♯ちょっと切ない
さて、瑞月さん。今日は商店街入り口にある桜の木を思います。
ここ最近は落ちるべきか、色づくべきかを悩んだ葉が、悩んだ末に茶色く落ちてしまっていました。
だけど、今年は秋に気温がぐっと下がったので、色づきが間に合いそうなのです。
秋の空、ほんの少しアンニュイな気持ちになるそんな季節。瑞月さんは、会計台に置いている切ないお話に視線を落としました。
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♯「フルサトRadio」
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作:たびーさま【空想科学SF】
近未来。AI搭載のロボット達が人間と共に生活をする時代となりました。その村でも名前を付けられて、まるで息子や娘のように声を掛けられながら、農作業などのお手伝いをするロボット達がいたのです。
でも、災害警報が鳴り始めます。
すぐに帰れるから。
ロボット達は避難せず残りました。
東日本大震災の時、ペットや家畜がこのロボット達と同じ運命を辿ったことは、まだ私の記憶に新しいです。
涙が止まりませんでした。
どこに想いを持って行くかそれぞれだと思います。でも、忘れられない記憶とぶつかるはずです。
♯『悪魔が涙を流せるなら』
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作:虹色冒険書 さま【文芸 ヒューマンドラマ】
もし、私が彼女だったら「もう生きていけない」とまだ生きているのに、無駄な時間を過ごしてしまうと思います。きっと空を見上げ神様を恨むのでしょう。
指定難病の空ちゃんは闘病も敵わず、医師からも自宅療法に切り替えられてしまいます。QOLを優先にということなのでしょう。元気な時は楽しく笑い、ビジュアル系ロックシンガーで悪魔の異名をもつ彼と同じように叫び、熱唱している姿が見られます。
いつか…というそんな時間がない彼女の夢は、大好きな悪魔の彼に会うことでした。
そして、当たり前のように「生」を楽しんでいる彼女の姿に心打たれ、SNSに上がる声は、その夢を叶えて欲しいというものでした。
だから、そんな彼女に、本来なら魂を喰らうはずの悪魔も手を差し伸べたくなったのでしょう。
悪魔が涙を流せるのなら…
優しさと懸命さが涙を誘う一作です。
どうぞ、悪魔と共に涙を流してみて下さい。(レビューより引用)
♯『僕と猫と秋の空』
https://ncode.syosetu.com/n0412ka/
作: たこす さま【文芸 純文学】
みなさま、感情欠如症候群って知っていますか?
私は、知っているような知らないような……。
感情があるのに気づかない又は気づけない症例らしいのです。
さて、ここに出てくる少年も、そんな感情欠如症候群というものでした。だから、少年は、別に感情がなくても全然平気だと、心揺らされることなく平穏な日々を過ごしているのです。
だけど、このお話のミソは、感情がない少年のお話ではないということ。
そんな少年の元に、猫が現れるのです。
猫も感情の起伏があまり見えない人に身近な動物ですよね。そんな彼らが出会ったら……。
思わず涙ぐんでしまう、そんな秋の空にピッタリなお話です。
♯『優しさがこわれてしまう時』
https://ncode.syosetu.com/n3346la/
作: 歌池 聡さま【文芸 純文学】
切ないというよりも、やるせないという思いが湧き出てくるお話。
ある専業主婦が病院へ通っています。
家族はそれを知っているのに自分のご飯の心配や洗濯の心配だけを、メールで送ってくるのです。
そして、ふと彼女の中にある優しさが壊れてしまう。その瞬間が切り取られたお話でした。
彼女の未来は、どうすれば安らかなものになるのでしょうね。
ふと考えてしまいました。
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落ちる葉もあれば、色づく葉もある。
だけど、時が来れば、いずれ彼らにも彼らの待つべき『時』が来るのかもしれませんね。
そんな感傷に浸りながら、秋の夕暮れの中瑞月さんはそっと本と閉じました。





