11-ログアウト
いよいよ異世界です!
ここから他プレイヤーとの関わりとか世界を広げていったりしていきたい...
「う....んぁ?」
目が覚めるとそこは草原だった。
「ここは....何処だ?」
そこは知らない場所だった。
確か....さっきまで王都に居た筈だ。
王都の周辺も草原だったが他にも森や街、プレイヤーが居る筈だ。
だがここはプレイヤーは疎か街や森すら無い。
いや.....遠くに森らしき物は見えた。
だがそれでもここは知らない場所だ。
座標ズレのバグか?
あれ....そういえばさっき意識が無くなっていた?
本来ならVRを起動中に意識を失ったら安全装置が働いて自動的にログアウトするのだが....
どういうことだろうか?
GMコールをしてみるか?
ちなみにGMコールはその他の機能の1つだ。
他にもフレンドやメッセージなど.....大抵の物はその他の機能だ。
.....いや、どうせならこっちをちょっと探索してみようか。
何か凄い物とか無いかな。
取り敢えず森の方向へ進んでみよう。
速度のステータスポイントを振ったおかげで移動速度が速くなっている。
森へ向かい始めてすぐ、狼の群れに遭遇した。
フォレストウルフというモンスターらしい。
フォレストなら草原じゃなくて森に居ろよと思うが、偶然草原に出て来た所に遭遇したのだろう。
既に相手は敵対していて、集団......6匹の狼相手に逃げるのも難しいだろう。
戦うしか無いだろう。
手始めに狐火を出す。
レベル10になってから使っていなかったがやはり狐火の数が1つ増えて2つ同時に出せるようになった。
そのまま10回狐火を飛ばす。
計20発の弾幕だ。
狼の群れはそのまま突っ込んで来た。
避けることもあるが、そのまま当たることも気にせず走っている。
MP切れに注意して狐火を撃ちながら剣を構える。
1度も狐火を避けなかった狼1匹が最初に来た。
狼が飛びかかる直前に、剣を上から振り下ろす。
やはり狐火を受け続けてHPが減っていたのだろう。
一撃で倒れた。
他の狼には狐火を撃ち牽制する。
その中から1匹だけ狐火を撃たないようにした。
するとその1匹が俺の思惑通りにこっちへ来たのでさっきと同じようにそのまま剣を振り下ろし倒す。
このまま全滅させられれば良かったのだが、更に1匹倒した時点で残りの3匹が学習したのか俺の周りを取り囲み始めた。
それを阻止しようと狐火を撃つが、上手く避けられいつのまにか俺の周りを3匹が囲んでいた。
狐火は俺かちゃんと狙わないと当たらないからこう囲まれると狐火での牽制が難しい。
しかも俺は戦闘の素人、こういう時どうすればいいのか分からなかった。
どうしようか考えているうちに、狼が3匹同時に飛びかかって来た。
「うぉぉぉぉ!」
反射的に剣で横薙ぎをする。
奇跡的にそれが狼1匹の首に当たり狼はそれで絶命、それを警戒して1匹が止まる。
切られた狼の首から血が吹き出す。
(え......血?)
なんで、このゲームでは血の描写な無い筈じゃ....
そんな事を考えるも直ぐに掻き消される。
「あ?」
飛びかかって来てそのまま止まらなかったもう1匹の狼が俺の腕に噛み付いて来たのだ。
「がぁぁぁァァァァ!」
(痛い、なんでどうして、痛い、痛い、痛い、これは、なんで、どうして、痛い、)
考えがまとまらない。
予想外のことが多過ぎるのだ。
剣をがむしゃらに振り回し、MP切れも気にせず狐火をあらゆる方向に撃ちまくる。
「はぁ、はぁ、はぁ........ふぅ」
剣が当たったのか、狐火が当たったのか、気づいたときには残りの狼2匹も絶命していた。
HPを回復させるためにポーションを飲む。
それにしてもなんなんだ、これは。
痛みがリアルすぎる。
本来VRでは痛覚は一定以上感じないようになっているはずだ。
それに痛みの種類も切られようが貫かれようが基本的に打撃のような痛みに感じるようになっているはずだ。
だがさっき噛まれた時は本当に噛まれたように痛くて引き千切られそうだった。
それに血が出ている。
フッソでは血が出る描写なんて無かったはずだ。
それに少し見えたが傷口もリアルだった。
さっきもそうだ。
意識を失えば自動的にログアウトする筈なのにログアウトしていなかった。
他にも良く見ればおかしい所がいくつもある。
例えば草。
フッソでは少しでも負担を減らす為に草の当たり判定はそんなに細かくは無い。
それなのに今居るここ。
ここの草はまるで本物のように細かい。
......夢では無いだろう。
さっきの狼との戦闘は本気で命の危機を感じたのだ。
現実.......なのか?
でも俺の姿はゲームのアバター。
身体能力だってゲームと同じで、狐火だって出せた。
でもVRとは思いにくいのだ。
VRではおかしい所が多いのだから。
まさか....異世界だったりしてね。
ラノベなどで読んだことがある。
ゲームのアバターとステータスで異世界に転生。
だがここはリアル、無情な現実なのだ。
そんなことあるわけ....
ピコン!
うぉ!?
な、なんだ?
えーと....メニューのその他の機能であるメッセージに何か来たようだ。
ということはここはゲームなのか?
何か分かるかもしれない。
取り敢えずメッセージを見てみよう。
「..........」
結論から言うと、ここは本当に異世界らしい。
俺が読んだメッセージには、以下のことが書かれていた。
・ここが異世界であるということ。
・このメッセージの送り主はあの爺さんであること。
・あの爺さんが実は神だったということ。
・助けたお礼に異世界へ招待したということ。
マテ。
情報のインパクトが強過ぎて頭に入れる事を自然と拒否してしまいそうになる。
確かに現代の若者なら皆1度は異世界転移や転生などを妄想したことがあるだろう。
だが実際にそれが実現するとは誰が想像出来ようか。
それにだ。
こういう異世界転移や異世界転生は元の世界には帰れないというのが定番だ。
俺は元の世界ではかなりの大金を持っている。
こっちで働いて暮らすよりも元の世界で遊んで暮らす方が確実に楽なのだ。
つまり、何が言いたいのかと言うと、
「元の世界に帰りたい...」
ただそれだけである。
やってくれたな爺さん.....
ピコン!
....また新たにメッセージが来た。
何々....
『書くの忘れておったが、メニューのログアウトで普通に元の世界に帰れるぞ。因みに異世界は元の世界の10倍、時の流れが速いからの、まだ元の世界では殆ど時間は経ってないからそこは安心するといいぞい』
......あ、あのクソ爺ぃぃぃぃぃ!
なんてこと忘れてんだ!
何が『安心するといいぞい』だ!
そういうのは最初に説明しろよ!おい!
そもそもなんで神様が俺の家の庭に倒れてんだ!それも空腹で!
はぁ、はぁ、ふぅ、ふぅ....
な、何はともあれ元の世界に帰れるのだ。
速くログアウトしよう。
メニューを開きログアウトの項目をタップする。
一瞬意識が遠のく感覚と共に景色が流れていき、目を開けた時にはもうVRを被った現実の俺だった。
急いでVRを外す。
周りを確認すると、そこは俺の部屋だった。
よ、良かった.....
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