【第6話】学生寮
夜が更けて、学院が静かになった頃。俺は学生寮への潜入を開始した。
学生寮は本館から少し離れた場所にある。男子寮と女子寮に分かれてて、それぞれ3階建ての立派な建物だ。
まずは〈男子寮〉から観察してみよう。
1階のロビーには、数人の学生がくつろいでる。
「明日のテスト、やばいな?」
「一夜漬けで何とかなるでしょ」
「俺はもう諦めた」
勉強してる奴、ゲームしてる奴、ただぼーっとしてる奴。みんな思い思いに時間を過ごしてる。
これが「プライベートタイム」ってやつか。
授業中とは全然違う、リラックスした雰囲気。人間には「公」と「私」の使い分けがあるんだな。
公の場では緊張してるけど、私の場では自然体でいられる。
2階に上がると、廊下にいろんな部屋の音が聞こえてくる。
「うわあ、また負けた!」
「もう一回!今度こそ勝つ!」
ゲームで遊んでる部屋。
「♪〜♪〜」
歌を歌ってる部屋。
「明日の予習...うう、眠い...」
勉強してる部屋。
同じ寮にいても、みんな違うことをしてる。これが個性ってやつか。
一つの部屋を覗いてみた。4人部屋で、それぞれが自分のスペースを持ってる。
ベッド、机、クローゼット。狭いけど、プライベートが確保されてる。
面白いのは、同じ部屋でも一人一人の空間の使い方が全然違うこと。
きちんと整理整頓してる奴、本がぐちゃぐちゃに積まれてる奴、ベッドの上に服が散乱してる奴、魔法具がきれいに並べられてる奴。
部屋の状態に、その人の性格が現れてるんだな。
「おい、てめえ。また俺の本勝手に使っただろ」
「悪い悪い、今度から断るよ」
「てか、お前こそ俺のペン借りっぱなしじゃん」
「あー、忘れてた」
共同生活の微妙な問題も見えてくる。
プライベート空間とはいえ、完全にプライベートじゃない。他人と共有してる部分がある。
この微妙なバランスが、人間関係を複雑にしてるんだろうな。
でも、みんなそれなりにうまくやってる。時々小さなトラブルはあるけど、大きな喧嘩にはならない。
これも学習の一部なのかも。他人と一緒に生活する技術を身につけてる。
深夜になると、また違った光景が見えてきた。
「今日、あの子と話せたんだよ」
「おお、どんな話?」
「将来の夢とか...めっちゃ真面目な子だった」
恋愛話。
昼間は言えない本音を、夜になって友達に打ち明けてる。
暗闇が、人間の心の防御を弱くするのかもしれない。
「実は、家のことで悩んでるんだ」
「どんなこと?」
「親父が病気で...学費のこととか...」
深刻な話も出てくる。
家族のこと、お金のこと、将来のこと。昼間は隠してる重い悩みを、夜の寮で友達に相談してる。
これが友情なんだな。
表面的な付き合いじゃなくて、お互いの深い部分を知り合う関係。
寮生活は、そういう深い友情を育てる場所でもあるんだ。
女子寮も覗いてみた。
基本的な構造は男子寮と同じだけど、雰囲気が全然違う。
まず、部屋がきれい。装飾も多くて、居心地よさそう。
「この香り、いいでしょ?」
「どこで買ったの?」
「街の魔法具屋さん」
女子は生活空間を美しく保つことに、男子より関心が高いみたい。
それに、コミュニケーションの仕方も違う。
男子は「やってやろうぜ!」「おお!」みたいな短い会話が多いけど、女子はもっと詳しく話してる。
「今日の授業で先生が言ってたこと、どう思う?」
「私は賛成だけど、でも実際は難しいよね」
「そうそう、理想と現実って違うから」
物事を多角的に分析してる。一つの出来事について、色んな視点から議論してる。
これも性別による違いなのかな?それとも個人差?
観察を続けてると、どうやら個人差の方が大きいみたい。
男子でも詳しく話す奴はいるし、女子でも短い会話で済ます奴もいる。
〈性別〉よりも、その人の〈性格〉の方が影響してるんだろうな。
でも傾向として、女子の方がコミュニケーションにかける時間が長い気がする。
これは何でだろう?
もしかして、女子の方が人間関係を重視してるから?
