#02 鉄の意志
リスタートミッションの成功から二日後。
GCA本部──地下深くに造られた廃駅跡の作戦司令室には、重苦しい空気が漂っていた。
GCA兵士1「……結局、フォックスが来なければ全滅だった。」
GCA兵士2「本当に“味方”なのか? 突然現れて、全部ひっくり返して……」
GCA兵士3「でも、あの動きは……ただ者じゃない。」
冷えた空気の中、メンバーたちの議論はまとまらなかった。
**“フォックス”**──名も、顔も、正体も不明。ただ、その力は圧倒的だった。
敵部隊を文字通り蹴散らし、あの絶望的な作戦を“勝利”に変えた。
そのときだった。
司令室の扉が、無言で開いた。
GCA兵士2「おい、誰が……!」
足音が静かに響く。
そして、姿を現したのは──あの仮面の男。
黒のロングコート。灰銀の仮面。背中には、戦場で見せたものと同じ、“鉄と煙の匂い”が漂っていた。
ざわつく空気が一瞬で凍りついた。
誰もが言葉を失う。威圧ではない。“圧倒的な確信”を持つ者だけが放てる空気。
男は、中央のブリーフィングテーブルに歩み寄ると、仮面の奥から淡々と語り始めた。
フォックス「GCA。──お前たちは、まだ“子供”だ。」
全員が目を見開く。
フォックス「理想ばかりを掲げ、準備も覚悟も不十分。人類に殴られ続け、それでも希望を信じていた。──だが、そんなものでは、この戦争に勝てない。」
声は静かだったが、確実に胸に刺さる。
怒号や嘲笑ではない。核心を突く“真実”だった。
フォックス「リスタートミッションが成功したのは、偶然でも奇跡でもない。──俺がいたからだ。」
誰かが息を飲む音がした。だが、フォックスは続けた。
フォックス「俺は、戦い方を知っている。人類の戦術、兵器開発、心理操作、そのすべてを。“奴ら”と真正面から渡り合ってきた。」
「……じゃあ、あなたは……何者なの?」
かぐやと同じMAパイロットの上月まりなが問いかける。
だが、フォックスは答えなかった。
フォックス「それを知る必要はない。だが、この先、本気で人類と戦争をするつもりなら、私と手を組むしかない。」
沈黙が降りる。誰も言葉が出なかった。
かぐやもまた、じっとその仮面を見つめていた。
かぐや(この人……人間だ。機械じゃない。でも、なぜだろう……“懐かしい”と感じてしまう。)
やがて、フォックスは背を向けた。
フォックス「私は提案をした。選ぶのはお前たちだ。ただし、猶予はない。」
そのまま、彼は去っていった。まるで、そこが“自分の家”であるかのような余裕を残して。
──扉が閉まる。
まりな「……かぐや。どう思う?」
まりなが、そっと問うた。
だが、彼女は答えなかった。ただ、胸の奥に芽生えた奇妙な確信をかみしめていた。
かぐや(彼となら……人類に、勝てるかもしれない。)