王女シャーロット(2)
ゴドフィンと、市場にどんな店があるのかと見ながら歩いていると、なんだか少し怪しく色んな雑貨を売っている店があった。
ぱっと見ただけで古時計や織物や水晶などが置いてあった
ほんの少し見てみたいという思いに駆られたけどたぶんゴドフィンは安全第一だから私を止めるんだろうなぁと勝手に思っていると
「お嬢ちゃん?
ちょっと待ってちょうだいな」
という少し老いて少し嗄れた声が店の中のお婆さんから聞こえてきた。お婆さんは白髪で少し癖っ毛なのかフワフワとウェーブがかかっており、耳には真紅色のピアスと漆黒の服。真ん中に大きな光り輝くペンダントをしていた
わたくし達の国には魔女はいないけど
魔女や占い師みたいですわ。
でも、自分が呼ばれているとは思わなく普通に通り過ぎようとすると、
「手袋をお探しのお嬢ちゃん。」
と私に目を合わせて手招きしてくる
わ、わたくし?
「わたくしのことですの?」
となんとなく店の前で立ち止まろうとするとすかさずゴドフィンが『止まってはなりません』とでも言うように手首を掴み私を歩かせようと引っ張った。心配性なんだから。
「金髪で碧眼。お嬢ちゃん…王家のオルグレン家のお嬢さんだね。」
と私の顔をじっと見ていった。
王家のオルグレン家に生まれた娘は高確率で金髪碧眼と決まっているのだ。
お婆様の目は私と同じ碧色の瞳の色をしていた
私の脚はゆっくりとそのお店の前に導かれるように進んでいった。
「ええ、そうですわ。
…あら!奇遇ですわね
お婆様も私と同じ碧色の瞳をお持ちね?」
と少し微笑みながら言うと
後ろから腕を掴まれた。もう驚かないで振り向くとゴドフィンが険しい顔をして瞳は『もう帰ろう』言っている。
「シャーロット様、もう行きましょう。」
「…あなたさっき手袋を見つけようと言ってくれたじゃない。わたくしはこのお店で見つけたいわ。ねぇ?お婆様。」
と私が言うと
お婆さんは耳につけている真紅色のピアスを揺らしながら前に出てきて私の前に手袋を出してきた。その手袋は水色の手袋で手の甲のところに氷の結晶のような刺繍があり黒いビットベルトがついたものだった。
氷の結晶…
するとお婆さんは、ゴドフィンに向かって言った
「少しお前さん離れてくれないかい?
お嬢ちゃんとだけで話したいことがあるんだよ」
ゴドフィンは怒ったように顔が険しくなって
眉毛がつり上がった。
「シャーロット様話を聞く必要はありません手袋なら他の店で…」
「ゴドフィン。わたくしお話を聞きたいわ
あなたは少し下がってくださる?」
私が言うとゴドフィンは少し唇を噛んで
「わかりました」と一言 言い
しかし私のことが心配なのかお婆様が何かしないようにじっと睨みながら後ろの方へと下がった
するとお婆さんはゴドフィンが後ろに下がったことを確認してからその手袋を私の手に握らせた。
私が驚いたようにお婆さんの方をみると
「…お嬢ちゃんにはこれが必要だろぅ?
これは50年前、吸血鬼達を滅したと言われる
アナベルの手袋と言われてるんだよ」
「アナベル…」
お父様に小さい頃聞かされたことがある。
アナベル…
昔吸血鬼との全面戦争となった時命を懸けて人間達を守った氷の礫を出して吸血鬼を凍らせたと言うのがアナベルと呼ばれる女性だ。
「この手袋は、アナベルの不思議な力でも
破けたり、凍ったりしなく それでいて氷の力
を制限できたと言われているんだよ。
…お勘定はいらないから持って行きな」
と優しく二つの碧眼で見つめて微笑んだ
まさか、このお婆さま知ってるの…?
「わ、わかりましたわ。
…ではありがたく頂きます」
とぺこりのお辞儀をしてからゴドフィンのところへ駆けた。なんだかこのお婆さんと長くいるのが怖くなったのだ。
何もかも見透かされてるようで
ゴドフィンは私が駆け寄って来るのを待たずに私の方へ駆け寄ってきた
「何か言われませんでした?
