結
桜の花舞う季節にて。
受雷は再び物言わぬ花嫁の前に立った。
「ばあちゃん」
(うむ)
彼は、花嫁の肩に手を置く、祖母もその手に重ねる。
「ダイブ」
鎮魂領域へと深く深く・・・しかし受雷の予想通り、禍々しい霊が先を行かせまいと仁王立ちしている。
彼はおもむろに構える。
(ち~ん~こ~ん~破ーっ!)
後ろでは、おばあも破をしている。
アレとアレみたいなねっ。
(ぐぬう!ぐぬう!)
彼女にまとわりつく霊は強烈な抵抗を見せる。
(受雷、出し惜しみするなよ!フルパワーMAXじゃぞい!)
(OK!ばっちゃん!破ー!)
受雷と祖母そして霊と神たちの力が、霊を飲み込もうとする。
(やめてっ!)
その時、この領域に花嫁の悲痛な声がした。
(彼をまた消さないで!)
沈痛な叫びが鎮魂領域にこだまする。
受雷たちは思わず、その手を止めた。
(ぐおおおおおっ!)
霊は受雷に襲いかかる。
(やめて!)
花嫁が受雷の目の前に立ち、両手を広げ制している。
霊は動きを止めた。
そして、花嫁はすべてを語りだした。
霊の正体は、花嫁の幼馴染だった。
幼い頃から二人は将来を誓い信じ疑わず生きてきた。
ところが、男は重い病を患い、16で短い命を失った・・・。
彼女に必ず守るよと言い残し・・・。
月日が経ち、心の傷がようやく癒えた花嫁は、新郎と出会い恋に落ちて結ばれた。
霊となった男はそれが許せなかった。
自分だけが彼女を愛し、守り続ける。
それだけを念じ、念じた・・・ついぞ悪霊と化した男は、その力で男を操り刺した。
花嫁の目から大粒の涙が零れる。
愛する彼女をこの世界に連れようと・・・だが、どこかに良心の呵責があったか、殺傷行為は念だけのものとなり、受雷がそれに気がついた。
受雷はしばし俯いた。
(これっ)
祖母は、受雷のおでこにその人差し指をあて押した。
(・・・・・・)
(しっかりせい)
祖母は笑った。
(ああ)
受雷は頷いた。
(話は分かったぞい)
祖母は霊の前に立つ。
(ぐおおおおっ!)
霊はいきり立つ。
(お前さんの気持ちも分かるがな、分かる・・・が、死んだもんはどうにもならんのじゃ)
(ぐぬぬぬぬぬっ!)
(落ち着け、考えるのじゃ。そんなことをしてどうなる?彼女の幸せは?お前さんの幸せはどこにいったのじゃ?)
(ぐぐ・・・・・・)
(悔しいかろ、寂しかろ・・・じゃが来世にも未来がまっておる・・・な)
(・・・・・・)
霊は怒りを鎮め、膝まづき滂沱の涙をこぼす。
祖母は霊の手を繋いだ。
(受雷あとは頼んだぞよ。大地君と渚ちゃんにおめでとうと・・・あとあのべっぴんさん、必ずモノにするぞよ)
(ばっちゃん!)
(ふほほほっ、あとはよろしく~)
霊や神たちは受雷と花嫁に手を振りながら天に昇って行く。
受雷と花嫁は鎮魂領域に2人となる。
(わたし・・・)
花嫁は呟く。
(大丈夫)
受雷は頷いた。
(・・・わたし)
(そろそろ、目を醒まそう。これは悪い夢だ。素晴らしい世界が君にある)
花嫁は小さく頷いた。
「こんなんでましたけど~っ!」
目を開けると、受雷は教会にいた。
行われているのは、2人の結婚式。
「ふっ」
と笑う。
「お幸せに」
大地と渚の誓いのキスに拍手を送りながら、受雷はもう一組のカップルにも思いを馳せた。
外では超満開の桜の花びらが、風に煽られ天高く舞いあがった。
おしまい
四月の花嫁編、堂々完結・・・かな。
読んでいただき、ありがとうございます。




