07 ニケル
久しぶりにお会いしたセシエラさんの笑顔の癒しフェロモンに浮かれ気分でロッケンローだった私は、
張り巡らされた陰謀に気付かぬままにドレス姿で拉致されて、
今まさにゴージャスパーティーの渦中。
己を失わぬための命綱としてマクラの手をぎゅっと握っている私、
今いる戦場はこれまでの自分の経験全てが毛ほども通じぬ魔境、
その名も『ニケルちゃん、お誕生会』
ニケルちゃんは領主のひとり娘。
貴族のご子息たちの教育係のセシエラさんは当然ニケルちゃんの先生でもあった。
セシエラさんから私たちの冒険の数々を聞いちゃったニケルちゃんの、
「冒険者のお姉さんたちに逢いたいっ」というおねだりは領主を動かし、領主が動けば貴族が動き、
結局『ニケルちゃん、お誕生会』は前述の通りのゴージャスパーティーに化けてしまう。
必要以上に豪華絢爛満員御礼となったこのパーティー。
群がる貴族のご子息たちを笑顔でなぎ倒していくアイネと離れて、
なぜか貴族のご息女たちから大人気でもみくちゃ状態のノルシェを見捨てて、
セシエラさんとの情報交換に余念がないシジミと別れて、
ちょっとだけ退屈そうなマクラを連れて部屋の隅っこに避難した私たち、
バルコニーにいるちょっと寂しげな人影に先に気付いたのはマクラだった。