表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/44

エルフ

 ゲートをくぐった先は、先ほどと同じ石造りの、薄暗い部屋だった。


 前回と同じく、周囲を見渡していると、重そうな鉄製のドアがゆっくりと開き、例のローブを纏った爺さんが現れた。


 もう一度よく見てみると、背丈ほどもある木製の長い杖を持ち、長い白髪、同じく長い白髭を生やし、そのローブの色はグレー。いかにも魔術師っぽい姿だ。


「改めて、ようこそ、異世界の語り部よ……どうやら、相当混乱しておられるようじゃな」


「……えっと、貴方は、アイゼンさん……でしたよね?」


「いかにも」


 これらの言葉は、今まで聞いたことも、使ったこともない言語だが、内容は把握できるし、また、喋れてもいる。

 海外の映画を見ても、吹き替えや字幕があれば内容が把握できる。それと似たような感じだ。


「どうしてあなたは、俺が異世界から来たと分かるのですか?」


「神の化身、聖なる白猫・トゥエル様のお告げがあったからじゃ」


 ……へ? トゥエル……様?

 あのネコ、実は結構偉いのか?


「……なるほど、理解できました。では、貴方は最初に来た時に、俺のことを歓迎すると言っていましたが、何を期待しているのでしょうか。俺には何の秀でた能力もありませんが」


 話しながら自分で気が付いた。

 あの白ネコは、異世界に通じるゲートを開いてくれたものの、強大な魔力も、すさまじい破壊力を誇る剣も授けてはくれていない。


 もちろん、チートなスキルも一切与えてくれていない……本当にゲートを通してくれただけだ。

 そんな俺に、何の期待を持っているのだろうか。魔王を倒してくれ、とか言われたって、絶対に無理だから。


「儂には見えぬが、貴殿の世界とこの世界をつなぐ特別な門が開かれていることは分かる……空間の歪みを感じることができるのでな。その門が開かれるのは、実に数十年ぶりじゃ……そして儂が貴殿に望むことはただ一つ。この数十年の間に、そちらの世界がどのように変化したのか、それを教えてもらいたいのじゃ」


「ああ、なるほど。それなら分かる。それで『語り部』ということですね……」


 どうやら、欲しいのは彼にとっての「異世界の情報」らしい。それなら俺でも説明できる。


「そういうことじゃ……まあ、こんな何もない薄暗い部屋で話をするよりも、もっと明るい部屋で話を伺いたい。ついてきていただいてよろしいか?」


 うん、まあ……この爺さん、いかにも魔法使いっぽいけど、いきなり俺を魔法で攻撃してきたりはしないだろう。


 ちょっと怖いけど、好奇心の方が勝り、彼についていくことにした。

 見た目から年齢は70歳ぐらいは超えていると思ったが、思いのほか歩くのが早く、俺の方が早足になるぐらいだった。


 石造りの細い廊下を進み、階段を上がると、より広く、明るい廊下へと出た。

 窓から日の光が差し込んでくる……どうやら、先程までの場所は地下だったようで、外には庭園が広がっているのが見えた。

 まるでテーマパークにある、西洋風の城の内部にいるような感覚だった。


 廊下の向こうには、長い黒ズボンに白い服、太い革ベルトで腰を締ている、俺と同じぐらい(約170cm)の女性が歩いてきていた。


 金髪、碧眼で、小顔でスタイルがよく、腰には細い剣を装備している。

 中世の剣士のような……北欧系の美人による本格コスプレ? と思ってよく見ると、何か違和感を感じ……その正体に気づき、思わず声を上げそうになった。


(耳が細長い……エルフだ!)


 ここが異世界だと思い出し、思わず後ずさりする。

 その様子を見て、彼女は厳しい表情で腰の細剣を抜き、勢いよくこちらに駆けてきた!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