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眠気




 六十五歳の老体を十歳未満の身体に変化させたからか。

 十歳未満の身体にまだ馴染んでいないからか。

 十歳未満の身体だからか。

 どこどこまでも続く真っ黒い舗装道路という単調な景色に飽いたからか。

 一目惚れしたペガサスと共に旅をするという夢を叶えられそうにない今のこの状況に心身が拒んでいるからか。


 サイドカーに乗せられた善嗣よしじは百本の薔薇の花束を抱えたまま、いつの間にか眠っていたらしい。

 肩を揺り動かされた善嗣よしじは、未だ覚醒しきっていない頭を動かしては、己を起こした日埜恵ひのえを見上げた。


「休憩しようか。お腹空いただろ?」


 言われてみれば空腹なような気もしないでもないが、それよりも。


「あの。食事よりも身体を横にして眠りたいのですが………できそうにないですね」


 目に痛い蛍光色の豆電球でこれでもかと装飾された休憩所、もとい、飲食店は、どう見ても、宿泊は兼ねていそうになかった。

 恐らく、お酒とダンスを健全に夜通しで楽しむクラブが催されているのだろう。

 人々のとても賑やかな声と音楽が、扉も窓も閉め切っているにもかかわらず、騒々しく聞こえてくる。


「う~ん。まあ、大丈夫。だと思うよ。とりあえず、店主に訊いてくるから。そこに居てね」

「はあ」


 こっくりこっくり。

 大人になってからこっち、感じた事のない重みを宿した頭が、己の意思とは無関係に前後左右に動き回る。


 早く、ふかふかの布団に包まれて眠りたい。

 縮こまった身体を思いっきり伸ばしたい。

 善嗣よしじの頭にはそれしかなかった。

 今は、











(2024.6.9)




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