World.1 異変
NOS/にじファン閉鎖を聞きまして、書き出しました一次です。
一次は始めてなので、色々と変な部分もあるでしょうが、生暖かい目で見ていただければ幸いです。
Side/??
気がつけば、俺はそこに立っていた。
知らない街。
けれどどこか、懐かしい印象を覚える、そんな街。
ここは、どこだ………………?
誰に言うでもなく、そんな当たり前の疑問を口にする。
人はいない。
俺だけだ。
誰か、いないのか…………?
再び、誰に言うでもなく、呟く。
強い風が吹いた。
俺の髪が、頭上で暴れているのがわかった。
歩き始める。
目的などはなく、ただ、気を紛らわせるためだけに、歩いた。
どうして………………こんなにも懐かしい?
見覚えはない。
だが、ただ、懐かしいとだけ思う。
「…………………………て」
…………?
今、どこかから声がした…………?
「…………………………けて」
どこだ?
どこにいる?
声の主を探す。
もしかしたら、ここがどこなのかわかるかもしれないと、淡い期待を胸に。
………………いた!
ビルとビルの間、細い通路のようになって倒れている女性を見つけた。
ちょうど上半身が、今俺のいる大通りに飛び出していたのだ。
女性に駆け寄り、事情を聞こうとして…………………
言葉を失った。
女性は、『人の形をしていなかった』。
腰から下が、まるで『何かに食いちぎられたかのように』、無くなっているのだ。
声が出ない。
足が動かない。
逃げ出したいのに、逃げられない。
そして………………
「タス…………ケテ…………」
顔を上げた女性を見て、俺は意識を失った。
女性の目玉が、何かにくり抜かれたかのように、その場に転がり落ちていた………………。
〜私立 鳴聖学園〜
「………………ろ。…………起きろ!」
頭に鈍痛がはしった。
何かに叩かれたようだ。まあ、だいたい予想はできるが………………
顔を上げると、筋肉質で大柄な、スーツを着た男が立っていた。
右手には、丸められた教科書。
俺のクラスの英語の授業を担当する、遠藤教諭だ。
「ようやく起きたか、甲田」
あ、言い忘れてたな。
俺は甲田晴輝。
よろしく。
「そりゃ、頭殴られたら誰でも起きるっしょ」
「今のは5発目だったと思うが?」
「……………………不思議なこともあるもんですね」
「そうだな…………」
大きな溜息をつく、遠藤教諭。
いやー、不思議だなー。
「それはともかくだ。そんなに俺の授業はつまらなかったのか? 随分とよく眠っていたが?」
「愚問っすね、遠藤教諭。良いですか………………?」
そりゃ、遠藤教諭の授業がつまらないんじゃないさ。
そう、俺は………………!
「『遠藤教諭の授業』ではなく、『英語という教科自体』がつまらないんですよ」
「ほう………………? 英語がつまらないとほざくか。良いだろう。ならば、英語の面白さを今からたっぷりと…………!」
「丁重にお断りさせていただきます」
立ち上がって、恭しく最敬礼。
うん。礼儀って大事だよね(笑)
「甲田………………貴様、今日という今日は…………!」
「あ、遠藤教諭。まだ授業中じゃないっすか。ダメですよ、職務を疎かにしちゃ」
「%〜&★《‥〔ー々‖∞±◇◎!?」
人語を話しましょうよ、せめて。
おや、そろそろ時間かな?
キーンコーンカーンコーン………………
「………………授業を終了する。甲田は放課後に職員室へ」
「うぇ〜い」
放課後に職員室?
んな面倒なこと、誰がするかってんだよ。
「おい、晴輝。またかお前は?」
机に突っ伏していると、とある男子に声をかけられる。
背は低く、中性的な顔立ち。
俺の友人の一人、山中宏人だ。
いつ見ても地味な顔だなぁ。
「今なんか失礼なこと考えただろ」
「ナンノコトカナ? ボクニハワカラナイヨ?」
「明らかに動揺してんじゃねぇか」
くそ……………どうしてこうも、考えてることがばれるかな…………
「わかりやすいからな、お前は。とりあえず、飯行こうぜ」
おお、もう昼休みだったか。
2時間くらいしか授業した記憶がないけど………………
「寝てたんだろ? どうせ」
「バッサリ言ってくれんな、お前は」
「事実だろ?」
いや、そうだけどさ。
「んじゃ、食堂行くか」
「おう。………………痛っ!?」
宏人についていこうとすると、突然頭に激痛。
なんだ、これ…………………
『お前の望みを叶えよう………………』
「!?」
今、変な声が…………
「どうした?」
その場に蹲っていると、宏人に声をかけられる。
あれ、痛み………………引いてる?
