路地裏
小さく動く影が路地裏に入っていった。
久しぶりに見る猫だろうかとキョウカは追いかけようと路地裏の方を向いた。
足音が規則的でなくなり、ウルミが視線を寄越すと同時にキョウカの腕を掴んだ。
そっちはダメだ。
キョウカは普段と様子の違うウルミに頷くしかなかった。
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その路地裏は無法エリアでも屈指の闇が広がっている。奴隷商人として出入りしていた者が翌日には売られる物になっていることがざらにある。
ソコでは、商品であることからは逃げられない。
自分の価値を商品では収まらないことを証明し続けなけらばならない場所に繋がっている。
ウルミはキョウカが従順であることに違和感を持ちつつも、自分の所有物が勝手に売られていく様を見らずに済んだと胸を撫で下ろした。
対等な関係を望んでいたはずなのに、キョウカを所有物として管理しようとした事実には目を背けた。
ただの踏み台、拾い物、ウルミにとってキョウカはなにものでもない。いっそ、手篭めにしてしまえばと明確に名前のある関係に持ち込もうかとキョウカの首に手がのびる。
ウルミがキョウカの手を掴んでしばらく、首に手をのばしてもキョウカは動かない。自分が何をしたのかは分からないが、今従うべき相手はウルミである以上、命令されれば聞く、されなければ現状維持が鉄則。
きっとウルミはキョウカに折檻することは無いだろうが、キョウカの価値基準を変える理由にはなり得なかった。
次に動いたのもウルミだった。
行こう。首にのばしていた手をキョウカを服越しでも離さず、撫でるように腰に持っていきキョウカの身体ごと先に進んだ。
キョウカは従うのみである。




