ヤバい国から出られてよかったです。隣国でオッドアイの王弟と幸せになります
天音カノンは聖女召喚で異世界に召喚された。
だが召喚されたのは、女子高生もだった。
呼び出した説明をされる中で、元の世界に帰れないことを知る。
女子高生は瘴気で苦しむ人々がかわいそうだと涙を流す。
周囲は女子高生が聖女だと決めつけているが、カノンはこの国はヤバいなと思う。そして女子高生も。
早い話自分たちでできないことを誘拐してきて、さあやれと言っているようなものである。それをかわいそうだと言う女子高生も頭が足りないように見える。
女子高生に瘴気に侵された陛下を救って下さいと言われる。
確かに偉そうなおじさんの体にヘドロが纏わりついていた。
女子高生は手を組んで祈るポーズをすると、ヘドロが消えた。周囲は喜び、王子たちが女子高生を囲む。
残されたカノンは、役に立たないと城から追い出された。直感は当たっていた。
途方に暮れていると、カノンの前に馬車が止まり、ドアが開いた。
中にいたのはヘドロに纏わりつかれている美青年だった。ヘドロに纏わりつかれていても美しかった。
「私は隣国の王子です。聖女様、我が国にいらして下さい」
「私は聖女ではありません」
「そんなことはありません。後ろを見て下さい」
カノンは後ろを見る。足元に続いて草が生えていた。
目を丸くするカノンに王子が続ける。
「聖女が歩けば草が生え花が咲くと、聖女伝に残っております」
王子は体を乗り出して、手を差し伸べる。
「それに聖女がどうか、手に取れば分かります。例え聖女でなかったとしても、悪いようにはしません。さあ、お手を」
カノンは、手を取った。
その瞬間王子に纏わりついていたヘドロが消えた。残るのは美しい王子である。
目を見開くカノンに、王子は頭を下げた。
「瘴気を浄化して頂き、お礼を申し上げます。私、アルフィード・エヌリアでございます」
「私が聖女? でも女子高生が瘴気を消したのよ? 彼女が聖女じゃないの?」
「恐らく、あなたの側にいたからではありませんか?」
カノンは瘴気を浄化した女子高生を思い出す。
あの場所から動いてなかった。
アルフィードが言った通りに、女子高生が浄化したと思い込んだだけかもしれない。
女子高生が聖女ではないと知れば、カノンを連れ戻そうとするかもしれない。
馬車に乗ったカノンは、生えている草を見る。
アルフィードの命で馬車が走り出す。
カノンは足元を見る。馬車の中であろうと草が生えている。
「すみません。勝手に生えてきます」
「聖女伝にはその草は上級のポーションができるとあります。気になさらないで下さい」
「あの。王子様ですよね?そんな畏まらないで下さい」
「聖女様の方が位が高いのです。本来ならば同じ馬車なんて乗れませんが、今回は例外にさせて頂いてますが」
「なら畏まらないで下さい」
アルフィードはクスリと笑う。
「分かった。これでいいだろう?」
「すみません」
「この後だが、国王陛下に謁見してもらう」
「いきなりですか?」
「その後はお披露目という名のお見合いパーティーだ」
「いきなりそんなお見合いだなんて」
「後ろ盾は必要だからね。私がなりたい所だが、あいにく婚約者がいる身でね」
「いえそんな」
「だが相談役にはなれるだれう」
知らない人よりもアルフィードが相談役になってくれることに、カノンはホッとした。
「時間があるときに聖女の力を押さえる練習をした方がいいだろう」
草が茂っていくことにカノンは苦笑うのだった。
ドレスとお化粧できれいになったが、緊張でカノンは吐きそうだった。
「大丈夫か?」
エスコートしてくれるアルフィードが心配そんな顔をする。
国王陛下の謁見は無事に終わり、残るのはお披露目という名のお見合いパーティーである。
エスコートされて入場し、視線が突き刺さる。
様々な視線を浴びて、カノンは顔色かわ悪くなった。
アルフィードは心配し、帰ろうかと提案する。
カノンは首を振る
このパーティーに国王陛下がご臨席されることを知っていたからだ。
「飲み物でも持ってこよう」
「すみません」
アルフィードが飲み物を取りにいなくなると、縦ロールで赤いドレスの令嬢がやってきた。
カノンは内心悪役令嬢だなと思う。
「私アルフィード様の婚約者ですの」
「はあ。どうも」
悪役令嬢は持っていたワインをカノンにかけた。
ドレスが赤く染まっていく。
周囲は静まり返る。
「偽者の泥棒猫にはちょうどいいですわ」
カノンは顔を伏せる。
足元が草に覆われ、周囲は驚く。
「聖女……」
誰がが呟く。
悪役令嬢は嘘ですわ、と扇子でカノンを叩こうとした。
「何をしている!」
声にビクッと驚き、手が止まる。
アルフィードが戻ってきた。
「アルフィード様」
「ベラトリス。聖女様に何をしているんだ?」
カノンはふとアルフィードの後ろにいる男性と目が合った。
右目が赤く、左目は青い、オッドアイ。
「素敵」
気がついたら、呟いていた。
悪役令嬢と言い合っていたが、立ち去ったことで言い争いは終わる。
溜息をつく中で、男性はカノンに歩み寄っていた。
「私は、ヴァンリー・エヌリアだ。よろしく頼む」
「王族の方ですか?」
頭を下げようとしたのを、ヴァンリーは止める。
「聖女の方が位が高い。頭は下げなくていい」
「あ、はい」
謁見の際も、国王陛下に言われていた。
「私は国王陛下の歳の離れた弟だ」
「王弟殿下でしたか」
「ヴァンリーと、あなたに呼んでもらいたい」
「ヴァンリー様」
「あなたの名前を伺っても?」
「すみません。カノンです」
「カノンか。いい名前だ」
カノンの足元から美しい花が咲く。
「王子の瘴気を消化してくれたこと、改めて感謝する。この後陛下からも感謝を伝えるだろう。そして……」
「そして?」
「願えば、王子の婚約者になれるだろう」
「どうして王子様と?」
「最初に出会ったのは王子だ。心引かれただろう?」
「確かに最初に出会ったのは王子様でした。でも素敵だと思ったのは、ヴァンリー様です。もし、婚約者がいなければ、私と考えてくれませんか?」
「私に婚約者はいない。この目が原因でな」
「素敵なオッドアイなのに?」
「カノンにそう思ってくれるのなら、片目を潰さなくてよかった」
二人の様子を見ていたアルフィードは深い溜息をついた。
(私に婚約者がいなかったとしても、最初に出会ったとしても、心引かれるとは限らないか)
ヴァンリーはそっとカノンの手を取り、キスをする。
カノンは顔を赤らめるのだった。