「い、いや。なんでもない」
「そうか? なら良いんだがよ」
「大丈夫だ。心配すんなって。それより、今は食堂だろ?」
「あ、ああ。じゃ、行くか」
そう言って、再び歩きだす宏人。
その背中を見つめながら、さっきの声を思い出す。
『お前の望みを叶えよう…………』
なんだったんだ? さっきの…………
女性の声だった気もするが…………
「おい、着いたぞ。お前は何食う?」
「ん? ……ああ、日替わりで良いや。特に食いたいもんもねぇし」
「あれ、珍しいな。お前が日替わりなんて。いつもは何か特定の奴頼むのに」
「気分だよ、気分。俺だってたまには日替わりだって頼むって」
「そか。んじゃ、俺はカツ定食にすっかな」
宏人が食券を2枚買い、俺に渡す。
俺はかわりに代金を渡す。
食券を持ち、カウンターに向かう。
「おばちゃん、よろしく」
言いながら、カウンター奥のおばちゃんに食券を渡す。
おばちゃんは「あいよ」と言って、厨房の方へ引っ込んだ。
10分ほどして、奥からおばちゃんがトレイを持って戻ってきた。
「サンキュー、おばちゃん」
宏人が言って、トレイを受け取った。
しかし、俺の意識はそちらには向いていない。
さっきのは、なんなんだ………………?
「お、あそこの席が空いてんな。行こうぜ、晴輝」
「おう…………」
宏人からトレイを受け取り、席につく。
今日の日替わりは、焼き魚定食だ。
「それにしても、お前はよく英語で寝れるよな? あいつ、授業中に寝てる奴には容赦ないだろ」
「英語なんざ、聞かなくたってわかるからな。授業を聞いてるよりは、睡眠時間にしたほうが有意義だ」
「そりゃあ、お前からしたらそうなんだろうけどよ………………」
「世の中が平和すぎるんだ。退屈でしょうがない。いっそ、この日常をぶち壊してくれる大事件でも起きりゃ良いのに」
「縁起でもねぇこと言うなよ…………マジで起きたらどうすんのさ」
「さあな。起きてから考える」
楽観的だな。
そう宏人が呟いた。
「まあ、んなこと起こるはずもねぇよ。俺ごときが望んでそんな大事件が起こるなら、とっくにこの世界は滅んでるだろうよ」
「そらそうだ」
二人で、笑う。
この直後に起こる事など、何も、知らずに………………
7時限目、国語。
特に問題もなく授業は進んでいく。
教師が生徒を当て、当てられた生徒が教科書を読んでいく。
(退屈だな………………)
大きな欠伸を噛み殺し、黒板に目を向ける。
ホント、つまらないな…………
「ハァ……………………」
ズキッ!
「く………………!?」
またか………………!?
頭が……………………痛い!
『お前の望みを叶えよう…………』
望…………み…………?
!!
「世の中が平和すぎるんだ。退屈でしょうがない。いっそ、この日常をぶち壊してくれる大事件でも起きりゃ良いのに」
そんな………………まさか!?
ありえない!
ズドン!
教室の後方から響く、重低音。
扉が、吹き飛んだ。
悲鳴。
教室中に響き渡る。
嘘だろ!
グルゥゥゥゥゥ……………………
獣の唸り声のような、機械音。
扉を吹き飛ばし、教室に入ってきたのは、獣のような姿をした、古ぼけた機械だった。
「な、なんだよコイツ!」
クラスメイトの誰かが叫ぶ。
その声を察知したか、機械がそのクラスメイトの方へ顔部分を向ける。
口を、開いた。
口の中から覗くのは、黒光りする、銃口だ。
「逃げ………………!」
逃げろ、と。
言いかけた瞬間。
パパパパン。
4発分の、銃声が響く。
鮮血が、飛び散った。
「な…………」
血を噴き出し倒れる、クラスメイト。
刹那、沈黙が教室を包んだ。
「逃げろ!」
他のクラスメイトより早く正気を取り戻した俺は、力の限り叫んだ。
全員が一気に教室前方の扉へ押し寄せた。
俺もクラスメイトに続く形で、教室の外に出た。
………………否。
『出ようと』した。
教室から出ようとした俺は、一人の女性にぶつかった。
赤い髪の、派手な格好の女性。
「どうした? 何故逃げる?」
「何で逃げるか? わかりきったこと言ってんじゃねぇよ! はやくそこどけよ!」
「『お前の望んだ世界だろう』?」
「!?」
コイツ、何言ってんだ!?
俺の、望んだ………………?
「ようこそ。非日常の世界へ」
そう言って、女性は怪しく微笑んだ………………
すでに変なところがあるかもしれませんが、あまり気にしないでいただければ…………と思います。
感想、指摘などありましたら、どうぞ遠慮なく書き込んでいただければと思っております。
では、また次回で。