初めて過ごす夜 眠れない夜(2)
「御用件は以上でしょうか」
淡白に質問する彼女に国王は何も言わないまま、窓から外を見つめる。
暗にさっさと出て行けと言っているのが分からない男ではないだろうに。何故、この男は出て行かないのだと諦め半分、彼女は溜息を吐いた。夜に、しかも女性の寝室を訪れる等という事をしたのだ。ただ単に“自分の護衛に関する事”だけでわざわざこのような外聞の悪くなるような事をしないだろう。それとも…。
「夕方、ここから庭を見ていただろう」
行き成り話し始めた国王に、フィリネグレイアはやっぱりこの男の行動は理解できないと悪態をついた。
「ええ、それがどうかしたのでしょうか?」
「あの男には近づくな」
それだけ言うと国王は壁から身体を話して出口へと向かう。
国王が帰る事よりも、先程の言葉のほうがフィリネグレイアは興味が惹かれたが国王が帰ろうとしているのだ。一応見送らなければならない。考えるのは後でもゆっくり出来るだろう。
そう思って国王の後を追う。しかし、彼女が後を追っている事に気付いた国王はフィリネグレイアに向かって見送りは不要だと拒否する言葉を放った。
「もう休むのだろう。見送りは不要だ」
扉のすぐ前で国王は身体を反転させ、フィリネグレイアと向き合う。行き成り自分の方に国王が身体を向けたので、フィリネグレイアは急停止する。
急に止まらないで欲しいものだ。もう少しでぶつかるところだった。
じっとこちらを見たまま動こうとしない国王を不審に思ったフィリネグレイアは、怪訝な顔をする。
「どうかされましたか?」
フィリネグレイアの問いに答えるでもなく、国王は腕を持ち上げ、フィリネグレイアの頬に手を当てた。
何を仕出かす気なのかと身体を硬直させ、フィリネグレイアは警戒する。そんな彼女の反応に国王は鼻で笑いながら頬をひと撫でした後、ゆっくりと手を離し、そのまま何も言わず扉の向こうに消えていった。
前回書ききれなかった部分ですので非常に短いです。