World.3 白ウサギ
また大分遅れた………………(汗
中々に書くのが難しいですが、頑張って書いてます。
どうか生暖かい目で見守ってください。
Side/晴輝
機械獣が機能を停止し、崩れ落ちた後、俺はその場にへたりこんだ。
「倒したか。よくやった」
む、この若干偉そうな声は………………
「………………加賀峰」
「いきなり呼び捨てか。少々驚いたな。さん付けとかないのか」
「………………加賀峰さん」
「物凄く不服そうだな。まあ、呼び方なんてどうでもいいが」
なら言うな。
「さて、状況の説明と行きたいんだが………………移動しながらで良いか?」
「なんでだよ」
「ここはまだ危険が及ぶ可能性がある。何より、より詳しい説明をするためには、私達のアジトに来てもらった方がいい」
「…………………わかったよ、行けば良いんだろ?」
「よし。ならついて来い。外に仲間を待たせている」
もう来てんのかよ。
あんまり待たせたら、可哀相じゃないか?
そう思いながらも、しっかりと加賀峰の後を追う。
校舎から出たところに、一台の黒いリムジンが停まっていた。
すっげ………………リムジンとか初めて見た。
「おっ待ちしてましたぁ!」
リムジンの前には、長い黒髪をした女性。
女性……………………というよりは、女の子?
そんな感じだ。
俺よりも一つか二つくらい下か…………?
「彼女は見目視縁。男のような名前だが、見た通り女だ。で、こっちは甲田晴輝。今回の『アリス』のターゲットだ」
「流石に見りゃ性別くらいわかるわ」
それにしても、『縁を視る』か。
すげぇ名前だな。
苗字でさえ『見る目』だし。
「よろしくでっす!」
人差し指と中指を合わせ、額に当てる視縁。
元気だなぁ…………
「ではでは、乗って下さいです! 移動しますです!」
何にでも「です」付けるんだな…………
珍しい。
心の中で思いながら、リムジンに乗り込む。
うわ、広………………
ゆっくりと、リムジンが動き出した。
「視縁、今回の奴は多分、『当たり』だ。見てみてくれ」
「了解です!」
当たり………………?
何がだ?
「では、少々失礼しますです」
そう言って顔を覗き込んでくる視縁。
………………?
「………………当たりですね」
ん? 若干、声のトーンが低くなったぞ?
「加賀峰、何の話してんのか全くわからんのだが」
「ああ、そうだったな。お前の『能力』の話だ。視縁は、人を見るだけでその人の『能力』を知ることができる『能力』を持っているんだ」
「私は、その能力を『視認=解析』と呼んでいますです」
「へぇ………………で、俺の能力ってのは何が当たりなんだよ?」
「当たりである理由は『アリス』についての話をした後の方が理解できるだろう。能力の概要だけでも話しておくか?」
ふむ………………気になるけど、未来を見る力じゃないのか?
「ああ。頼む」
「了解だ。視縁、説明を」
「わっかりました! ではまず、お一つ質問です。甲田さんは、ご自分の能力をどんなものだと思っていますか?」
「ん? ………………とりあえず、未来を見ることのできる能力だと思ってるけど…………」
「む〜、当たらずも遠からずって感じですね。実際は、もっと多くの物を見ることができるはずです」
もっと多くの物………………?
「甲田さんの能力は、『不可視=可視』。見えないものを見ることができる能力です」
「見えないものを見る…………? 透視みたいなもんか?」
「近いですけど、正解ではないですね。透視というのは、物質を透過して見るもの。つまりは、何かに隠されているもの等を見る力です。それに対して、見えないものを見るって言うのは、普通ならどうやっても見えないものも見ることができる力……………………『無色透明物質すら視認できる』能力であり、『未来を予知すること』すら容易にこなしてしまう力です」
「つまり、お前はやろうと思えば、大気すらも視認できることになる」
「その通りです」
なるほど。
未来だって、普通では見ることなんてできないな。
「さあ、着いたぞ」
加賀峰の声と同時に、キッ、と音がしてリムジンが停車する。
リムジンから降り、外に出る。
………………えーと。
「普通のマンションじゃねぇか…………」
目の前にそびえ立っているのは、何処にでもある、ごく普通なマンション。
「安心しろ。ここは私達のアジトに『繋がっている』だけだ」
話しながら、エレベーターの下ボタンを押す加賀峰。
………………下?
地下でもあるのか?