男子は問題があったら「まあいいや」で済ませることが多いけど、女子は「話し合って解決しよう」とする傾向がある。
どちらが正しいってわけじゃなくて、どちらもそれぞれの良さがあるんだろうな。
夜中に面白い発見をした。
寮には「夜の巡回」があるんだ。先生が定期的に見回りをして、学生たちが規則正しく生活してるかチェックしてる。
でも学生たちも、それを分かってる。
「先生来るよ」
「電気消して」
「寝たふり開始」
巡回の時間を計算して、違反行為を隠してる。
これって面白い関係だな。
先生は「ちゃんと見張ってますよ」というポーズを取る。学生は「ちゃんと守ってますよ」というポーズを取る。
でも実際は、お互いある程度の「遊び」があることを理解してる。
完全に厳格でもないし、完全に自由でもない。
このバランス感覚が、人間社会の特徴なのかもしれない。
規則は大事だけど、規則だけじゃ人間は生きていけない。適度な柔軟性も必要。
その微妙なバランスを、経験を通じて学んでいくんだな。
朝方になって、寮の生活リズムが見えてきた。
早起きの奴、ぎりぎりまで寝てる奴、朝から元気な奴、朝は機嫌が悪い奴。
みんな違う生活パターンを持ってる。
でも、共同生活だから、ある程度は他人に合わせなきゃいけない。
「シャワー、使っていい?」
「あと5分待って」
「朝ごはん、一緒に食べに行こう」
「ちょっと待って、もうすぐ準備できる」
個人のペースと、集団のペースの調整。これも寮生活で学ぶスキルの一つなんだな。
一晩かけて寮を観察して、俺は人間の社会性について新しい発見をした。
人間は個体として独立してるけど、完全に孤立してるわけじゃない。
適度な距離を保ちながら、必要な時には支え合う。
プライベートを大切にしながら、コミュニケーションも怠らない。
自分のペースを持ちながら、他人のペースも尊重する。
これが人間の社会性なんだ。
俺たちスライムにも群れはあるけど、人間の社会はもっと複雑で洗練されてる。
個性と協調、自由と責任、プライベートと共有。対立する要素を巧妙にバランスさせてる。
すげーよ、人間って。
そして、寮生活は人間をさらに人間らしく育てる場所でもあるんだな。
家族から離れて、同世代の仲間と共同生活する。その中で、大人としての社会性を身につけていく。
これも教育の一部なんだ。授業で知識を学ぶだけじゃなくて、日常生活で人間関係を学ぶ。
知識と経験の両方があって、初めて一人前の大人になれるんだろうな。
明日は...そうだな、今度は先生たちを観察してみよう。
学生とは違う、大人の人間の行動パターンに興味がある。
教える側の人間は、どんな風に生きてるんだろう?
楽しみだ!
今日もまた、新しい発見がたくさんあった。人間観察は本当に面白い。
毎日が新しい学習の機会だ。俺の人間理解も、どんどん深まってる。
最高の観察者スライムを目指して、明日も頑張ろう!
◇あとがき
どうも、皆さん!『観察者』ことスライムです。
第1章「脱走したスライムが学院で見た人間たちのカオス生態がヤバすぎた件」、最後まで読んでくれてありがとう!
いやー、人間観察って本当に奥が深いですね。食事、言語、学習、寮生活...どれもこれも興味深くて、観察してる俺の方が夢中になっちゃいました。
特に印象的だったのは、人間が基本的な生存行動を文化的な行動に変える能力ですね。ただ食べるだけじゃなくて、そこに社交やコミュニケーションの要素を加えちゃう。俺たちスライムには思いもつかない発想でした。
そして次回、第2章では...
ついに俺が人間の最大の謎に挑戦します!
「王立魔法学院のオス個体たちの求愛行動がヤバすぎて理解不能だった話wwww」
人間の恋愛を本格観察しちゃいます!
告白現場の目撃から始まって、モテ男の複雑な事情、非モテの大逆転劇、三角関係の勃発、そして最後は決闘騒動まで...学院内の恋愛事情がカオスすぎて、俺の頭がパンクしそうになります。
エルヴィン君という純朴な男子学生の一途な恋愛奮闘記を中心に、人間の「求愛行動」の複雑さを俺なりに分析してみました。
恋愛って、単なる繁殖行動じゃなくて、もっと哲学的で芸術的な行為なんだってことが分かってきました。
次回も俺と一緒に人間観察、楽しんでもらえたら嬉しいです!
次回予告
第2章 王立魔法学院のオス個体たちの求愛行動がヤバすぎて理解不能だった話wwww
「人間の恋愛って、なんでこんなに複雑なんだ?!」
学院に響く告白の声、花束を持って震える男子学生、モテすぎて困るイケメン先輩...俺の人間観察は新たなステージへ!
恋愛の哲学から実戦テクニックまで、スライム視点で徹底解剖!
「え?俺にも恋する気持ちが芽生えるかもって?...まさかね」
どうぞお楽しみに!
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P.P.S. スライムプリンの正体、俺も気になってます。今度こっそり厨房に潜入して調査してみようかな...(笑)