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ザクッ! ドシュッ!
その場に膝をついたダレスに次々と兵士たちの刃が襲いかかった。
「ぐぶっ…」
ドサッ! ガシャーンッ!
血の塊を吐き出しながらダレスは崩れ落ちた。
「ダレスさまーー!!」
「いけません、お嬢さま!」
マルタの制止を振り切り、ダレスの元へと駆け寄るルシア。
「すまん、ルシア。結局、俺は君に何もしてやれなかった…」
「そん…な…」
破損した鎧の隙間から灰緑色の肌が露出していた。兜で顔は隠れているものの、ダレスが人間ではないことに気付いたはずである。だが、それでもなおルシアはダレスの手を強く握ってきたのだった。
「貴方が来てくれるのがいつも楽しみでした…お話を聞くのが大好きでした。私、ずっと貴方が…貴方のことが…」
「いいんだ…もういいんだ、ルシア⋯」
涙ながらに語るルシアの言葉を遮るようにダレスは口を開いた。
「もし、生まれ変われるのなら…俺は花になりたい。あの…ニーレンベルギアのように…君の傍らでずっと…咲き続けて…いた…い……」
それがダレスの最後の言葉となった。