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奇跡の一枚

「ソフィア、この方は不審者ではない」


 アイゼンが一歩前に出て、向かってくるエルフに向かってそう声をかけた。

 彼の言葉に、彼女は俺たちの数歩手前でピタリ、と足を止めた。

 その表情は厳しいままで、抜いた細剣はそのまま握りしめている。


「……アイゼン様、本日この屋敷の正門は誰も通っていません。魔法陣の部屋も誰も使っていないはずです……この者が入ってこれる余地はないはずです」


「いや……そなたも知っているであろう? もう一つ、我々では使用できぬゲートが存在することを」


「ゲート? そんなものが……いや、まさか、あの異世界との、見えない扉が開いたというのですか!?」


 剣を握ったまま、目を見開いて驚く、ソフィアと呼ばれたエルフの美少女。


「そうじゃ。この方は神に選ばれし語り部じゃ」


「……いくらアイゼン様のお言葉とは言え、すぐには信じられません……」


「ふむ……まあ無理もなかろう……語り部殿……そういえばまだ名前を伺っておりませんでしたな」


 アイゼンが、俺を安心させるような優しい目でそう語りかけてきた。


「あ、そうですね……俺の名は『ショウ』です」


「ショウ殿、ですな。良い名だ……ソフィア、彼は見ての通り丸腰じゃ。剣を収めて挨拶をしなさい」


 アイゼンの言葉に、彼女はしぶしぶ、といった表情で剣を収め、


「……アイゼン様の警護をしております、ソフィアと申します……失礼ながらショウ殿、貴殿は本当に異世界からいらしたのでしょうか? そうであれば、そのことを証明していただきたいのですが」


 ……うん、相当な疑いの眼差しだ……まあ、当然の反応か。俺だって、ここが本当に異世界で、彼女がエルフだっていうことは信じられない……って、誰もエルフだとは言っていないが。


「証明って言っても……あ、そうだ! これなら信じてもらえるかな……」


 俺はスマホを取り出し、カメラで撮影しようと構えた。


「……何をする気だっ!」


 ソフィアはまた剣を抜いて構え、その迫力に俺はたじろいだ。


「ソフィア、そう過剰に反応するでない。この方には微塵の悪意も感じられぬ。そなたも分かるであろう?」


「……しかし……油断できませぬ……」


「ショウ殿、すまぬな、彼女は儂の護衛なので、少々過敏になっておる……気にせず、今やろうとしていることをしてみてくだされ」


 アイゼンに促され、俺は剣を構えた彼女にレンズを向けて、撮影ボタンを押した。

 カシャッ、という音に、ソフィアはピクッと反応したが、それ以上、何も動かない。

 そして撮れた画像を、隣のアイゼンに見せた。


「……おお、これは……どういう魔法じゃ!?」


 今まで冷静だったアイゼンが、驚きの声を上げる。

 そこには、警戒の眼差しでびしっと剣を構えた、金髪、碧眼の美しいエルフの美少女が写っていた。


 それも、石造りの廊下、そして緑映える庭園をバックにした、奇跡の一枚と言えるほど構図がばっちりのハイクオリティ写真が撮れていたのだ――。

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