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来るべき時(2)



その言葉を聞いた時大臣やお父さまの周りの雰囲気が凍りついたように見えた



吸血鬼研究者の息子で、剣術士、そして…

9人もの人間を19歳で斬殺した殺人鬼。



キア・マクタガート



私は頭の中に、重要な人物だとすぐに感じ

メモをする。



…なんでだろう、私なんだかとてもドキドキしている。名前を聞いた瞬間なにか忘れていたものを思い出しているように頭の中の歯車が必死に回ってるみたいだった。



私と五つしか変わらないのね



『…今思えば…』



とさっきから”キア・マクタガート”のことを喋っている大臣がまた喋り始める



『キアは現行犯で逮捕されたのですが

”吸血鬼はこいつらだ”

”吸血鬼が復活している”

と喚いてなかなか捕まえられませんでした』



”吸血鬼はこいつらだ”

…ということはキア・マクタガートは殺した9人のヒトを吸血鬼だって言いたかったってこと…?



『…我々の部下が3年前その言葉で、殺された被害者達の事を一応調べましたが、吸血鬼だという証拠は得られませんでした


そのことでキア・マクタガートは当然のように牢に入れられました。』



すると、1人の大臣が慌てたように興奮降るように立ち上がりながら言った



『…で、では、もし!!キア・マクタガートが3年前言っていた事が本当で、吸血鬼を殺してくれたのに牢にはいっていたとしら…?

それに、そうなると吸血鬼は3年前から

リコラ王国に隠れ住んでいることになります

も、もしかしたら、氷が解けている原因も

そいつらのせいかも…!』



するとお父様が



『コーネリアス、落ち着くのだ。

そのように興奮しては会議の意味がないではないか』


となだめるように言うと、力が抜けたように

コーネリアスと呼ばれた大臣はゆっくりと椅子に座った



『でも、可能性がないわけじゃない。

キア・マクタガートに話を聞きに行ってみよう。吸血鬼研究者の息子だから何か知っているかもしれないからな』



とお父様が立ち上がった。



まさか、お父様直々に西の牢に向かうの?

すると、大臣達もお父様に連れられて立ち上がる。



あれ…?

ま、まって。これってダメな感じですわ。

1番奥の部屋だから、何処にも隠れるところがないし階段も遠い。



私が慌ててドアの隙間を覗くと、もうすぐそこにお父様がいた。



ど、どうしましょう…



咄嗟に逃げようとすると、開く扉に巻き込まれて尻餅をついてしまった。



「きゃっ…」



痛た…と思いながら目を開けると目の前にはお父様が驚いた顔をして、私を見つめていた



「…シャーロット、”おかえり”」



口調は優しいけど、目が怒っているのがすぐに分かる。後ろの大臣達は冷や汗をかきながら目を合わせてくれない。

…バレてますわ。私は立ち上がって



「…”ただいま”ですわ。」



と言うと、辺りは静かになり

嫌な空気が流れる。お父様は口を割ろうとしない。



言わなくては。私が思っていること

全部。



「…私、私も西の牢へ行ってみたいです。


国民は警鐘が鳴った時、皆不安そうな顔をしていました。そんな顔私は見たくないのです


お願いです。お父様…

私にも西の牢へ」



私がそう言うと、お父様は困った顔をした

たぶんそれは、私が『国民の事を考えてくれている』ということと、『話を盗み聞き』していたことで迷っているんだ。

お父様は、基本 私が国のために何かしているのを見るのが好きなのだ。




「しかし、西の牢はお前が行くようなところでは…」



「いえ、大臣の皆様やお父様が行くのに私だけ”行くようなところではない”というのはなんだかとても不思議ではありませんか?


