12 遺跡
シジミのナビゲートで明るいうちに遺跡に到着、辺りに人の気配はなし。
朽ちてもいない、きれいなままでもない、不思議な建物とその空間。
シジミはリトラクタブルネコミミを立てて警戒・探索モード。
お耳が左右にぴくぴく動く。
「謎の遺跡の謎っぷりにシジミの心がちぢみあがっちゃうの、モノカ」
シジミが怯えている?
「話で聞いていたより危険そうですよっモノカ」
ノルシェが操作していた魔導探査機の画面には、
何も映っていない。
「感度を上げれば虫やら何やらで画面の反応がすごいことになるはずなのに、何も反応しないんです」
ノルシェは警戒している。
「第六感を所持しているか定かでは無い未分類生命体の私が言うのも何ですが良からぬ予感に小さな小さな胸が張り裂けそうなの」
シジミも警戒している。
あと小さいを強調すんなっ。
いつのまにやら存在していたというこの遺跡。
調査に来た冒険者が遺跡の奥にある怪しい祭壇を調べるも、分かったのは魔法・呪法・スキル・魔導具を頑なに拒む強力な結界があるということだけ。
あまりにも強力な結界、ついた呼び名は『絶対防御』の遺跡。
ただし、異常に強力な結界以外には特に問題も危険も無くて、最近は若者たちの肝試しの定番スポットとなっている、とか。
小さな神殿風の建物、入り口の奥にある祭壇まで行ってお供えしてくるのが肝試しのルールですって。
それはともかく、リーダーとしては少々困った状況なんですよ、これ。
謎遺跡の前にたたずむチームモノカのメンバーは現在三名。
探索に全員一斉突入するのは駄目采配っすね。
ひとりは残しておいて探索組に問題発生時、後を託さねばならぬ。
遺跡の中は魔導具関係の妨害アリなので絶対にシジミを連れては行けない。
そして怯えるシジミをここにひとり残してもいけない。
話には聞いていたが『絶対防御』め、まさかアリシエラさん製作のオーバーテクノロジー魔導具すら弾くとは。
ここは一旦撤収して、近くに住んでいるロイさんのチームに応援要請すべきだろうか。
少し、悔しい。
準備不足だったとはいえ、ここでしっぽを巻いて逃げることになるとは。
そういえばもしかして、シジミってねこしっぽアリなのかしらと、
シジミのお尻に目をやった瞬間、
「お困りのようね」




