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ある女帝の疑惑


徳寿が継ぐはずであった皇位。

それを夫の他の息子達に譲るつもりは毛頭ない。


徳寿には男児の子供一人がいる。

私の可愛い孫息子、千寿。

次の皇帝は他の誰でもない、私が立つ!そして千寿へと繋げる。

そのためにも私が女帝に就かねばならなかった。千寿の地位を揺るぎないものにしなければならない。


もう一人の息子。

愛する最初の夫との間に生まれた息子を宰相に任じた。

優秀な自慢の息子は、母親である私の補佐をしっかりと勤めてくれた。





「陛下、加羅様がお付きになりました」


十数年前に御三家に嫁いでいった孫娘。加羅と会うのも婚儀いらい。都から離れた場所できっと苦労した事だろう。世継ぎの男児に中々恵まれなかったが数年前に漸く男の子を産んだ時は心底ほっとした。その孫娘が曾孫の男児を連れてきてくれた。



「お久しぶりです。おばあ様」


あ…姉上……?


「こちらが、おばあ様の曾孫にあたる万寿(まんじゅ)です。私よりもお父様に似ていらっしゃるでしょう?」


幼い宝寿……?


これは…一体。

いいえ…ちがう……。

そんなはずないわ。


「おばあ様?如何なさいました?」

「え、ええ、勿論ですとも。加羅、久しぶりですね。元気にしていましたか?」


姉上も宝寿も、もうこの世にはいないのだから。

なにも驚くことなどない。

私と姉上は同じ父と母を持つ姉妹なのだから。


「はい。すっかりご無沙汰してしまって申し訳ございません」

「いいのよ。加羅は御三家の一角である雪月(せつげつ)家に嫁いだのだもの。領地が帝都から最も遠い場所。豊かな土地ではあるけれど、気楽に会えなくなってしまったわね。皇室と御三家の絆を深めるための婚姻。貴女を幼い身で嫁がせなければならなかった…苦労かけてしまったわね」

「おばあ様!なにを仰るんですか!雪月家の方々も夫も本当に良い人達ばかりです。私、夫と結婚して幸せなんです」

「そう…なら良かった。」


控えめに微笑む姿が亡き姉に重なる。

姉上は母上に似て、私は父上に似たけれど、私達姉妹の息子は夫である皇帝に瓜二つだった。

そう…双子のように。

だから私の孫娘と曾孫が姉上たちに似ていたところで驚くべきことではない。

なんの不思議もないのだから。


「さあ、万寿、曾祖母君にご挨拶さない」


加羅に促された幼子は、おずおずと挨拶をする。


「はじめまして、まんじゅです」


私を見上げる曾孫。

幼い頃の宝寿に似ている……いいえ、徳寿にも似ている。


「ふふふ。よく挨拶出来ましたね、万寿」

「はい、ははうえ」


再び、在りし日の姉達に姿が重なるのが見えた。

これは誰。

私の可愛い孫と曾孫のはず。


本当に……?


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