03 新作
我々の野営地に魔導急便のお姉さんが配達してきた荷物の中に、アリシエラさんの新作魔導具がありました。
戦うすべを持たないマクラちゃんの護身用としてお使いくださいっ、との一筆と共に姿を現したのは、どう見ても水鉄砲。
なのではあるが、そこは天才アリシエラさん、やはりただの水鉄砲では無かった。
マクラのちっちゃな手のひら向けにオーダーメイドされた可愛らしい外観に隠された、相変わらずのオーバーテクノロジー。
射出魔法付与による絶大な射程距離増加。
気流操作の風魔法付与による命中率向上。
ポップアップするスコープは遠視魔導具で精密狙撃すら可能。
もちろん過剰な水流によって怪我しないよう、命中直前にわざわざターゲットに威力軽減用魔導シールドを展開させる念のいった安全対策も選択可能。
そしてアイテムボックスの技術を応用した弾倉のカートリッジは、マクラの音声認識によるセレクタブル貯水タンク。
「お水っ」
ぱしゃり
「ぬるぬるっ」
ぬるり
「お湯っ」
あちち
「こらマクラ、人に向けて発射しちゃダメでしょ」
「えーっ、お母さんさっき、もしものときにそなえて今のうちにいっぱい練習しておきなさいって言ったよっ」
うむ、確かに言ったは言ったが出来れば水着装備のあちらの方々をターゲットに、
「お母さんが水着を着なかったおしおきしてきなさいってみんなが言ってたっ」
ほう。
ここしばらくはマクラのためと、不殺のモノカとして封印していた我の全力全開をそんなに見たいのかいお嬢ちゃんたち。
水着などいらぬ、なぜならここは人里離れた辺境の湖のほとり、鍛え抜かれた我が肉体をさらすことには一切躊躇無要と、思い切りフルキャストオフしようとした瞬間、
「まいどどーもっ」
いやん、ナニモノッ。