…お父様お願いします。私もっと公務も頑張りますし、学業も頑張りますわ。

お願いだから、私も連れて行ってください」




私がお父様の言葉を遮り、長い言葉で押すと

お父様は、返す言葉もなくなったようで

はぁとため息を吐いて大臣達に目を合わせる



大臣達はやれやれという顔をしながらも微笑んでくれていた。



場の雰囲気から、私が西の牢に行ってもいいと言う了承を得たのはすぐに分かった。



はやく行かなきゃいけない気がする

私は、キア・マクタガートに会いたい

いや、会わなくちゃいけない気がするの








西の牢までは城の馬車に乗って行った。

城の中の馬の中から、よりすぐりの馬を選んで最高速度で飛ばすのだ。



馬車の中の小さな窓から外を覗くと、国民達が珍しそうな顔でこの馬車をみてくる。

確かに、城の馬車なんて滅多に使わない。

だから、道を王家のマークが入った馬車が通るのはすごく珍しいのだ。



私は手袋をした手を、ぐっと握りしめた。



私の能力は 強く思えばゴドフィンの剣の氷を溶かしたように溶かすこともできる。また形に残すことも出来なくないけど、これは本当に稀で、ほとんどが溶けてしまう。

手袋もこのアナベルが使った以外の手袋を使うと、手袋自体が凍ってしまう。



キア・マクタガートが何か氷の能力のことも知っているかもしれない。まだまだ知らないことが多すぎる。



私は、この力を、使ってこのリコラ王国を守ってみせる。




そう思った時、馬車のスピードが落ちカタンっと小さく揺れて止まった。

もう着いたのかしら…?

すると、馬車のドアが開いて外の景色が顔を出す。ドアを開けてくれたのは馬車を運転してくれていた御者の方だった。



「ありがとうございますわ」



そうお礼を言って、外にでるとそこには



「まぁ…」


灰煉瓦が重なって出来た建物らしいというのはすぐわかる。だけども、煉瓦で隙なく埋められていて

人を寄せ付けないような圧や、間違っても登ろうとした人間を振り落とすように見える。

まるで、悪魔が住んでいそうな小さなお城だ



煉瓦で出来ているのに。不思議

なんでこんなにも雰囲気が悪いのかしら

綺麗にしたら、もう少し雰囲気も良くなるはずなのに。



と私は訳の分からないことを考えていた。



お父様と、大臣達は大きな門の入り口のところにずらずらと歩き始めた



…何度か、皆様来たことあるのね。

そう思ったけど敢えて言わなかった



私は1番前で歩くお父様の隣には歩かずに

わざわざ後ろの方から離れて後ろに並んだ。

来たことある人達と一緒に並んでも、何も思えないし、感じないと思ったから



…ううん。違う。

キア・マクタガートに初めから真正面で向かい合うのが怖いのかもしれない

きっとそう。



私が後ろに行くと大臣達は少し戸惑ったいたが私が気にせずそのまま後ろについて行くと

やがて、気にしなくなった。

お父様は、私が牢を怖がっているのだと思って後ろにいても何も言わなかった。



門には門番がいて、近くには小さな同じく灰色のレンガで作られた小屋みたいなものが建てられていて、ここで入場の許可が得られると少し大臣達が話していたのを聞いていた




その小屋の扉は木と鉄で出来ているらしく

見るからに重そうだった。そして、扉の前にはこげ茶色の…あぁ、私は詳しくないから分からないけど干した穀類で作った玄関マットのようなものがあった。お父様は、その扉の前に行き玄関マットの上に乗った。



お父様、あの小屋の扉を開けるのかしら?



そう思い、お父様を心配しながら大臣達の後ろから見守っていると



お父様は拳をつくり手の甲でドアをノックしはじめた。その瞬間いきなり狂ったように大きい耳鳴りが私の頭の中に響いた。



頭が…痛い…っ



「……っ…!?」



慌てて耳を抑えるけど、耳鳴りは一向に止まない。周りをゆっくり目を開けてみると大臣達も耳を抑えて皆、苦しそうにしていた。



お父様…っ!お父様をお守りしなければ。

誰かの奇襲かもしれない

大臣達では役にたたない。私がやらなければ



大臣の腰についていては、宝の持ち腐れの剣を抜こうかと思いながらお父様の方を見ると、お父様はリズミカルにノックを叩いているように見えた。それどころか耳鳴りが聞こえないようだわ



お父様何をしているの…?

そう思いながら、お父様をみていると

お父様は、何発かノックをした後景気よく最後に大きくノックをしたように見えた。

そして、ゆっくり玄関マットから降りると



「……え」



耳鳴りが止まった。



耳を恐る恐る離すとやっぱり止まっている



それどころか、ギシッと深い変な音がして

前の門が開いたのである



私が慌てて、お父様の方へ駆け寄り



「お父様!?…大丈夫でしたか?」



と言うと、お父様は私を見て驚いた。



「……シャーロット…お前、私に内緒で

武術か剣術か何かを習ってたのか?」



「………え?………」



剣術を習ったのはお父様には秘密にしていた

それがバレるとなると、今すぐ入る前に城に帰らされるだろう。

…というか、なんで今聞かれてるんですの?

私。



そう思いながら、周りを見るとほとんどの大臣達は息を荒くして、地面にしゃがみこんで

耳をまだ抑えている。冷や汗をかいている大臣も見られた。



これは…一体…なんですの…??




