初めて会った時の印象は、『なんて胡散臭い人なんだろう』
王宮に迎え入れられたフィリネグレイア達はそのままその一角に通された。
部屋に案内してくれた執事が国王を呼んでくると退室していき、直ぐにその人物がやって来た。
「よく来てくれた。さあ、座ってくれ」
国王を迎えるため座っていたソファーから立ち上がり、頭を垂れていた彼らに国王は着席をするよう促す。
顔を上げまじかにみる自分たちの王に、フィリネグレイアはやはり好感を持てずにいた。
どうしてもその顔に張り付けている笑顔が胡散臭くて空っぽに見える。
王は今年で御年22歳である。即位して5年経つが、未だに正妻を一度も娶っていない。妾妃は2人ほど居たらしいが、どちらもすでに臣下に下げ渡されていると聞いている。子どもが出来なかったのが原因ではないかと噂されていたように、世継ぎもいない。
そんな御方の初の正妻となるのがフィリネグレイアである。
今まで正妃を娶らなかった国王が何故彼女を迎えるのかというと、少々複雑な事情があるのだ。
第一に、実はこの国王には恋人がいる。
何故その人を王妃にしないのかというと、その者の身分が王妃にふさわしくない身分であることが原因らしい。
身分が低いからという理由で臣下たちが渋るのもあるが、何より国王が重圧を相手に与えるのを嫌がっているのが一番の理由だ。
その人と別れるつもりがないという国王は困ったことに王妃も迎えないと言いだした。国王が一生独り身というのは都合が悪い、ということで何とか周りが説得し、ある条件に当てはまる者を王妃として迎える事を承諾させた。
その条件というのが、決して国王に対して唯一の愛情を欲しない者であること。王妃としての責務を果たせる者であること。
その条件に当てはまるということでフィリネグレイアが抜擢されてしまった。
その理由は簡単である。
忠臣や一部の親しい間柄の人たちにだけ知られている、彼女国王との初対面の場で言った言葉のせいであった。
原因である、彼女が当時王太子だった国王に放ったのは、次の言葉だ。
「貴方の妻になる人が可哀想ですね」
それを聞いた国王(当時、王太子)は大爆笑したが周りの者、特に一緒にいた彼女の兄は真っ青だった。(これまた一緒にいた彼女たちの父親は笑いを必死に堪えていた)
こんなことを言ってのけた彼女が国王に恋をするなど到底ないだろう、と満場一致で彼女を王妃にすることが決定した。
まさかこの発言で自分が「可哀想な人」になるとは思わなかった彼女は、本当に失言だったと心の中で舌打ちをした。
さて、ここで第二の理由が一番衝撃的な事情であった。
国王の恋人は身分が低い理由と共に、決して王妃になれない理由があった。
それはその人とが"男"だということだ。
これを聞いたときフィリネグレイアは唖然とした。
そりゃ王妃になれない。
この事実は彼女の父親と王太后、そして宰相だけが知っている。事実が発覚してしまえば臣下たちからの非難はひどくなり、国王の恋人に被害が及ぶことは簡単に想像できる。
フィリネグレイアは父親と国王が話している最中、今までの情報を思い出し整理していた。