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魔王軍幹部なのに、人間界で最強です  作者: 夏空 眩
第2章 人間界
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第十一話 場所なんて………

数時間程度ゲームセンターで時間を過ごしたが、ターナとの関係は変化せず。


ほんっとどうすればいいんだよこれ!?


俺はここでの関係改善は見込めないと判断し、場所を変えるようにターナに促した。


「ちょっとここは飽きてきたし、場所変えようか」


「む……いいだろう」


ゲームセンターのドアが開くと同時に目に入ったのは、シャルの顔だった。


「「……!」」


「あ、やっぱり来てたんだ。そんな気はしてたよ」


シャルは微笑みながらそう言った。


「やっぱりって……あとでも着いてきたのか?」


「そんなんじゃないよ。ただ、ここにいそうだなー、て気がしただけ」


「お主の勘は鋭いのぅ」


ターナが感嘆の声を出した。


「でも、外から見てたけど二人って今日余所余所しくない? 喧嘩でもした?」


……いや流石に鋭すぎ!!


俺達は顔を見合わせる。


「……ちょっとな」「何もないぞ」


……!


俺はあまりの出来事に瞠目してしまう。


「ありゃりゃ、新事実発見? カロス君は喧嘩した、と思ってて、ターナちゃんは喧嘩してない、て思ってる訳だ」


シャルはそう言って俺達を交互に指さした。


「じゃあ仲直りすれば良くない? 元々は仲良いんだし」


「「出来たらな!!」」


突然二人の波長があうので、シャルは驚いてしまう。


「……ほら、仲良いじゃん」


「こいつが何で怒ってるか教えてくれないんだよ!」


「な!? その程度のこと、自分で分かるであろう!」


シャルロットは思った。


子供か!!


「取り敢えず、仲直りしなよ。ね?」


シャルは二人を宥めるように言う。


「いやだ!」「いやじゃ!」


しかし、二人がシャルの思いに答えることは無かった。


面倒くさっ!!


