【第5話】食堂潜入
今日は食堂での長時間観察を敢行した。朝から夜まで、人間たちの食事風景を徹底的に研究してやろうというわけだ。
まず朝食の時間。
眠そうな顔をした学生たちが、ぞろぞろと食堂にやってくる。
「おはよう...」
「眠い...」
「コーヒー...コーヒーを...」
朝の人間は面白い。まだ完全に起きてない感じで、動きが緩慢だ。
でも食事を取り始めると、だんだん活発になってくる。食べ物がエネルギー源になってるんだな。
「今日のパン、美味しい!」
「魔力回復ジャムつけると美味しいよ」
「こないだ朝食しっかり食べなかったから、午前中の授業全然集中できなかったよ」
「あー今日も授業いっぱいだなー」
朝食は一日の活動の準備なんだ。単純にお腹を満たすだけじゃなくて、これから始まる一日への準備行為。
人間は未来のことを考えて食事してる。今お腹が空いてるから食べるんじゃなくて、後でお腹が空きそうだから先に食べてる。
これって、すごく高度な思考だよな。未来を予測して、先回りして行動する。
俺たちスライムは、お腹が空いた時に食べるだけ。でも人間は違う。
計画的な食事。これも人間らしい特徴だ。
朝食時間に面白い光景を目撃した。
ある女子学生が、男子学生にパンを分けてもらってる。
「ありがとう、助かる」
「いえいえ、僕はお腹いっぱいなので」
でも明らかに嘘だ。その男子学生、まだ全然食べてない。
これも昨日見た求愛行動の一種かな?食べ物を分けることで、相手に好意を示してる。
でも女子学生の方は、本当に困ってたみたい。
「寝坊して、購買部に行く時間がなかったの」
「朝食抜きだと、午前中の授業がつらいよね」
「本当にありがとう。今度お返しするね」
あー、これは純粋な助け合いかもしれない。
求愛行動なのか、友情なのか、単なる親切なのか。判断が難しい。
もしかして人間の行動って、複数の意味を同時に持ってるのかも。
表面的には助け合いだけど、内心では好意を伝えてる、みたいな。
一つの行動で複数の目的を達成する。効率的だけど、複雑だ。
昼食の時間になると、食堂の雰囲気がガラッと変わった。
朝とは比べ物にならないくらい賑やか。みんな授業で疲れてるけど、友達と会えて嬉しそう。
「今日の魔法理論、難しかったね」
「実技の方はどうだった?」
「今度のテスト、やばくない?」
食事しながら情報交換してる。授業の内容、テストの情報、噂話。
食堂は情報のハブなんだな。みんながここに集まって、情報を共有する。
そして面白いのは、情報に色んな種類があること。
学習に関する情報:「あの先生の授業はテストに出やすい」
社交に関する情報:「あの人、誰と付き合ってるの?」
生活に関する情報:「購買部に新商品が入ったよ」
人間は情報を分類して、使い分けてる。
そして情報の価値も、人によって違う。
勉強熱心な学生は学習情報を重視する。恋愛に興味がある学生は社交情報を重視する。
同じ情報でも、受け取る人によって価値が変わるんだ。
昼食時に一番盛り上がってたのは、やっぱり恋愛関係の話題だった。
「あの二人、最近よく一緒にいるよね」
「もしかして付き合ってるの?」
「今度確認してみようよ」
人間って、他人の恋愛にすごく興味を持つんだな。
自分の恋愛じゃなくて、他人の恋愛。なんで?
観察してると、どうやら恋愛は個人的な出来事でありながら、社会的な関心事でもあるらしい。
誰と誰が付き合ってるかで、人間関係の地図が変わる。だからみんな気になるんだ。
それに、他人の恋愛を見ることで、自分の恋愛の参考にもしてる。
「あの告白の仕方、素敵だった」
「ああいうプレゼントもらってみたい」
「でもあのタイミングはどうかな?」
他人の恋愛から学習してるんだ。人間らしい学習方法だな。
夕食の時間は、また違った雰囲気だった。
一日の疲れが出てるのか、朝や昼ほど活発じゃない。でも、どこかほっとした感じもある。
「今日、めっちゃ疲れたわー」
「明日も授業かー」
「今夜は早く寝よう」
夕食は、一日の終わりを確認する儀式みたいだ。
そして、夕食でよく見られるのが、深い話。
昼間は軽い話題が多かったけど、夕方になると真剣な話が増える。
「将来、どんな魔法使いになりたい?」
「卒業したら、どこに就職しよう?」
「家族のこと、最近考えるんだよね」
疲れてるから、心の防御が弱くなってるのかも。それで本音が出やすくなる。
それとも、一日が終わるという区切りで、人生について考えたくなるのかな?
