6
ダレスはほら穴の中で数日を無為に過ごしていた。もう二度と会わないと誓った。だが、抑えれば抑えるほどに会いたい気持ちは昴ぶっていく。
(遠巻きに眺めるだけなら構わないのではないか)
ダレスの足はいつの間にか丘の上の塔へと向かっていた。
(妙だ…人の気配がしない…)
塔から離れた場所で待ってみたが、ルシアは一向に姿を現そうとしない。
(そうか、遅かったのだな…む、あれは…)
ダレスはバルコニーに置かれたテーブルの上に手紙があるのを発見した。
「ダレスさまへ
眼の治療は無事に終わり、私は光を取り戻しました。私はお世話になったオズボーンさまの元へと嫁ぐことになりました。最後にお会い出来なかったのはとても残念です。いつかまたどこかで…お元気で…」
(すまん…だが、これで良かったんだ…)
読み終えた手紙をたたもうとしてダレスはハッと気付いた。文字が涙で滲んでいたのだ。
(やはり、ルシア自身もこんな結婚望んでいない。だが、どうする…俺に何が出来る?)
その時、ダレスの頭の中に1つの考えが浮かんだ。
(ルシア…君と出会っていなければ、俺はとっくに野垂れ死んでいただろう。君は俺に生きる希望を与えてくれた。次は俺が君を救う番だ!)
ダレスは剣の柄を強く握り締めた。