「……もういい!」


そうしてシャルは二人の間に入った。


「私が二人を仲直りさせて見せる! それが今日の目標! それにさ……」


シャルか俺を見てニヤリと笑った。


「まだカロス君の本気も見れて無いしね」


あー、これは相当根に持たれたな。

シャルは俺達二人の手を引いて歩き出した。


「さぁ! 楽しい遊戯の時間だ!」


……………………


俺達は前に見た景色、前に見た絶望感に呆然としていた。

シャルが連れてきた場所、それはまたもや遊園地のジェットコースターだった。

前とは違い、シャルとターナの席は逆だが。


「ま、またこれかの!?」


「もうちょっと芸は無かったのかな!?」


「えー、いいじゃん楽しいしー」


「「それはお前だけだろ!!」」


そうしている内に、ジェットコースターは動きを止めた。

俺達は、これから来る壮絶な疾走感を思い出し、恐怖していく。

そして、ジェットコースターは加速し出した。


「死ぬ! 死ぬ! 死ぬ! 死ぬ!」


「あー、なんかもう慣れたわ。うん、取り敢えず早く終わって」


「いや絶望度高過ぎ!」


ジェットコースターがもう一度動きを止める頃、シャル以外の俺達はげっそりとしていた。


「あー! 楽しかった!」


「お前だけじゃけどな!?」


「なんか違うの無かったの!?」


シャルは指で顎を触りながら明後日の方角を見た。


「うーん……」


そうして少し考えていると、何か考えが出たのか、顔を明るくした。

俺達は少し期待してしまう。


「ない!」


しかし、それは淡い希望だった。

俺達はがくっと膝を折って倒れた。

それを見ていたシャルは、流石に気が差したのか、俺達に助言をした。


「でもさ、場所なんてどうでもよくない?」


俺達はシャルの言葉に気を引かれ、下を見ていた目でシャルを見た。


「どこで楽しむか、じゃなくて、誰と楽しむか、だと、私は思うんだ。友達ってそういうのじゃないかな?」


俺とターナは目を合わせた。

しかし、ターナは目を逸らしてしまう。

それでも俺は、ターナから視線を外そうとはしなかった。


……確かにな。


「そうだな! 場所なんてどうでもいい! 友達と楽しめたら、俺は何でもいい!」


「カロス………」


ターナはカロスを見つめた。


「じゃあさ……あとジェットコースター十周する?」


「「一人でやってもらっていいですか?」」


「ひどっ! 心にぐさって来たよ!」


シャルは膝を抱えて丸まってしまった。


「……でも……」


ターナはシャルに近付いて言った。


「それ以外なら良いぞ? 我もこういうのはやってみたいと思っておったしのぅ」


そう言ってシャルをフォローして見せた。

シャルは出てない涙を拭う。


「ターナちゃん………好きっ!」


すると、ターナに抱き着いた。


「な!? や、やめんか! 怒るぞ!」


ターナも動揺を隠せない。


「怒ったターナちゃんも好きっ!」


到頭ターナは、照れが見えてきてしまった。


「……もうよい。勝手にしておれ!」


「じゃ、お言葉に甘えて。ぎゅー!」


シャルはターナを更に強く抱き締めた。

流石にターナも痛そうだ。


「痛い痛い! そこまで勝手にしてよいとは言っておらん!」


「えー? だって私はただ「勝手にしろ」て言葉に従っただけですけど?」


シャルは惚けるように言った。


「なんだと! 同じ目に合わせてやる!」


ターナはシャルを捕まえようとするが、するりと抜けられてしまった。


「ちょ! 復讐は何も生まないよ!?」


「うるさい! 主犯が何を言う!」


そうしてターナとシャルの追いかけっこが長く続いた。

二人の表情は、とても楽しそうだ。


俺はこの中で、ただ一人理解しているかもしれない。


この二人が、本来は敵同士ということに。

いつか俺達は、シャルとも戦わなければいけないということを。


そう、いつか俺達はシャルを倒して、その屍を……あれ?


俺は、我ながらも少し疑問を抱いてしまった。


俺がもしシャルと戦うとき、その時俺は、シャルを殺せるのだろうか?


友達を、そんないとも簡単に、今までの関係がどうでも良かったとでも言うように、殺せるのだろうか?


そんな考えが、俺の頭をぐるぐると回っていた。



……………………



時間が過ぎるのは早く、俺達が遊んでいる内に、空は橙色に染まっていた。


「あー楽しかった! 今日はありがとね!」


「あぁ、こちらこそ」


「ターナちゃんも、また遊ぼうねー」


ターナは今日のこともあり、少し素っ気なくしてしまうが、それでも笑顔でいるシャルを見て、ターナは挨拶した。


「また、その時は遊んでやる」


ターナがそう言うと、シャルは嬉しそうな顔をして走って立ち去っていった。


「またねー!」


「あぁ……じゃあ、俺達も帰るか!」


大通りを二人で歩いていると、今日はやけに人が多く、少ししたことではぐれてしまいそうだ。

すると、ターナが人の渦に飲み込まれそうになってしまった。


「おっと!」


俺はターナの腕を掴んで、ターナを引っ張り出す。

そして、その手をそのまま握った。


「はぐれないように気を付けろよ?」


「………分かっておるわ!」


「………そうか」


俺達はまた歩き出した。


「のう、カロス」


「ん? 何?」


「……昨日は、すまなかった……」


「………俺も、ターナの気持ち、分からないでごめん。ぶっちゃけ、今も分からないや」


そう言うと、ターナは俺を見て微笑んだ。


「それでいいと思うぞ。それで、私とまた、友達でいてくれますか……?」


ターナが恥ずかしがりながら、俺を直視できずにそう言った。

俺は足を止め、ターナをしっかりと視界に収めて答えた。


「………もうずっと前から友達だろ?」


すると、ターナはすっかり笑顔になった。


「今日はハンバーグが良いのう!」


「そう、じゃあとびきりのを作ってみようか」


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