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イヌ耳

 アイゼンの反応に、エルフのソフィアも反応し、


「……どうやら害はないようだな……」


 と、自分に言い聞かせるようにつぶやいて剣を収め、近づいてきた。


「ソフィアよ、これを見てみよ。こんなことが、儂らの世界の人間にできると思うか? 少なくとも、この賢者と称えられる儂であってもできんぞ!」


 アイゼンが興奮気味にそう話して、スマホ画面をソフィアにも見せた……って、この爺さん、賢者と呼ばれているのか?


「……これはっ!? 私が……私の姿が……なぜ……」


 彼女も目を見開いて驚いている。

 どうやら、この世界には、スマホはもちろん、写真すらないのかもしれない。


「これは……簡単に言えば、鏡に映った像を、そのまま残すような仕組みです。我々の世界で『スマホ』と言われる道具の……まあ、魔法みたいな機能の一つです」


「……それで、これに写し取られた者はどうなるのだ? 何か呪いがあるのか?」


 ソフィアがちょっと怯えた、それでいながら睨みつけるような目線を送ってきた。


「いや、まさか。単純に写し取っただけ……そう、絵と同じです」


 俺はそう言って、庭園の花や木、そしてその向こうに広がる森林の、美しい風景を写して二人に見せた。


「……なるほど、見たそのままの絵を一瞬で描いてくれる魔法の道具、というわけか……」


 ソフィアが納得したようにそうつぶやき、俺もそれに対して肯定の返事をした。


「どうじゃ、ソフィアよ。この方が異世界から来たということは信じてもらえたかな?」


 アイゼンが、なぜか得意げに笑みを浮かべる。


「……はい。確かに、それは間違いないようです。しかし……信用してよいのでしょうか?」


「ああ、それは間違いない。この儂が、神の化身・トゥエル様から直々にお告げを聞き、そして迎え入れたのじゃ」


 そこまで自信をもって断言するアイゼンを見て、ようやく彼女も納得したようで、俺に向かって


「……先ほどは大変失礼しました」


 と頭を下げてきた。


「いや、主を守るのは警護の仕事として当然のことですよ。俺は全然気にしてないから」


 恐縮しながらそう答えると、彼女はほっとした表情を浮かべた。

 と、そのとき。


「あれー、お客様ですかぁー!」


 と、また別の女性の声が聞こえてきた。

 その方向を見ると、廊下を歩いてきたのは、身長160センチぐらい、十代後半ぐらいの可愛らしい少女だった。

 ただ、その身長には、頭の上部に生えた「三角形の耳」の高さも含まれる。


 ニコニコと愛想よく微笑む彼女、ベージュのズボンに丈夫そうな同色の、ポケットがたくさんついたジャケットを着こなしている……まあ、分かりやすく言えば作業着だ。

 しかし可愛い女の子が着ていると、それはそれでオシャレに見えるから不思議だ。


 栗色の大きな瞳と、同じ色の背中まで伸びる長い髪。

 そしてズボンの後側、腰の部分からは、かなり太いモフモフのしっぽが上向きに生えていて、左右に大きく元気に揺れている。


(獣人だ! ネコ……いや、犬か?)


 獣人だと即座に理解した俺は、エルフに続いて亜人種に出会えたことに興奮した。

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