにお父様切羽詰まっていたなんて 知らなかった



すると、キアは渋い顔をしていたけど、何かを決意したように



「…陛下 顔を上げてくれ。

分かった 仕方ない 引き受けよう


だが、俺は氷の凍らせ方が分からない。

行ってみて凍らせられないようなら もう仕方ない。吸血鬼達を殺すんだ


…あと条件がある」



「なんだ、なんでも言うんだ」



「俺が氷を全部凍らせることが出来たらの幼馴染を生きかえらせてくれ

それが条件だ。」



「……!!」


生きかえらせる…?

そんな事って出来るの?

お父様は驚いた顔をして目を丸くしている


「そ、そんな事出来るわけないわ!

でしょう?お父様…?」


そう言いながら、お父様を見ると


え、動揺してる…?



お父様は、私と同じ碧い瞳が動揺しているのか、グルグルと動き回っている

まさか何かあるの…?



そして、私はこういう時ものすごく勘が冴えてしまう。そして、頭の中で考えが一周した時にはナニカが生まれてしまった。




「……お父様、まさかこの国に魔女がいるというの?…確かこの国にはもう魔女がいなかったはずよ!


…ダメ、私書物で読んだわ。魔女は代償をとるのよ!なにを取られるか分からないわ!」




魔女は、確か昔いた。

だけど魔女は何か願いを叶えるために代償をとるんだ。そんな中で何人もの人間が闇に堕ちたかなんて、書物では書いてない。

…多すぎるのだ



「…分かった その条件引き受けよう」


とお父様がゆっくりと頷いた



「なら引き受けよう」



とキアはベッドに戻り、読書を再開し始めた



「お父様…!?」



私が驚いてお父様にその言葉をひっくり返すように詰め寄ろうとすると

いきなり先ほど喋っていた大臣がガクッと床に膝をついて倒れていった。開いた口からは泡を吹いていて体は痙攣している。



まさか、精魂(スピリット)対圧のせい!?



「ま、まずい!

今すぐその大臣を外に出せ!対圧にやられてるぞ。」



そうキアは言いながら扉を指差しながら私を見た。


え、なんで私っ…??

そう振り返ると私が扉に1番近いのだ



「わ、私 精魂(スピリット)なんて使えないですわ!! 」



私が声を出してキアに向けて言うと



「んなわけ、ないだろう!?

じゃないと今頃 姫君死んでるぞ?


早く精魂(スピリット)を流して扉を開けてやれ!」



で、でも、私 氷の能力でしかさっきの対圧を壊せなかった。精魂(スピリット)なんて使ったこともないわ!



「貴方が流せばいいじゃないっ!!」



「俺はこの部屋だと精魂(スピリット)を体の周りに散らばせて圧から自分の身を守ることはできる!だが流すことは出来ない」



じゃあ、お父様が精魂(スピリット)使えるはず!!この部屋に入れているのなら!



「お父様…!!」


そう思いながらお父様の方を見るとお父様も他の大臣達も皆フラフラしていて

膝をついている人が多くなってきていた。



何故…? お父様も大臣達も精魂(スピリット)を使えるはずなのに!

何故倒れてしまうの?



「慣れてないからだ!対圧に

姫君 あんたの精魂(スピリット)が異常なんだよ!


早く、精魂(スピリット)を流せ!

陛下も皆死んでしまうぞ!!」




この能力は精魂(スピリット)じゃないっ!!




私の、能力は知られるわけにはいかない。

私の、能力は知られるわけにはいかない。

私の、能力は知られるわけにはいかない。

私の、能力は………





…ああ!もう、知られてもっ…いい!!

精魂(スピリット)なんてしらない!!

私は能力を使わなきゃいけないのよ!!



