表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ニーレンベルギア  作者: ししまる
7/9

プァーン! パパパーン!


よく晴れた青空にファンファーレが響いた。


「おおっ…何とも美しい花嫁ですなぁ。」


参列者の中から感嘆の声があがる中、でっぷりと肥えた初老の男が少女の手を引きながらのそのそと歩いて来た。


「これ、花嫁が下を向いてどうする。その美しい顔を皆によく見せてやらんか。」


「は、はい…」


ルシアは悲しげな表情のままゆっくりと顔を上げる。


「ダレスさま……」


もう二度と逢えぬであろう想い人の名を呟くルシア。頬から一筋の涙がこぼれ落ちた。


「おぅおぅ、泣くほど嬉しいか。うい奴じゃ、今夜はタップリと可愛がってやるからな。ぐふっ…ぐふふっ♪」


オズボーン伯の下卑た笑い声が響く。


「…おいっ、あんな所に誰かいるぞ!」


「一体、何者だ!?」


参列者が口々に騒ぎ始めた。見れば、丘の上に白馬に跨がり全身鎧に身を包んだ怪しい人影があるではないか。


「もしや、あの方は…!」


「ウォォォーーッ!!」


馬上の男は雄叫びをあげながら坂を駆け降りた。


「ええいっ! 祝いの席に何と無粋な奴よ。早くあの慮外者を討ち果たせっ!」


オズボーン伯の命で、5人ほどの兵士がダレスの行く手を塞いだ。


「でやあぁぁー!!」


「何っ!?」


「しまった! 突破されたぞ!」


ダレスは兵士たちの頭上を飛び越えた。


(残りはだいたい10人といった所か)


ダレスは護衛の兵士の人数を数えながら、馬上で長槍を構え直す。


「一斉にかかれっ!」


数人の兵士がダレスに襲いかかる。


「どけえっ! でえぇぇいいっ!!」


バギッ! ドガガッ!


ダレスが振り回した長槍で数人の兵士が薙ぎ倒された。


「ひ…ひぃーっ!!」


「こ、これ! 逃げるでない! 儂を守らんかっ!」


しかし、戦意喪失した兵士たちにオズボーン伯の声は届かない。


「お、お助けー!」


孤立したオズボーン伯は、ルシアを見捨てて一目散に逃げ出して行く。


「ルシアッ!」


「ダレスさまっ!」


ダレスは馬から飛び降り、ルシアの元へと駆け出して行く。


(ああ、ルシア…これでやっと君を…)


ザシュッ!


花嫁まであと少しという所でダレスの動きが止まった。鎧の隙間から短剣がねじ込まれていたのだった。


「…グッ!」


ズボッ!


短剣が引き抜かれると同時に背中から鮮血が噴き出す。


「これ以上はお嬢さまを苦しませるだけ…そう言ったでしょう…」


ダレスの背後に悲しそうな表情のマルタが立っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