起点
荷馬車が質の悪そうな音を鳴らしながら舗装されていない道を行く。
遵法エリアから出て、紅茶を一杯入れさせてのんびり飲み干せるだけの時間は経っている。
荷馬車が減速し止まる。
キョウカは、自分を簀巻きにしてここまで連れてきた輩に荷馬車から引きずり降ろされた。
頬には砂の感触がある。
「恨むなら、俺たち以外にしてな」
簀巻きからは解放されたが、依然として後ろ手に拘束され、目隠しと猿轡はそのままに荷馬車は離れていく音がする。
誘拐犯共は早々に立ち去ったようだ。
解放されたとも言えない女は、ため息も出さない。
無法エリアに不自由な状態で放置されている今、処刑方法の決まらないまま死刑待ちさせられてるのと変わらない。
曲がりなりにもキョウカは貴族候補の家系、肌ツヤもいいし内臓の質も悪くないだろう。どう商品化されて売られていくのだろうか。
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どれくらい経ったのだろうか。
キョウカはすぐに周辺の住民に見つかって何かしらの商品になるだろうと考えていたが、捨てられたまま状況が変わらない。
静かに足音が近づいてきた。
足音はまっすぐこちらに向かってきている。
首を掴まれ、目隠しが取られた。
キョウカからは相手の顔が見れないようにされているが、相手はキョウカを値踏みするように観察している。
何も言わずにキョウカの拘束を外すと、キョウカとは腕を広げた分ほどの距離を置いた。こちらを見ているようだ。
服装のわりに手入れされた人間は物珍しいはずだ。
キョウカの普段着は彼らにとっていい金目のものだった。おかげで、彼らの着古した服と交換に持ち込めた。
キョウカは、自分の主人か売人になるであろう相手を視界に入れた。背丈はキョウカと同じくらいだろうか。砂ぼこりにまみれた黒髪に青白い肌、無法エリアに住む人間にしては比較的まともな服を着ている。
キョウカの拘束を解いた人物が口を開いた。
「ええとこのお嬢ちゃんがええカッコしとるやん」
目利きの売り手に見つけてもらえた瞬間だった。
キョウカの商品価値が分かる相手ならば、
「ええ、はじめて自ら手に入れましたもの」