どちらにしても、夕食時は人間の深い部分が見える時間だ。
食堂で一日観察してて、一番驚いたのは料理の多様性だった。
〈朝〉は簡単なパンや果物が中心。〈昼〉は栄養バランスを考えたしっかりした食事。〈夜〉は豪華で満足感のある料理。
時間帯によって、料理の種類が全然違う。
これって、人間の一日のリズムに合わせてるんだな。
朝は時間がないから簡単に。昼は活動のエネルギーが必要だからしっかりと。夜は一日の疲れを癒すために美味しく。
食事も、人間の生活パターンの一部なんだ。
そして、季節によっても料理が変わるらしい。
「そろそろ冬メニューに変わるかな?」
「温かいスープが恋しい季節だね」
季節の変化にも対応してる。人間の食事は、時間と季節の両方を考慮した、すごく洗練されたシステムなんだ。
それに、栄養のことも計算されてる。
「魔力回復効果」「筋力増強効果」「集中力アップ効果」
この世界の料理は、ただ美味しいだけじゃなくて、機能性もある。
食事によって、体調や能力をコントロールしてる。食べ物が薬の役割も果たしてるんだ。
すげーな、人間の食文化。
でも一番面白かったのは、食事中の人間関係の変化だった。
普段はあまり話さない学生同士が、同じテーブルに座ったことで会話が始まる。
「君も魔法生物学を取ってるんだ」
「そうなんです。あの授業、面白いですよね」
「今度一緒に図書館で勉強しない?」
食事が、新しい人間関係を作るきっかけになってる。
共通の行為(食事)を通じて、距離が縮まる。これも人間の社会性の特徴だな。
食堂は、ただ食べる場所じゃない。『社交の場』でもあるんだ。
一日の観察を終えて、俺は人間の食事について新しい理解を得た。
食事は、栄養摂取だけじゃない。時間管理、情報交換、社交、感情の共有、文化の継承...色んな機能を持ってる。
人間は、基本的な生存行動を、豊かな文化行動に変える天才だ。
食べるという単純な行為を、これほど複雑で意味深いものにしてしまうなんて。
俺も、いつか誰かと一緒に食事してみたいな。
「スー君、今日は何を見てきたの?」※スー君:スライム君のあだ名
「君のスカートの中!」
「バカ!」
そんな会話ができる日が来るといいな。
明日は何を観察しようかな?今度は学生寮を覗いてみたい。人間たちのプライベートな時間に、どんな秘密が隠されてるか気になる。
【データ】学食人気メニューランキング
■朝食部門
1位:魔力回復トースト(バター+魔力ジャム)
2位:エナジーサラダ(一日の活力源)
3位:目覚めのコーヒー(眠気覚まし効果)
4位:果実ヨーグルト(美容効果で女子に人気)
5位:簡単サンドイッチ(時間のない学生の味方)
■昼食部門
1位:魔力回復カレー(辛さで魔力3倍回復)
2位:ドラゴンステーキ定食(筋力+10効果)
3位:海の幸パスタ(知力向上効果)
4位:野菜たっぷりスープセット(バランス重視)
5位:魔法使いの弁当(お母さんの味)
■夕食部門
1位:豪華魔物肉コース(一日の疲れを癒す)
2位:温野菜と薬草シチュー(回復効果抜群)
3位:特製ハンバーグ(ボリューム満点)
4位:エルフ風精進料理(あっさり派に人気)
5位:スライムプリン(デザート、謎の人気)
■効果別メニュー
・魔力回復系:カレー、スープ、特製ドリンク
・筋力強化系:肉料理全般、プロテインシェイク
・知力向上系:魚料理、ナッツ類、お茶
・美容効果系:サラダ、果物、エルフ料理
・リラックス系:薬草茶、温かいスープ
※全メニュー学割価格
※効果には個人差があります
※スライムプリンにスライムは入っていません(多分)
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