大丈夫ですか?!」
そんな心配そうな顔を見ていたらなんだか
みるみるうちにホッとして安心してきた
「ふふふ 大丈夫よ。
ゴドフィンは心配性なんだから。」
といいながら私はお父様から貰ったブラウンの手袋を取り外して新しくお婆さんから貰った水色の手袋を手につける。
…私のために作ったみたいだわ。
指先まで全部吸い付くよう
試してみたいわ。お婆さんが言ってたことが本当なのか
「それが新しい手袋ですか?」
「そうよ。わたくしとても気に入ったの」
目の前に手袋をつけた手を突き出してみると刺繍が一層太陽の光で綺麗に見える
うん。気に入った
「あ、シャーロット様!そんなにしてると…」
え?
私がゴドフィンの方を振り向きながら歩いていたため前には全然注意をしていなく、
気がついたら前から歩いていた人とドスンと音を立ててぶつかってしまった。
「いたた… 大丈夫ですか?
お怪我はありませんか?」
すると、ぶつかった男の人はむくりと起き上がって私をギロっと睨んだ。
その人は庶民の若者みたいで友達なのか連れの男が二人いた。
男の人の緑色のベストは大きなシミになっており よく見ると辺りは
濡れていて銀色の水筒が転がっていた
「まぁ、大変。お洋服が…」
と駆け寄り持っていたハンカチで拭こうとすると、周りの連れの友達が
「おいおい…
お嬢さんぶつかった相手が悪いな。
このヒューゴ街の''瑠璃色の白鳥”と呼ばれる
デューイ様にぶつかってしまうとは。」
そう言いながらニヤリと笑った。
確かにぶつかってしまった男の人の目は瑠璃色をしていた。
デューイと呼ばれるぶつかってしまった人は腰にぶら下げた剣をスルスルと抜いて私とゴドフィンの方に向けた。
どうやら
私達を切らないと気が収まらないらしい。
その瞬間ゴドフィンは私を守るように私の前に立ちふさがった
「お洋服なら、
新しいのをお買いいたしますわ
戦いはやめてくださりませんか??」
とゴドフィンの守りを無視してデューイの前に立った。
「白鳥の俺がそんなことできるかよ。」
白鳥…ね。
リコラ王国は剣が盛んで、
難関な剣使いの試験を受けると
1番下が白鳥
次が馬
1番上が獅子
とランク付けされることになる。そこからさらに「白鳥の☆一つ」「白鳥の☆二つ」「白鳥の☆三つ」のように星で細かく三つに分類されており、星が多いほど上のランクに近づく。少しずつ試験を受けることで上のランクに上がることができる。
「ちなみに、デューイ様「白鳥」の星がいくつですの?」
ととりあえず聞いてみる。
気づけば周りの連れも腰に下げている剣を出して私たちに向けていた。
「俺はこないだ試験に受かって☆一つだ」
と自慢するように言ってくる。
白鳥の☆一つということは1番下のランクね
そうぼやっと考えているといつの間にかゴドフィンまでもが剣を取り出して今にも抗争が起きてしまいそうだ。
「可愛い顔してるけど、俺を怒らせた罪だ。少し傷つけ。」
争いはなるべくしたくなかったけども…
仕方ないわ。この手袋の力も知りたいし。
「ゴドフィン 少し借りるわ」
そう言って私はゴドフィンから手に握りしめられていた、剣をするっと奪った。
「シャーロット様!?」
私は剣の刃先を上に上げて、ゆっくりと刃をみた。…真剣ね。そして相手の刃もゆっくりと観察してみるとこちらも真剣。
「いいわ。私が相手になるわ
かかってきなさい 白鳥さん方」
…私は目を閉じて、普段あまり使わないようにと努めている力を身体の中から起こした
いつもなら手袋を外さないと出来ないのだけど、お婆さんの話を信じて見ましょう。
この手袋がどれだけ私の”氷の力”に耐えられるのかを。