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書庫での、王国騎士団員との出会い

 トーチェと合流するために一旦部屋に戻ったフィリネグレイアは、直ぐに書庫へ向かった。

 彼女を書庫前の待合室で待たせ、フィリネグレイアは一人書庫の中に入った。実際に自分で探し、内容を確認して本を探すほうが効率が良いとフィリネグレイアは書庫の管理を任されている司書に手伝いを断った。

 実際は人に手伝ってもらった方が格段に速い。だが、今は一人で行動したかった。

 入口から見えない場所まで来ると、フィリネグレイアは本棚に手を当てて寄りかかる。

 しっかりしなければ、これから国王に気付かれぬよう上手く立ち回らなければならないのに。今から自分の行動が筒抜けでは陥れることも出来ない。

 気を取り直して、とりあえずは自分の出来る事からしようと彼女は資料探しを始める。その時、小さく物音が聞こえた。彼女は誰か居るのだろうかと不審に思う。何時もならば気にせずに自分の作業を行っている。しかし、このとき彼女は何を思ったのかその音を発生させた原因を確認するために行動した。これが後にちょっとした騒動の発端となる。

 フィリネグレイアがいたところから出口に近いところに進むと、そこには一人の青年が座りこんでいた。

 その青年の髪の色を見て、フィリネグレイアは一瞬息が止まった。確かめに来るんじゃなかったと心の中で舌打ちしながらも、一向に立ち上がらない青年の状態を不審に思う。


「如何されたのですか?」


 具合でも悪いのだろうかと自分もしゃがむ。彼女が声をかけると青年は勢いよく顔を上げた。


「いえ、大丈夫です。ご心配おかけしました」


 言いながら立ち上がった青年は、しゃがみこんだままのフィリネグレイアにどうぞと手を差し伸べた。言葉に甘え、彼の手に自分の手を乗せ引っ張ってもらう。

 さて、これからどうこの状況を切り抜けようかと考えているうちに目の前の青年が口を開いた。


「見苦しいところをお見せしてしまい、申し訳ありません」


「いいえ。大事なくて良かったです」


 笑顔で答えるフィリネグレイアはその裏で青年を注意深く観察する。

 ここで自己紹介をした方がいいのだろうかと思いつつ、聞かれたら答えようという姿勢で青年と対峙するという考えに至った。

 この場をどう切り抜けようかと考えているうちにフィリネグレイはじっと青年を見ていた。そして青年も、フィリネグレイアを見つめている。

 そのまま、長い間二人は無言で見つめあう。もしこの場に他の人がいたら不審に思うだろうほど、二人は無言でお互いを見ていた。

 その沈黙を破ったのは青年だった。


「お初にお目にかかります。私は王国騎士団第三軍隊所属、ルインと申します。以後お見知りおきを」


 そうして騎士の礼をとった青年をフィリネグレイアは内心呆気に取れられて見ていた。何故この様なところに王国騎士団員がいるのだろうか。


「わたくしはフィリネグレイア=ドーテ=オイネットと申します。王国を守る剣である騎士団の方にお会いできるなど、大変光栄です」


 動揺を覚られないよう、淑女の礼を完璧にやってのける。その間にフィリネグレイアは自分の心を落ち着かせようとした。


「とんでもない、身に余るお言葉です」


 そう言って謙遜するルインをフィリネグレイアはじっと見つめる。

 何故この場に騎士団員がいるのだろうか。王国騎士団は国を守る剣と盾であり、第四軍隊から第三十七軍隊まで軍隊が王国内の各地に配置されている。第一軍隊から第三軍隊までは王宮の近くにある騎士団の本部で待機している。そして王宮を守るのは近衛騎士団の役目である。だから、本来用事がないだろう王宮の書庫に王宮騎士団員がいるはずがない。

 どんな目的があって、ここにいるのかは分からない。


「ルインは本を探しているのですか?良かったら司書の方を呼びますが、いかがでしょう?」


「いえ、目的のモノのある場所は分かっていますので、私一人でも大丈夫です」


「そうですか。では、わたくしも探し物がありますので、これで失礼しますね」


 そこでまた一礼した後、青年に微笑んでからフィリネグレイアは本を探す作業に戻る為に書庫の奥へと足を進めた。

 本を探しながら、先の程の青年の事を考える。彼はここに本を探しに来たと言っていたが、本当は国王の言っていた護衛なのではないか。姿を見せることをせず、影から監視する如くフィリネグレイアを護衛しているという。

 だが、もし彼が護衛出ないとしたら、先程のルインとの接触はあまり良い結果とならないだろう。仮にも王の婚約者という立場の自分が人気のないところで男性と2人でいたのだ。護衛には確実に見られているだろうから、国王にもこのことが知られるだろう。まあ、此方が愚かな事をしなければ国王からの御咎めはないだろう。

 そもそも、政務に加えて、婚儀の準備で細々とした準備をしなければならない多忙な国王がこんな些細な事でわざわざ自分の所まできて小言を言いに来たりはしないだろう。

 そう、フィリネグレイアは楽観視したまま、参考となる本を借りて書庫を後にした。




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