クリスマスプレゼント
『イヴなんて関係ない』の続きになります。
律希視点です(*´-`)
「飯田せーんせ」
12/25。普段は向こうから声をかけてくる相手に自分から話しかけたのは、学校近所でも煌めくイルミネーションに私も浮かれていたからかもしれない。
驚いた顔で振り向く彼女と視線がぶつかる。
「え、律希ちゃん?」
上ずった声は完全に予想外だった私の下の名前を呼んで、こちらも驚かされる羽目になった。
飯田理香子はこの学校の教師だ。専門は化学、私の学科では総合学習担当。
私はここの高等部の生徒で、彼女とはただの生徒と先生の関係。少なくとも、今のところは。
「今帰りですか?」
「そう。戸山さんは?」
「奇遇ですね。私もです」
「ちょっと遅いんじゃない?親御さんとか心配しないの?」
「大丈夫。どうせ家帰っても1人だし」
両親は共働きで、昨日も今日も仕事に明け暮れている。私立に通う私の学費工面のためなのだから、文句など言えるはずもない。
「え、そうなの…」
罰が悪そうに先生は下を向いた。顔を曇らせてしまったことに、少し後悔する。
私は、彼女のことが好きだ。先生として、とか尊敬の意味で、とかではなく、言うなれば恋愛の意味で、好き。
絶対ないけど、たとえ両想いでも、生徒と先生が関係を結べば、悪く言われるのは大人の方だ。私は彼女に迷惑をかけたくないから、この感情は墓場まで持っていくつもりでいた。それなのに。
「いいですよ、そんな顔しなくても」
「だって今日クリスマスだよ?私でよければって言いたいけどなぁ…ダメだよねぇ」
彼女はあざとい。私の気持ちを知ってか知らずか、時々とんだ胸キュン発言をしてくる。さっきだって、普段は「戸山さん」とか言うのに振り向き様に「律希ちゃん」なんて呼ぶし。
私の心臓を何回壊せば気が済むのだろうか。
普段はしっかりしているのに、時々天然になる彼女に一泡吹かすため、私は昨日策を講じたのだ。少しだけ、自分の気持ちを見せて。
それで少しでも私のことを考えてくれれば良いなんて思っていたけど、これは失敗かもしれない。だって、自爆したようなものだから。
やめておけ、と止める自分と、もう言ってしまえと誘う自分。きっと今日も自爆で終わるのに。
「私でよければって言うんだったら、お言葉に甘えてそうさせていただきますけど?」
口から出たのはこの言葉だった。彼女が冗談と捉えてくれるのを期待する。だってそうでなければ、私はボッチどころか失恋したクリスマスを1人で過ごすことになるんだから。
「えぇっと…」
困った顔で頬に手を当てる彼女。困らせた張本人は、赤いマフラー似合ってるなぁなんて、どうでもいいことを考えていた。
「じゃあ、うち、来る…??」
予想外の展開に、返す言葉もなくただ呆然とする。
「いいんですか…?」
ようやく出た声に、彼女は小声で「でももちろん内緒ね」と付け加えた。心なしか、首元とか顔が赤い気がする。
正門を一緒に出ると、真っ暗な空から小さな雪が降っていた。
手袋をしていない彼女の手を、ダッフルコートのポケットの中でそっと握る。
サンタクロースは私に、素敵だけど重大な秘密を、プレゼントしてくれた。
最後まで読んでいただきありがとうございました。拙い文章ではありますが、楽しんでいただければ幸いです。




