村娘から娼婦へ
※一年以上更新してなくて誠に申し訳ありません。<(_ _)>
ヒロインの愛する青年のキャラクターを、ソフトかハードのどっちのタイプにするか迷ったのと、デデの棲む森の世界の描写を、ファンタスティックに描きたかったのですが、脳内妄想が拡がりすぎて、現能力では思ったイメージが表現できませんでした。
もう少し、森林資料など色々と参考にして背景描写を書きたいので2025年の晩秋以降再開予定です。
PV&ポイント見ると、お一人だけ読んでくれる方がいるみたいなので、その方の為にも最後まで書き切りたいです。
※娼婦がヒロインなので性的な表現があります。苦手な方はご注意くださいませ。
◇ ◇ ◇ ◇
ある国に1人の娼婦がいた。
娼婦の名はデデ。
もちろん娼婦名である。本名はアンナといった。
アンナは王都に近い村娘だった。
両親は雑貨屋を営んでいて15歳まで何不自由なく過ごしてたが、両親と旅行中に馬車の事故に見舞われて、アンナだけを残してふたりは亡くなった。
アンナは軽い足の打撲で済んだが、事故の恐怖と両親の死が重なりショックで寝込んでしまった。
ようやく歩けるようになったものの、アンナは声が出せない。
「あっ……うぅ……」
と口を開けてもうめき声だけで、いくら話そうとしても声にならなかった。
──15歳で声を失い、両親を失い孤児になったアンナ。
親戚は父方の片足の悪い叔母が一人だけいた。
アンナの叔母は、既に夫が死亡して寡婦となり王都で一人暮らしていた。
叔母の意向で、アンナは両親が残してくれた雑貨店をたたみ叔母の家に引き取られることとなった。
既にアンナは村の平民学校は卒業していたので、読み書きはできた。裕福でもない叔母が孤児になったアンナを引き取った理由は、メイドとして自分の家で無償で働かせるためだ。
アンナも口が利けずとも、筆談だけで叔母の家なら働けるだろうと素直に承諾をした。
だがその数日後、アンナには更なる悲劇が起きる。
◇ ◇ ◇
その日は朝から五月雨が降っていた。
天候が悪かったが叔母の命令で「荷物は持たなくていいから、今日中に私の家に来るように」と急に御者が馬車で迎えにやってきた。
( おかしいわ。引っ越しは明日だったはず。荷物は後から運んでくれるのかしら?)
アンナは訝しがったが、とりあえず叔母の家に向かうために馬車に乗った。
だが、行先は叔母の家ではなく、王都の高級娼婦の館であった。
アンナは、連れられてきた場所が娼婦館だと気が付いた時は既に手遅れだった。
それでもどうにか逃げようとしたが、屈強な男どもに掴まれてしまい、どうにも出来ない。そのまま厳重に部屋に監禁されてしまう。
なぜ叔母は姪のアンナを娼婦館に売ったのか──?
後に分かったことだが、当初、年老いた叔母はアンナを家の使用人として、無償で働かせるつもりだった。
だが「若い孤児の娘を引き取るより高級娼婦館に売れば大金が入る、俺が手配してやる」と、ある男にそそのかされていとも簡単に承諾してしまったのだ。
確かに、娼婦館が大金を払うくらいアンナはとても美しかった。
流れるように美しい銀の雫色の髪。
色白で長い睫毛に縁どられた濃いエメラルド色の瞳。
頬はピンクの薔薇色。
ふっくらとした小さな唇は桜の花弁のように可憐だった。
アンナは幼少の頃から目立つ顔立ちの美少女だった。
昔から伝わっている村の“わらべ歌”がある。
「かくれかくれよ、おらのめんこい娘は、かどわかしにあうよ。めんこい娘は呪い師に呪われるよ~」
両親は昔から迷信深い人たちであった。
美しすぎる一人娘が危険な目にあうのを非常に恐れた。
それほど娘の容姿は村では群を抜いていたからだ。
日曜教会や祭りなど村の必要行事以外は、なるべく娘を部屋から外へは出さなかった。
村の学校へ行く時も、母親はアンナの髪をひっつめにして、学校の先生には「禿げていて頭に大きな傷がある」と帽子を被らせて顔を隠した。
更に黒縁メガネもかけさせた。
12歳には初潮を迎え、背も高くなり子供っぽい体つきから、女性らしい体つきへと変化していく。
年々、アンナの匂うような美しさが目立つようになっていく。隠し通せるものではなかった。
母親は娘の美しい顔立ちを隠すために、眉墨で太く眉毛を描き、茶色のペンで顔中ソバカスが散らばっているように描いた。
着る服も、灰色のダボダボの地味なワンピース姿で娘の体型を隠した。
麗しい容姿をひた隠しにされたアンナ。
本人は反発すると思いきや親の言う通り素直に従った。
元々、アンナは無口でもの静かな女の子だ。
自分の容姿が美しいという実感も余りなかった。
友達も少なく周りの子たちもアンナの美しさに、誰一人として気付かなかった。
アンナの本当の姿を知っていたのは、家族と一部の親戚のみだけだ。
