09 怪盗
ニケルちゃんのお部屋にお泊まりしたマクラ。
ふたりの寝顔を一晩中ガン見した私は、
人さまにお見せできないような寝不足のお顔を隠すように、
領主さまのお屋敷を足早に後にしましたとさ。
「ひどいですよモノカ、あの状況から見捨てられるとは思わなかったです」
ノルシェすまぬ、今はお互いひどい顔色同士、許しておくれ。
「ギルドの表彰式のことを思い出して、暴れそうになっちゃったっ」
アイネすまぬ、申し訳なさそうに謝ってくれたセシエラさんに免じて、許しておくれ。
「ニケルちゃんにお手紙書いても良いかなっ」
マクラがんばれ、速達鳥が重くて飛べなくなるくらいにいっぱい書いてあげなさい。
「お気に入りの私物ドレスをお気に召してくれたのが私には最大のご褒美なの、モノカ」
シジミありがとう、体型がクリソツだとお洋服の貸し借りに便利だよね。
今度はユーに私の道着を着せちゃうからね。
じゃ、セシエラさんにご挨拶してから、街の散策でもしましょうか。
「気付いてますか、モノカ」
うん、衛兵や街中警備の冒険者がざわついている感じかな、ノルシェ。
「そういえば昨日のパーティーの警備も普通じゃなかったよねっ」
うん、お偉いさんが集まっていたせいだけじゃなかったみたいだね、アイネ。
「ニケルちゃん、大丈夫かな」
うん、ニケルちゃんのお部屋の防御魔法付与はハンパなかったから大抵のことは大丈夫だよ、マクラ。
「実はセシエラさまから最新情報入手済みですの、みなさま」
おぅ、さすがはシジミ、早速聞かせておくれ。
街を騒がす怪しい人影
その名も怪盗『黒猫嵐』
警備厳重な貴族屋敷も神出鬼没
不思議な魔導具きりりとお披露目
衛兵たちもきりきりまい
「で、被害はいかほど」
「侵入された貴族たちは早く捕まえろの一点張りで、被害を明らかにしないとか」
「うむ、とりあえずセシエラさんに詳しい話を聞いてみようか」
はい、到着。
ノックしてもしもーし。
「あら皆さん、いらっしゃい」
お久しぶりセシエラさん、昨日ぶりですね。
「どうぞ、お入りになって」
怪盗の話を聞いてみたけど、
なぜか被害者の貴族の面々はセシエラさんには口が重いとか。
「怪しいっちゃ怪しいけど、どうしましょう」
「「ニケルちゃんが心配」」
マクラと、抱っこしていたセシエラさん、ふたりがハモった。
チームモノカ、行きますか!