お父様も、大臣も今は気付かないだろう。

見ているのはこの人だけ。



「…キアっっ!!」



「な、なんだよ!」



「…この事は誰にも言わないで」



「はぁ…?」




その瞬間、私は自分の手のひらをドアノブに向けてかざした。

目を瞑り、一気に私は手のひらからたくさんの氷の礫を出しドアノブにぶつけた。



その瞬間を私も自分の瞳で見ていた。

まるで、雪が自分の手のひらから降り出しているみたいだった



私が氷の礫を出すとドアノブにたくさんの霜がまるで、テーブルに真っ白なミルクを溢したように降りていった。



私はドアノブを握り扉を開けようと扉を押した すると扉はまるで最初から開いていたように綺麗に先ほどの廊下の景色が少しずつ見えながら開いた。




良かった…開いた…わ。




ドアノブを握る手は開いた後も震えが止まらずに、それでも力を込め霜が溶けるように能力を使った。



「ポーラさん!皆重症です!!」



そう言うと、目の前で腕を組んでいたポーラさんは慌てて中に入ってきて大臣の足を掴んで部屋の外に出す。

ポーラさんが外に出て、笛を勢い良く吹くと

他の牢の番人の方々がたくさん入ってきて

お父様や、他の大臣達の肩に腕を回して

部屋の外に連れて行った。



すると

あっという間に私とキア2人だけになった

一気に牢の中が静かになる。




「…お前アナベルの能力が使えるのか…!」



とキアは私の目を見て、驚いたように言った

まるで、信じられないというように私を見た



「…ええ。 そうよ」



「…能力のことは…?」



「お母様は知っていたようだけど、…もう

亡くなってるし。貴方以外 誰も知らないわ」



私が言うと、キアは私の瞳をじっと見ながら

口を一回開いて何か喋ろうとしたが、何か考えるように床を見つめた後、口を閉じてしまった。



「何か言いたそうだけど…」



と、その様子を見て何を聞きたかったのか聞いてみたくて言うと




「……俺と一緒に氷を凍らせる旅に出掛けてくれないか? 」



「…え、なんで?

お父様は貴方にお願いしたんでしょう?」



わたしの方が驚いて頭が一瞬だけ真っ白になる。声が少し詰まった。

キアにお父様は、『五つの村を、周り氷を凍らせろ』と たったさっきお願いされた。

そこに私が加わるなんて思っても見なかった



「…俺は、氷の凍らせ方が分からない。

でも 姫君はできるだろ?」



「…無理よ。私はアナベルのように、氷の結晶を作ったことがないの

『物を凍らせること』だけ。新たに新しいものは作れないわ


それに、50年も溶けない氷なんて私作れそうにないもの…」



と謝るように言った

キアが幼馴染のエミリアさんの事を生き返らせようと必死なのはすごく分かったから

でも、私は結晶など物体を作ったことがないんだ。



ドアノブや、剣、手鏡…あるものなら凍らせる事が出来る。でも例えば氷で家をつくったりすることは難しい。アナベルは作れただろうけど。



「アナベルが、出来たんだ。姫君が出来ないはずない。…姫君、役に立ちたくないのか?

その能力で。」



キアの言葉に思わず言葉が出なくなった。

今まで、アナベルの伝説のように私の能力は戦争を巻き起こす、恐怖の能力と思っていたから。誰にも見つからないように。使わないように。



「…てか、この手枷と重り外してくれないか?」



キアは手枷と重りを前に突き出して

私に外せというようにフラフラ揺らす



「…貴方、逃げない?

というか、私じゃ外せないわ」



「…姫君、俺が逃げると思ってんの?

俺はもう姫君と旅に出掛ける気しかしてないけど。


氷にして、割れることってできるだろ?」



はぁとため息を私はついた。

なんだかこの人私が王女だってことちゃんと知ってるのかしら?一応『姫君』と呼んでくれてるみたいだけど、あだ名か何かみたいに呼んでるようだわ。



「…分かったわ。氷にしてみる」



そう言って、キアに近づき床にしゃがみ込み足首についてる重りが繋がっている輪に手袋を外して触れた。物に久しぶりに直接触った気がした。アナベルの手袋と呼ばれる手袋を外すと何も考えなくても氷になってしまうから今はちょうどいい。


重りはミシミシと音を立てて波紋が広がるようにあっという間に氷になり始めた



「…姫君、手袋いつも付けてんの?」



キアの声が上から降ってくる。

凍らせて、氷の質を上げてる途中だったから

少し、気が散るなぁと思った



「え?…ええ。これがないと私なんでも凍らせてしまうから。」



「…じゃあ、手袋を外して氷の結晶を作ろうとか思ったことないわけ?」




「…え?」


考えたことがなかった考えだったので、驚いて力んでしまうと、バキッと足首についてい輪が氷の塊になって割れた。



すると、キアは嬉しそうに



「おお 割れたじゃん。」


と呟いて重りが無くなった足をふらふらさせる。



考えたことなかった。手袋を外して氷の結晶を作ってみようなんて。

間違ってもそんな事に使おうなんて思ってなかったから

キアの考えはさっきから私の考えの上を行く



私は、冷静な振りをしてもう片方の足首の輪に触れた


でも、頭の中は全然冷静じゃなかった。





私、今まで何をしていたんだろう


能力の事を知って起きながら、隠して

使える時に使って、でも能力の事を知りたくてこんなとこまで来て。

アナベルがしてきたことを知ってたのに

何も挑戦しようとも思わないで



私は、能力を使えているつもりでいたけど

私は受け入れてさえいなかったのかもしれない…




バッキッとさっきより大きい音を立てて、足首のもうひとつの重りが割れる。





「……私、貴方と旅に出るわ。」











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