「アンナ、お前はまるで聖女様の如く美しい、一体誰に似たんだろうねぇ……」
母親は、湯あみをしたアンナのキラキラと濡れ光る銀色の髪を剝くたびに、鏡に映る娘の姿に感嘆していた。
「母さんはおおげさよ、村の男の子たちなんて誰もあたしなんか眼中にないわ」
「それはお前、眼鏡かけて太い眉毛とソバカスをかいて隠してるからだよ」
「でもあたし、実際目が悪くて自分の顔がよく見えないのよ。この黒縁メガネも度が余り強くないけど、かけないよりはマシだわ。後ろの席でも黒板の字が何とか見えたもの」
とくったくなく微笑むアンナ。
どうやらアンナは軽い近眼で、自分の顔がよく見えないようだった。
もしもアンナが自分の容姿が美しいと自覚していたなら、自我の強い若い娘だったならば──
「なぜこんな醜いソバカスをわざわざつけなければならないの?」と母親に問い詰めたかもしれない。
他の村娘たちのように、お祭りの日には綺麗な一張羅のワンピースをねだったのかもしれない。
だが、アンナはそういう華美な服や宝石などには執着心がなかった。
両親が大好きで「父さんと母さんのやることに、間違いはない」と信じきっている子供だった。
ただアンナの本音をいえば、仲のよい友達と大自然の中で花や昆虫や動物に触れて、野原を自由に駆け巡りたい、そんな素朴な希望を抱いてはいた。
「お前は心も清らかな子だね、きっと誰よりも素敵な人と添い遂げられるさね、それまで、もう少しのしんぼうさね」
母親は目を細めて娘を優しく抱きしめた。
両親の思いの中では、娘に見合った地に足のついたしっかりとした男性と、見合い結婚でもさせてこの雑貨屋を継いでほしいという夢があったからだ。
アンナの母親も銀髪で美人だったが、娘とは余り似ていなかった。
瞳もエメラルドというよりは、はしばみ色である。
美人の部類とはいえ、村でも何人かいる見慣れた顔立ちの美人だった。
父親も誠実で人柄はいいが背は低くめで、顔も凡庸でけっしてモテるタイプの男ではない。
どちらの親にも似ていないアンナ。
両親は「まさに鳶が鷹を生んだ」と口にこそ出さないが、その表現がぴったりだとお互い内心思っていた。
そしてこれは本人すら気付かなかったが、“アンナはこの世で一番美しい胸の持ち主”だった。
少なくとも両親は本気でアンナの胸を“世界一”と自負していた。
──いったいアンナの胸はどう美しいのだろうか?
それは実際に裸の胸を見た者でないとわからない。
口ではとても言いあらわせないほどの美しさであった。
高級娼婦館の女主人は早速、アンナを風呂に入らせて下女たちに体の隅ずみまで綺麗に磨かせた。
そして裸になったアンナを、頭の先からつま先までじろじろと舐めるように観察していく。
「これはこれは、滅多にない上玉じゃないか!」
と女主人は驚嘆しながらアンナに近づき、彼女の顎の先をぐいっと手で持ち上げて、自分の顔に近づけてアンナを凝視した。
(!?──)
「へえ、顔立ちもだけど、この胸の美しさはとんとお目にかかったことがないねぇ。こりゃ凄いわ……もう、一体なんていったらいいのか……」
ほぉっと大きな溜息をして鼻の穴を大きく膨らませた。
それからおもむろにギュッとアンナの片方の胸を掴んだ。
( つっ、 痛いっ──!)
「ほぉ、揉み心地も極上もんだねえ。いやいや、これなら殿方たちはさぞや喜ぶだろうよ、オッホッホッホォ〜!」
と女主人は更に下品に大声で笑い出した。
アンナは屈辱と恥かしさで顔が真っ赤になった。
( ──悔しい、一体なぜ、あたしがこんなめに合わなければならないの? この卑劣な化粧粉の臭い女は誰なの、なぜこんな酷いことをする?──こんなことなら、あの時、あたしも父さんと母さんと一緒に死んでれば良かった!)
アンナは唇をきつく噛んで、声にならない嗚咽をあげた。
悔し涙がほろほろと頬につたう。
エメラルドの瞳が燃えるようにきつく、女主人の顔を凝視した!
女主人はさらに容赦なくいった──。
「そんな眼をしても無駄さ。あんたは何も話せない唖何だろう?──あんたの叔母には大金を払って約束させた。今後、あんたとは一切関わらないとね。わかったかい。あんたの味方は誰もいやしないのさ。──いや、これからはあたしがあんたの味方なんだよ。美味しいものを食べさせて、キレイなドレスを嫌と言うほど着せてやるよ。そして、どんどん稼いでもらうからね。しかし見れば見るほど器量よしだね──これは久々に金の卵を掴んだよ。大金をはたいた甲斐があったもんだ。オッホホホッ!」
と、派手な孔雀の扇をはためかせながら先ほどよりも声高に笑った。
こうして村娘のアンナは、王都でも有名な高級娼婦館に買われて“娼婦デデ”に身を落とす事となった。