「ここの地下には、私達のアジトがある。地下に行くには、特別な操作が必要だがな」
エレベーターの中に入り、加賀峰は連続して複数のボタンを押す。
3、1、4、1、5、9、2、6、5、3、5、8、9、7、9………………
やがて、エレベーターが下に動き出す。
マジで地下か…………
ガコン、と音がして、エレベーターの扉が開いた。
「うぉ………………」
扉の先にあったのは、巨大なロビーだ。
超高級ホテルを思わせる。
「ここが、私達の組織、『白ウサギ』のアジトだ」
「『白ウサギ』?」
「童話の『不思議の国のアリス』で『アリス』が不思議な世界に迷い込む要因となった、あの白ウサギだ」
あ〜、そんなんいたな。
「さて、まずは『アリス』についての説明だったな。歩きながら話すぞ」
「おう」
歩き出す加賀峰を追う。
まだ来たばっかだし、迷ったらまずいだろう。
「この世界には、人間の生存できる星が多数存在する。この事は、一般人には機密だから知らなかっただろうが」
「人間が生存できる星がまだあったのか? そんなこと…………」
「信じられないか? だが事実だ。現に、ここも『他の星』だからな」
「!?」
ちょっと待て、今、マンションのエレベーターで下りただけなんだが?
「エレベーターに細工をしてあってな。先程の方法で下りると、ここに繋がるようになっている」
「漫画の世界かよ………………」
「そう思うのも無理はないだろうな。とにかく、今は『別の星がある』という前提で話を聞け。でないと説明できん」
「わかった」
返事をすると、加賀峰は歩きながら話しはじめる。
「今から約3000年前の話だ。私が住んでいた星は、他の星に比べて宇宙についての研究が盛んだった。そして、幾度もの宇宙の探索を行った結果、人間が生活している星を見つけた」
「3000年前………………随分と昔だな」
「そうだな。………………………………懐かしい話だ」
「ん? 何か言ったか?」
今、最後になんか付け足してたような………………
「いや、何でもない。私達の星は、しばらくその星と交流を行い、お互いに自らの技術を共有し合った。………………だが、長くは続かなかった」
「まさか………………」
「そう。………………相手の星に、『アリス』が現れたんだ」
「現れた? 『アリス』自身がその星に来たのか?」
「その通りだ。奴は、『アリス』はとある人物の願いを読み取り、解釈し、その星を……………………壊滅させた」
「星を壊滅させた………………だと!?」
ちょっと待てよ、じゃあ、俺の星も………………
思っていると、加賀峰は一つの扉の前で立ち止まった。
「私達は、苦戦の末、『アリス』の本体を捕獲した。……………………これが、『アリス』だ」
指紋、声紋、静脈、網膜のチェックをし、扉が開いた先にいた………………いや、『あった』のは、何かの液体に漬けられた、女性型の機械だった。
「コイツが……………………でも、なら何で『アリス』は活動を続けてんだよ? 捕まえてあるなら…………」
「抑えきれないのさ。『アリス』の力をな」
抑えきれない………………?
そんなに、強い力なのか?
「ここでこうして封印していても、『アリス』の力は溢れ出している。そのため、今までの3000年間、あらゆる星に『アリス』の被害が発生し、壊滅されている」
「壊…………滅……」
「『白ウサギ』の人間は、全員が『アリス』の被害者だ」
全員?
全員って、どれくらいいるんだ?
「その総数は、約1500人。つまり、すでに1500もの星が『アリス』の被害にあっているということだ」
「ちょっと待てよ……………………そんだけの人数がいるなら、『アリス』を止めることだって………………」
「できなかった」
加賀峰の声は、一気に低くなった。
怒りを、抑えているようにも見えた。
「私達の力では、どうにもできなかった。何度抵抗しても、『アリス』を止めることはできなかった」
「どうして………………」
「見えないんだ」
え………………?
「私達には、連中の『核』が見えない。だから先程のお前のように、一撃で勝負をつけることができなかったんだ」
「あ………………」
そういえば、加賀峰は俺の力がどんなものか、だいたいわかったみたいなこと言ってたな。
「なるほど。だから『当たり』か」
「ああ。私達『白ウサギ』は、お前の星を守るために全力を尽くす。お前も、私達に力を貸してくれ」
「良いぜ。これからは俺も、『白ウサギ』の一員だ」
「感謝する。では、改めて、だ。私は加賀峰羽矢だ。よろしく頼む」
「甲田晴輝だ。よろしく頼むぜ」
そう言って、お互いに手を握る。
俺の星は、俺が守る!
というわけで、3話でした。
では、ストックもないので、急いで執筆に戻ります。
ではではノシ