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我はスライム! ~とあるスライムによる学園観察日記~  作者: おきくと二郎
【第2章】「王立魔法学院のオス個体たちの求愛行動がヤバすぎて理解不能だった話wwww」
8/21

【第8話】二人の時間

 昨日の告白現場を目撃してから、俺の中で恋愛観察熱が高まっている。

 今日は朝から、エルヴィン(オス個体Aの名前らしい)の動向を追跡することにした。


 朝食の時間。エルヴィン君は友達と一緒にテーブルに座っているが、明らかにそわそわしている。

「おい、エルヴィン、大丈夫か?顔色悪いぞ」

「え?あ、大丈夫だよ。ちょっと寝不足で...」

「昨日の件、まだ気にしてるのか?」

「そんなことないよ!...いや、でもちょっとは...」

 嘘だ!めちゃくちゃ気にしてるじゃないか!

 人間って、心配されると逆に強がっちゃうんだな。本当は不安でいっぱいなのに。

「返事はいつ頃もらえそうなの?」

「一か月くらいって言ってたけど...でも急かしたくないし...」

「一か月は長いなあ」

「でも、ちゃんと考えてもらいたいから」

 エルヴィン君は本当に真面目だ。相手のペースを尊重しようとしている。

 でも内心は早く返事が欲しくて仕方がないはず。この矛盾した感情が、恋愛の特徴なのかもしれない。

 相手を思いやる気持ちと、自分の欲求の間で揺れ動いている。

「今日、彼女に会う予定はあるの?」

「授業で同じクラスだから...でも、話しかけづらいなあ」

「普通に挨拶すればいいじゃん」

「それが難しいんだよ...」


 告白後の気まずさ。これも恋愛の難しい部分のようだ。

 告白する前は普通に話せたかもしれないのに、告白した途端に距離感が分からなくなる。

 感情を表明することで、逆に関係が複雑になってしまうパラドックス。

 でも、これを乗り越えないと次の段階には進めない。恋愛の試練の一つなんだろうな。

 午前中の授業時間。俺はエルヴィン君のクラスに潜入した。

 彼の視線の先には、例のメス個体A...いや、せっかくだから彼女にも名前をつけよう。

 リリア嬢としておこう。なんとなく上品な感じがする。

 エルヴィン君は授業中なのに、時々リリア嬢の方をちらちら見ている。

 でもリリア嬢は真面目に授業を聞いていて、エルヴィン君の視線には気づいていない様子。


「今日の課題は、風魔法の基礎理論についてのレポートです」

 先生が課題を発表した瞬間、エルヴィン君の顔がぱっと明るくなった。

 風魔法はエルヴィン君の得意分野だ。これはチャンスかもしれない。

 授業が終わると、エルヴィン君は勇気を振り絞ってリリア嬢に話しかけた。

「あの、リリアさん」

「あ、エルヴィン君...」

 リリア嬢の頬がほんのり赤くなった。

 む??これは好意的な反応なのか?照れているだけなのか?


「風魔法のレポート、もしよかったら一緒に図書館で調べませんか?」

「え...でも、私、風魔法は苦手で...」

「だからです!僕、風魔法は得意なので、お手伝いできると思います」

 おお、これは賢い戦略だ!

 自分の得意分野で相手を助ける。恋愛における互恵的協力の提案。

 相手にメリットを提供しながら、一緒に過ごす時間を作り出している。

「でも...迷惑じゃないですか?」

「全然!僕も一人で調べるより、誰かと一緒の方が楽しいです」

「そう言ってもらえるなら...お願いします」

 成功だ!

 エルヴィン君の作戦は見事に決まった。告白の直後で気まずい関係を、共同作業という自然な形で修復しようとしている。

 これは本能的な恋愛戦略なのか、それとも偶然なのか?

