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それから数年後。
「ねぇ、お母さま。このお花は何ていうの?」
「これはね…ニーレンベルギアというのよ…」
遠い目をしながら愛娘に答えるルシア。オークとの関係が明らかになり、オズボーン伯との縁談が白紙となった彼女は、他の男性と結ばれ幸せに暮らしていた。
「このお花はね、お母さんの想い出のお花なのよ。」
「そのお話、聞かせて聞かせて~♪」
「貴方がもう少し大きくなってから、ね?」
その時、大きな風とともにたくさんの花びらが宙を舞った。
(幸せか、ルシア…)
風に乗ってダレスの優しい声がルシアの耳に届いたような気がした。
「もちろんよ、ダレスさま……」
ルシアはそっと呟いた。
(完)