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21 メイジ


「こんばんは、モノカさん」


「別に小声じゃなくても良いですよ、巡回司法官の藪雨銘寺さん」


「勘弁してください」


「それで今度はどんな特使依頼なんですか」


「いえ、依頼じゃなくて解決のお知らせなんです」


「?」


「最近街を騒がせていた怪盗『黒猫嵐』の件なんです」


「捕まったんですか」


「捕まっ……たようなもんなんですかね、特使騎士モノカさんのお手柄で」


 はぇ?


「こっからは、チームのお仲間にも出来ればご内密に」


「仲間に秘密は持ちたく無いので、内容次第ですよ」


「判断はこれから僕の話を聞いてから、で、お願いしますね」



 結論から言うと、怪盗『黒猫嵐』は身内でした。


 正体は、ロイさんのところの天才魔導具技師、アリシエラさん。


 まあ、噂を聞いた時の『猫』『魔導具』っていうキーワードで、何となくオチが読めてたんですが。



 で、なんで怪盗しちゃったか。


 以前この街で起きた大騒動で大きな役割を果たしたのがセシエラさん。


 騒動を起こした連中は大人しくなったとはいえ、セシエラさんに身辺警護は必要だろうとロイさんが相談したのがアリシエラさん。



 アリシエラさん張り切っちゃったんですね。


 人知れず警護して、人知れず陰謀を察知する。


 ならば怪盗だと。


 なんか、認識阻害のマスクと身体強化の黒いレオタードで街中を飛び回っていたそうです。


 いつものイカれた魔導具をバリバリに使いながら。



 結局、貴族たちのよからぬたくらみを事前に察知出来て結果オーライ。


 そりゃあ侵入された貴族もみんな口をつぐみますって。



 ところがどっこい、ロイさんたちにバレちゃったんですね。


 そんな危ないまねするんじゃないとか、


 若い娘がそんなはしたない格好で人前に出るんじゃありませんとか、


 メイドの風上にも置けない愚行だとか、


 どうして私も混ぜてくれなかったのだとか、


 えらいお説教されてめちゃくちゃへこんでたそうです。



「で、例によって協定でアリシエラさんのことは表沙汰に出来ずに、怪盗『黒猫嵐』は特使騎士モノカさんが成敗した、と」


「うちのメンバーには内緒にしておきます……」


 アリシエラさん、頑張れ。



「なんか、いっつもこんな感じで本当にすみません」


 深々と頭を下げたメイジさんが、何かを取り出した。


「それでその、これなんですけど」


 あちらの世界でよく見かけた、子供が持っている防犯ブザーみたいなちっちゃい道具。


「緑のYesボタンが了解で、赤のNoボタンが駄目、なんです」


「今後は僕の転送前に必ずこのブザーから事前連絡が行きますので、Yes/Noでお返事をいただければ……」



「分かりました。コレ、ちゃんとクロにも渡しておいてくださいね」


「無理ですよ、あいつ僕のこと避けてるじゃないですか」


 駄目だこいつ……早く何とかしないと……


「じゃあ、メイジさんがクロにブザーを渡すのと、私がメイジさんのやらかしをクロに報告するのとで競争ですね」


「……」



「見てくださいよメイジさん、このパーティー会場」



 ぴたりと寄りそうスズナとフラット君。


 マリオネさんから追い回されているアニーニ君。


 にこにこ笑顔のふたり、マクラとニケルちゃん。



「しっかりしてくださいよ、良い大人なんですから」



「ひとまわり以上歳下の女の子から言われちゃってるよ、僕」



 メイジさんはいずこかへと姿を消した。



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