 多分、エルヴィン君の純粋な優しさが結果的に良い戦略になったんだろうな。うんうん。


 午後、図書館での共同作業を観察。

 二人は風魔法に関する本を広げて、真面目にレポートに取り組んでいる。


「風の流れを感じるコツは、まず自分の呼吸を意識することなんです」

「呼吸ですか?」

「はい。風は空気の流れですから、自分の中を通る空気と外の空気を同じもの

として感じるんです。人間は簡単に言えば筒みたいな構造ですから、その筒の中に外の空気を流し込んで換気するイメージです。」


 エルヴィン君の説明は分かりやすい。教えることで、彼の良い面が自然に表現されている。

 そしてリリア嬢も、真剣に聞いている。


「なるほど...今まで風魔法を外から操ろうとしてました」

「そうなんです。風と一体になるイメージが大切なんです」

「エルヴィン君って、教えるのが上手ですね」


 リリア嬢の褒め言葉に、エルヴィン君の顔がほころんだ。

 これは良い雰囲気だ。お互いの良い面を発見し合っている。

 告白という一方的な感情表明から、双方向の理解へと関係が発展している。

「実は...昨日の件なんですが」

 突然、リリア嬢が話を切り出した。エルヴィン君の表情が緊張する。

「はい...」

「もう少し、お互いのことを知ってからお返事したいんです」

「もちろんです!僕も、急すぎたかなって反省してました」

「急すぎたっていうわけじゃなくて...嬉しかったんです。でも、大切なことだから」

 おお、これは理想的な展開だ!

 リリア嬢は拒絶しているわけじゃない。むしろ、真剣に考えているからこそ時間をかけたいと言っている。

 そしてエルヴィン君も、それを理解して受け入れている。

 これが成熟した恋愛のコミュニケーションなんだな。

 感情だけでなく、理性も働かせて、お互いにとって最良の選択を模索している。

「今度、一緒にお昼を食べませんか?もっと色んなお話をしたいです」

「はい!ぜひ!」

 自然な形で次のステップに進んでいる。

 告白→保留→共同作業→相互理解→次の約束

 この流れは、まさに恋愛の教科書通りだ。

 でも二人とも、教科書を読んでこうしているわけじゃない。自然にこうなっている。

 ということは、これが人間の恋愛の基本パターンなのかもしれない。

 夕方、寮に戻ったエルヴィン君は友達に報告していた。

「今日、一緒に勉強したんだ」

「おお、進展じゃん!」

「まだまだだよ。でも、少しずつお互いを知っていこうって話になった」

「それって脈ありってことじゃない?」

「どうかな...でも、嫌われてはいないと思う」

 エルヴィン君は慎重だ。希望的観測に走らず、現実を冷静に分析しようとしている。

 これも恋愛における重要なスキルかもしれない。

 過度の期待は失望を生むし、過度の悲観は機会を逃す。適切な現状認識が必要なんだな。

「俺、エルのそういうとこ好きだよ」

「どういうところ?」

「相手のことちゃんと考えてるところ。自分の気持ちだけじゃなくて」

「そうかな...」

 友達の客観的な評価も興味深い。

 エルヴィン君の恋愛アプローチは、周囲からも好意的に受け取られている。

 これは、彼の人格が恋愛においても反映されているということかもしれない。

 恋愛は特別な行動ではなく、その人の人格の延長なんだな。

 夜、一人になったエルヴィン君の独り言を聞いた。

「リリアさんは本当に素敵な人だな...」

「優しいし、真面目だし、一緒にいると楽しい」

「でも、僕みたいな田舎者で大丈夫かな...」

 自信のなさが垣間見える。これも恋愛の一面だ。

 相手を素晴らしく感じるあまり、自分が釣り合わないのではないかと不安になる。


 でも、その不安があるからこそ、自分を高めようと努力する動機にもなる。

 恋愛は自己成長のカタリストでもあるんだな。


 今日の観察で、俺は〈恋愛の戦略性〉について理解を深めた。

 恋愛には確かに戦略的な側面がある。でも、それは計算高い策略ではなく、相手を思いやる気持ちから生まれる自然な工夫なんだ。

 相手に喜んでもらいたい、相手の役に立ちたい、相手に理解してもらいたい。

 そういう純粋な動機が、結果的に効果的な恋愛戦略になっている。

 これが人間の恋愛の美しいところかもしれない。

 打算的でありながら、同時に純粋でもある。この矛盾が、恋愛を興味深くしているんだな。

 明日はどんな展開が待っているかな?

 エルヴィン君とリリア嬢の関係の進展が楽しみだ。

 そして、他にも恋愛中のカップルがいるはず。色んなパターンの恋愛を観察してみたい。

 人間の恋愛は、本当に奥が深い!

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