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08 賢母


 どうやら見栄っ張り貴族たちの犠牲者は私たちだけでは無かったようだ。



「お母さん、ちょっといいかなっ」


 繋いだ手をそっと離したマクラは、バルコニーにとことこと歩く。



 そこにいたのは、退屈そうに夜空のお月さまをひとり眺める女の子。



「こんばんは、私の名前はマクラですっ」


 マクラご挨拶は相手の心の壁をプリンのように柔らかぷるんととろけさす必殺技、


 あれに耐えた猛者は現時点では皆無。



「こんばんは、私はニケルです、よろしくね、マクラちゃん」


 不殺を誓った母の目の前で初対面の相手を瞬殺とは、あっぱれ我が娘。



「お月さま、キレイだね」


 何をおっしゃるお姫さま、マクラの方がキレイキレイだよ。



「マクラちゃんって、もしかしてすごいお姉さんたちと一緒にいろんなとこでいろんなことがんばって冒険しているんだよね」


 イグザクトリィ、レディ。


 たった今あなたとおててつないでお話ししているのが、何を隠そう世間を騒がすチームモノカのアイドル天使、『女神』に愛されみんなを愛す、我が愛しの愛娘、マクラその人なのですよ。



「そうだよ、あそこでにこにこしているのがモノカお母さん」


 しまった見られたっ、いかんぞ私、ニケルちゃんはマクラに匹敵する強者、迂闊に近付くと危険がデンジャラス。



「お母さん、こっちこっち」


 やめれマクラ、可愛いおててをひらひらさせるマクラ手招きは必殺技のひとつ。


 抗うすべなど無い、のです。



「こんばんはニケルちゃん、マクラのお母さんのモノカです。 マクラと仲良くしてあげてね」


 うひょう、近くで見るニケルちゃんは嫌んなっちゃうくらい可愛いぜベイベー。



「セシエラ先生に聞いてた通りのすてきなお姉さんだ」


 なんだそれそんな目で見上げないでよお姉さんレッツパーリィしちゃいそうだよ。



「いつもは冒険者の格好だからもっとすっごいかっこ良いんだよ」


 そう、私は生涯掛けてマクラを守護すると誓ったいつでもクールな槍使い、


 でもさ、こんなシチュで平常心保てるようなキレイな心はとっくの昔にロストしたっての。



「いいな、マクラちゃんの着ているお母さんとおそろいの可愛いドレス」


 お目が高いなプリンセス、


 これこそがマクラと私のストーンでフリーなボディをこの上なく可愛いらしく演出してくれるシジミ入魂の逸品。



「ニケルちゃんのお洋服も大人っぽくてすてきだね」


 おしとやかさが目立つニケルちゃんをさらに気品アップさせるそのドレス、


 愛らしさ全振りのマクラドレスとの相性はグンバツですわ。


 ハッ、もしかして今の私自体が愛らしさ全振りですかっ、


 なんか各方面の皆々様、まことに申し訳ないっ。



「お母さんが子どものころに着ていたドレスだからお父さんのいちばんの宝ものなんだよ」


 ヘイリトルガール、そいつはちょっと情報が古いな、


 今ではドレスが二番目さ。



 何だかキリが無いので、以下はまとめて。



 お母様を早くに亡くされたニケルちゃん。


 領主のお父様からそれはそれは大切に育てられました。


 お屋敷からも滅多に外出を許されないほどに。


 セシエラさんから私たちの冒険話を聞いて、


 今日のお誕生会をそれはそれは楽しみにしていたとか。



 良かったねニケルちゃん。


 マクラとお友達になってくれてありがとね。


 お母さんはふたりが寒く無いように、


 ふかふか毛布で包んであげるくらいしか出来ないけど、


 ゆっくりお話ししてちょうだいね。



 あれ、今の私はまさにお母さんの鏡。


『鏡の賢母』とでも呼んでくれてもよろしくてよ。



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