第16話 ほろ苦デビュー ~後編~
このとき僕は、一瞬唖然とした。
すると西村監督が「2アウトまで来ていたのになぁ…でも対戦相手も今日はついてなかったなぁ…」とつぶやいた。
そして田村投手はベースを走っていたのだが2塁から3塁に足を捻ってしまった。
「痛っ!足を捻ってしまった…どうしよう…」
すると東京ランナーズの監督が田村投手のもとに向かうと審判が出てきた。
「それは公認野球規則によりできません!!」
「どうしてですか?俺は監督ですし助けるのは当たり前じゃないですか!」
「それだったら代走を出してください。それだったら成立しますけど…」
「分かりました!仕方がないので代走を出しますね。」
僕は、近くで見ており野球規則のルールはある程度知っていたので東京ランナーズの監督に声をかけた。
「監督!少し待ってください!」
「いきなりどうしたんですか…」
「代走を出してしまうと本塁打の記録は残っても彼女に打点と得点が公認野球規則5.10(c)により記録されないんですよ!」
「そうかもしれないけど…他に方法がないし…」
「審判!相手チームであれば助けてあげても本人に打点はつきますよね!?」
「はい!相手チームの選手であればルールには記載されてませんので大丈夫ですよ!」
そして僕は、彼女に「一緒にゆっくり歩きましょう!」と声をかけた。
「望月くん…でも打たれた側だよ!それに私は敵チームだよ…何で助けてくれるの?別に打点がつかなくても私が足を捻ってしまったんだから…」
「何を言ってるんですか!確かに普通のホームランもすごいよ。でも投手がしかも満塁ホームランを打てることなんてまずありませんよ!」
「確かにそうかもしれないけど…これは私の責任だし…」
「さっさと行きますよ!」と僕は、彼女の手を繋ぎながらゆっくりと一緒に歩いて行く。
実況:「なんと言うことでしょ!神戸ドリームベイスターズの望月選手相手チームの投手を助けています。これはプロ野球始まって以来史上初の出来事が起きています。球場は今、感動ムードに包まれようとしています。」
解説:「すばらしいですね!なかなか出来ることではないと僕も思いますね。望月選手のお父さんもベンチで感動しているのがカメラに映っていますよ!」
「本当にありがとうございます…私ってやっぱりプロ失格ですよね。相手チームの選手に迷惑をかけるなんて…」
「次からその言葉を言うな!本当に失格だったら今日このマウンドにも打席にも立てていないはずですよ!」
「確かにそうですよね…すいません!もう口にしません…望月くん…本当にありがとうございます。」と言いながら田村選手は泣き始めた。
「何回も言わなくても良いですよ!」
そしてホームベースになんとかたどり着いた。
(ホームイン!!)
「だけど苦しい4点ですね…」
「なぜ苦しい4点なんですか?すばらしいじゃないですか!僕もまだまだだなって思いました!」と笑いながら話した。
「だって助けてもらったのに4点もらうなんて…勝負の世界って残酷ざんこくですよね…」
「自分を思い詰めるのはやめてください!胸を張って残りのイニングを頑張って投げてください。」
「でも…」
「じゃないと僕が困ります!」
「分かりました!私、頑張ります。本当に助けてくれてありがとうございました!」
そして僕たちはお互い敵チームと言うことを忘れてハイタッチをしてそれぞれのベンチに戻って行った。
そして僕がベンチに戻ると西村監督が大泣きをしているのだ。「泣かせることしあがって…」
「監督…泣かなくても言いと思いますよ!それで次の投手は準備できていますか?」
「何を言ってる!続投だ!ケガもしていないのにこんなところで降板させたら監督のイメージががた落ちだろ!!」
すると原松さんがこう言ってくれた。「右肩大丈夫?さっき少し痛そうにしていたけど…」
「大丈夫ですよ!ちょっと痛かったけど今は痛みも出ていませんので!!」
すると西村監督が「念のため検査してもらった方がいいかもね…確かに球威は良かったけど安全のために交代だ!」と言い交代させられることになった。