「この門を開けるには、小屋の扉を一定のリズムで叩かなければならない。

…しかし、たくさんの人にバレてしまってはいけないのでマットの上に乗った人以外の人間には頭を刺激する耳鳴りが流れるようになっている…柔な人間はそこで倒れてしまうんだよ。」



とお父様が私に説明してくれる。



「柔な人間…?」


「例えば…剣術だったらの白鳥の☆☆☆はないとなぁ厳しいんじゃないかと」



その言葉を聞いて、ぎくっとして心臓がドキドキし始めた。私は白鳥の一つランク上の馬の☆だから。



お父様の眉毛が少しぴくりと動く。

疑っているんだわ…

なんとかしないと。



「…それは1番後ろにいたからですわ!

私だって、王女ですわよ!?

そんな、武術なんて野蛮なマネなんて致しませんわ!!!」



私が出来るだけの演技を使って怒っているように大声を出してフンっとお父様から背を向けて言った。



すると、お父様は慌てたように私をなだめるように



「すまんな、シャーロット」



「仕方ないので!!許してあげますわ!」



「シャーロットが武術に憧れるで出来事なんて今までなかったしなぁ」




「………そうですわよ。


そんな出来事ありませんでしたわ。」




私は、大臣達が起き上がるのを手伝い、ようやくそうして大臣達は起き上がることが出来た。



立ち上がるのを手伝いながら思い出した




…そうですわ

何故忘れていたのかしら。

私、あの時に剣術を習おうと思ったんだわ














14歳の冬…


お母様が病気で亡くなった。



お父様は、今まで以上に国民のために何かしようと打ち込んだ。お母様がいなくなったのを忘れるかのように。



そんなお母様が亡くなる時私の手袋をした手を握りながら言った



「…シャーロット、貴方の力は

皆のために使うのよ」




「……え」



誰にもバレて無いつもりだった、なのに氷の能力の事はお母様にバレていた。その事が分かった時、驚いた。

そして、その言葉がお母様の最後の言葉だった。



お父様は、政治の他に私の教育にも力を入れ始めた。馬術にダンス、マナーに外国語。

その凄まじさに私は嫌気がさして、

城の厨房の裏口から(これはこの時に見つけた)私は、冬の夜空の下、城から飛び出した。



初めての家出に少し興奮していたのを覚えている。



はぁと息を吐くと白くなる吐息も、夜空に輝くオリオン座も、何もかもが感動的だった

そして、胸の鼓動の音が鳴り響いて、ほんの少し不安になった




私はちょうどヒューゴ街を抜けて、住宅街の方を歩こうとしていた。

曲がり角を曲がろうとした時、



「ぅ、あぁああーーー!!」



と言う叫び声のような悲鳴のような男の声が聞こえた。そのただならぬ声に私は恐怖を感じた。だがそれ以上に私は好奇心が強かった



私は曲がり角から身を隠しながら何が起こっているのか覗いた



1人の青年が、何人かの人達…暗いので分からないけども、取り囲まれていた。



なにが起こっているのですか…?これは。

まさか…!何か不良なことでは!?

私の好奇心は益々駆り立てられた。


すると、ふらふらと周りの何人か達が一歩ずつ青年に詰め寄っているのが分かった



青年は

「何故、エミリアを殺した。何故…」

と呟いた。



エミリア…?名前からして 女の人の名前?



青年の顔は月明かりに照らされてはっきりと見えた。



「わぁ………」



青年は黒い髪に、珍しい紅色の瞳をしていた

前髪が風で揺れると顔が分かる。


……とても、整った顔立ちをしていますわ…

隣国の王子達や、伯爵なんかより全然。



なぜか、私はその青年に釘付けになってしまった。




「俺は、お前らを許さねぇ。」




青年の瞳は燃え上がるように紅くなったように見えた。ギランと周りの人たちを睨む目はなにか覚悟しているように見えた。



何をするの……?




青年は

腰にぶら下げているモノをとり正面で構えた

それは月明かりで銀色に輝いて見えた



剣だわ……



それからは、一瞬だった




青年に詰め寄っていた人が血しぶきをあげながら、1人、また1人と倒れて行く



青年は綺麗に人を斬っていく。素人の私が上手だと思うくらい


真っ暗な闇の中、青年の血と同じ色の瞳と月明かりが私の中でユラユラと回った。




怖い…単純にそう思った。

人がバタバタと倒れて行く 簡単に人が死んでいく。あんなに好きだったお母様も、もういない。斬られた人はお母様と同じところに行ったのだろうか。







でもそれ以上に、青年の剣術が、動きが、



とても、綺麗だと思ったんだ。



返り血と同じ瞳の色をして人を斬っていく

あの人が。























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