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分かりにくい日本語

作者: 黒宮杳騏

先日、友人からメッセージが届いた。

その内容自体はいつもと変わらない普遍的な物だったのだが、私はそれを読んで不思議と不快感を覚えた。いや、怒りに近いと言ってもいい。

一体何がこんなにも気に障るのかと眉根を寄せて首を傾げ、はたと気付いた。

文末だ。


「~だよ」と「~だぞ」。


些細な事かも知れないが、文の終わり、語尾のたった一文字、ほんの一字違うだけで、こんなにも読み手に威圧的な印象を抱かせ、人を苛立たせる事が出来るものなのかと驚き、それと同時に、私は日本語の「曖昧さ」が恐ろしくなった。


日本語というのはあらゆる輪郭を「ぼかす」術を内包した言語であり、むしろ、どれだけ遠回しにやんわりと自分の主義主張を伝えられるかどうか、その技術の高さが問われる言語なのではないだろうか。

そう考えてしまうと、ただの挨拶ですら「愛想笑い」などといった非言語的表現でもって言葉に含まれた感情を補助しなければならないのは必然の行為で、だからこそ「日本人はいつも笑っていて何を考えているのか分からない」という、日本へ来た外国人旅行者が感じる「薄気味悪さ」に似た感覚と疑問の発生は仕方のない事なのだろう。

特に、日本人男性は非言語的な表現を読み取る能力が低いと、昔どこかで聞いた記憶がある。


母親の腕に抱かれて眠り、誰かが差し出した指を力一杯握り締め、歩けるようになれば父親に抱きつきよじ登った過去などまるで無かったかのように、成長と共に綺麗さっぱり忘れていくのが日本人だ。


「おーきくなったら、あーくんとけっこんするのー!」

そう言って繋いだ小さな手をぶんぶん楽しげに振っていた事を本人が見事に忘れていても、案外母親というのは覚えているものだから恐ろしい。


やがて社会に出て、他人と握手をし、相手の国の文化に則った挨拶として、必要ならばキスもハグもする。

握手ならともかく、キスやハグは恥ずかしいなどと言って断れば、それは「マイナス」となって返って来る。

だから結局はどこか困った表情でキスやハグをし、相手に猜疑心を抱かせる。

本当は歓迎されていないのではないか?と。


だからこそ、言葉選びは慎重にすべきなのだ。

せっかく手元に「日本語」という膨大な語彙のある言語があるのだから、それを使いこなせば避けられる誤解だってある筈で、しかし、だからといって非言語的表現を疎かにしてはならない。

「顔文字」というツールでメッセージのニュアンスをコントロールするのも、ハグをするのと大差ないのだ。


「顔文字」が使えないのなら、慎重に飾り立てた日本語で補えばいい。

語彙がないなら本を読め。

ビジネス書だって構わない。

処世術など周りを見て盗め。

胡散臭い奴だと思われない程度に愛想を振りまいて、常に味方を確保しろ。


最後に残るのは、一番敵が少ない奴だ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 日本語は難しいものですね。 使いこなせると良いですよね。
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