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音楽の一歩目

桃音は翠のいる教室へ通うようになった。

担任にあまり行き過ぎても翠の負担になるかもしれないと言われた為頻度は時折の程度ではあったが。


「オブシディアンの◯◯って曲かっこいいよね〜」


「うん、根元さんのギターも良くてユナちゃんの歌い方がすごく良い、こういう詞作れるアルマさんはやっぱりすごいなと思って…略」


オブシディアンの話になるとやはり翠は人が変わったようにいきいきとし始める。そんな翠を見るのも桃音は好きだった。


「うん、うん。いいよね!」



ある日は桃音の食べ物の話をした。オブシディアンの時の会話のように翠はいきいきとはしていなかったけれど。

いわゆる通常運転のような翠。少し俯き加減で声も小さかったけれど桃音の話しに応えてくれた。


「◯◯の肉まん美味しくて、翠ちゃんも食べたことある?」


「…無い。けどテレビで見たかも?」


「確かに、テレビでもたまにやるね〜!…あ、そろそろ行かないと。また来るね」


「うん…」


壁にかけられている時計を見ると次の授業が始まるまで5分ほどだった。手を振り部屋を出る。翠は桃音を少し見てからテーブルに置かれている勉強ノートに視線を移した。



教室に戻る途中桃音は音楽室の前で立ち止まる。音楽室の扉には音楽部と手書きで書かれた紙が貼られていた。


「そういえば部活まだ決められてないな。音楽部か…」


桃音は音楽部も良いかもしれないと。しかし桃音は全く経験が無い。この前のように経験が無いと難しいと言われる可能性も考えていた。どうしようか、考え混んでしまいそうになったがチャイムに遮る。ひとり大慌てで教室へと戻った。


「先生見てないから走っちゃお〜!(…音楽のこと翠ちゃんに相談してみようかな〜うん。そうしよう)」



そう思い立ち休憩時間の長い昼休みに桃音は翠に相談しに

行くことに決めたのであった。



ー昼休み


「ごめん、先生に用事があって行ってくるね」


「また、先生のとこいくの?」


「うん、ごめんね〜」


談笑をしている最中隙を見て途中に友達に謝りながら教室を抜け出す。

翠に会いに行ってることはクラスの友達に秘密にしていた。別室に打ち明けて会いにいかれたら困るからごまかすようにと担任から言われていた。正直、誤魔化すのは嘘ついてるような気持ちになり苦手だった。先生に会いに行くという誤魔化しかたしか毎度出来ない。いつか限界が来てしまうと桃音は感じていた。


友達に分かられてしまった時の事をいずれは考えないといけないと思いつつ桃音は翠のいる部屋へと向かった。


「翠ちゃん来たよ〜」


やんわりとした掛け声と共に扉をノックすると翠は直ぐに扉を開けてくれた。

中に入り翠の向かいに座り息をつく間もなく話し出す。

躊躇しない桃音らしいといえばそうだ。


「いきなりなんだけど、翠ちゃんに相談したい事があって」


「…どうしたの?大丈夫?」


相談と言われ少し桃音のことを心配の様子が伺えた。

翠の声色には心配の色が混じっているように感じ取れた。


「あまり深刻な事じゃないから大丈夫だよ。ありがとうね〜。翠ちゃんみたいにギターするのって難しいかな?」


「…私もパパに教えてもらったけどなかなか出来なかった…」


「やっぱりそうか〜。あのね、部活音楽部もいいかなと思ったんだけど。いきなり何も出来ないで行くのもダメかなぁと思ってそれでギター弾けるようになりたいと思ってたんだけど、やっぱり難しいよね。その前にギター持ってないから買うところからなんだけど。…あ、また私長々とごめんね〜」


桃音は手を合わせ話し過ぎた事を謝罪をした。

担任に陸上部に入部希望を出した時の事も踏まえ

音楽部には何か楽器が出来るようになってから希望を出そうと感えていたのでギターが出来る翠に相談したという事だ。

 

「大丈夫…いっぱいお話ししてくれて、嬉しい。…ギターなら貸してもいいよ」


「え、本当に?でも翠ちゃん使うんじゃない?本当にいいの?」


「…最近弾いてないからいいよ。…でも学校持ってこれない」


「あ、そうだねっ。う〜んじゃあ外とかで会って渡してもらった方が良いかな。この前のデパートとかで待ち合わせする?翠ちゃんと初めて会ったデパート」


「でも…私ひとりで行けないから、お姉ちゃんに相談してからでも良い…?」


コクリと頷いてから翠は胸に手を当てて少し怯えたように

言った。


「もちろん大丈夫だよ。あ、そうだ連絡先交換して良い?」


「うん…」


学校ではスマホ使用は禁止されていたので桃音は

ライ◯のIDを書いたメモを翠に渡した。翠はじっと見てから申し訳無さそうに。


「私書いた紙無い…」


連絡先を書いた紙がない事を謝る。むしろ持っている方が珍しいといえばそうなのかもしれないが翠はそのことはわからない。


「お家に帰ってからでもその連絡先に送ってくれたら

大丈夫だよ〜」


「わかった…」



ーその晩


桃音は部屋のパソコンで翠の動画を見ていたのだがある事に気づいた。 


(更新した月気にしてなかったけど、ギターも曲の動画も

数ヶ月前で更新止まってる。…翠ちゃん引っ越して来たって言ってたしきっと忙しかったからだよね)


「嫌だ〜!翠ちゃんの新しい曲聴けなくなるのは〜!!」


心の中で悶々としていた思いだがいつのまにか声にして発してしまい、何処からか姉のうるさいという怒鳴り声が聞こえてくる。


「またやっちゃった、あれ、ライ◯?あっ、翠ちゃんからだ〜!」


パソコンに置いていたスマホの画面が開きライ◯が

送られてきた。画面の翠という名前を見て嬉しくなりながらスマホを取る。


『桃音ちゃん?届いてる?』


「届いてるよ〜!と」


そこから1時間ほど翠からの返事は無い。


「…翠ちゃんも寝ちゃったかな。私もそろそろ寝ようかな」


パソコンをシャットダウンして布団に向かい電気を消したところで翠から返事が来た。


『良かった。慣れてなくで遅くてごめんね。お姉ちゃん(叔母さん)と相談して、土曜日いける、大丈夫?』


(良かった。大丈夫だよと…)


こうして翠にギターを貸してもらえる日が決まった。

道のりは長いけれども桃音と翠にとっても確かな1歩だった。

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