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魔法がない世界ならきっと

作者: 冥狼

 アルクは考えていた。魔法がない世界ならきっと成功出来たはずだと。

 やる気もなく布団にくるまりながらそう思考するのはもう何度目か。

 助けてと無性に言いたくなる。誰かに構って欲しい、愛に飢えてるんだ。

 毎日がつまらないな、他の友達は楽しそうなのに…。


 そんな思いを何処かに呟けたら、誰かがそれとなく反応して助けてくれるんじゃないか。そういう風に思わずにはいられない。


 ああ、胸が苦しい。



 葛藤や鬱を押さえ込みながらアルクは布団を出て作業着に着替えた。そして何時も向かっているバイト先へと向かう。


 仕事中は余計なことを考える暇が無いから良いと思う。しかし、自分は不器用だ。人とのコミュニケーションを取るのも苦手で周りの人間との関係は良くない。

 店長からもその話をされ、まるで知らない間に魔物の巣の中に放り込まれたように錯覚した。元々コミュニケーションが苦手なのだがこれで余計悪化した気がする。


 幼少の頃の扱いにより僕は人間関係に関しては物凄く過敏なのでは無いかと思っている。

 そのせいかみんなが僕の悪い噂をしているような、そんな気がしてならない。はぁ。


 毎度のように癖になった溜息をつく。

 歩いて20分。魔導車が扱えればあっという間につくのだが、生憎と免許は持っていない。

 しかし、毎度のように考え事をしているせいで、気付いたら到着しているくらいだ。


 バイト先は魔道書店。魔道書店と言いつつ魔道具も売っているが、魔道書店なのである。僕はそこで受付か案内、在庫の整理をしている。

 裏口から入り顔に笑顔を貼り付ける。鏡で身嗜みが整ったことを確認すると店内へと入った。



 今日は在庫の整理だ。売り切れている品物を補充しなければならない。魔法を使いたいところだが、両手に塔のように重ねなれた魔道書を持っていく。

 魔道書のコーナーへ着くと、そこには僕と同い年の青年が居た。名前はレックス、赤い髪と僕より数センチ大きな身長が印象的だ。バイトの後輩である。


「レックス、おはよう」

「アルクさんおはよっす」


 レックスは自分より器量が良く物事を覚えるのが速い。受付や案内はもちろん後数ヶ月したら魔道具などの補充も僕より速くなるだろう。憂鬱になってきた。


 僕はそのままレックスの側を通り過ぎ、魔道書が倒れている棚へ補充作業を始める。


 ああ、無駄な日々が続いていくな…。

 店内で溜息をつくのは御法度なので胸の内でつく。


 稼いだお金は親への借金返済。学校には行ってないのでする勉強も無く、希望も無く未来も無い。もちろん魔力も。

 何の為に生きているのだろうか。せめて、魔力があったら、もしくは魔力がない世界なら良かったのに。所詮そんなものは夢物語、なのだが。



 数時間ほどの作業を終えて休憩時間に入る。他のバイトの人が話しているが、その輪の中に入れない。家から持ってきた菓子パンを無気力に齧る。


「そういえばアルクさんって魔学院行ってないみたいよ」

「あの人魔力が少ないんだって」

「普段何してんだろうね」


 うるさい。

 無論これは幻聴だ。実際は他愛もない世間話に花を咲かせていることだろう。しかし、こう聞こえてならないのだ。

 心が押し潰されそうになってもう何十回目か、既に鼻息で飛んじゃうくらいにペラペラだ。


 休憩時間が終わると受付のカウンターに入る。

 同時に休憩時間を終えたレックスは僕の後ろで魔道具の点検をし始めた。

 僕は魔道具の点検が出来ない。魔力が少ないからだ。魔力が少ないと魔道具の中の魔道回路を見るだけで倒れてしまう。

 レックスへの嫉妬心を抑えながら来店するお客様へ笑顔を振りまく。


 魔道具に興味があって魔道書店へバイトに来たが、当然来るお客様は魔力が高い。ましてやここは魔学院が近く、そこの生徒や教授もここに寄ることが少なく無い。


 …ある意味ここは地獄だ。

ご飯を三食抜いた後に飲食店で働いてるようイメージすれば分かるだろう。僕は魔道具に飢えている。そして魔力に。


 胸中で少々の葛藤を押しつぶしながらお客様への対応をしていること数時間、閉店作業の時間がきた。

 閉店作業の担当は僕である。みんなより早めに作業を切り上げれることに安堵しつつ、必要な道具を持って表口へと向かった。




 このような一日を毎日繰り返している。

 正確には一週間に6日だが。

 残りの一日は親が崇めている神を讃えに教会へ行くのだ。

 自分は無神論者だ。しかし、家にいる限りこの習慣から逃れることは出来ない。また、とある事情がある以上、この家からは逃れることは出来ない。内容は自分に非がありしょうもないものだが。10年間も続けているのだから慣れては来たが苦痛なことには変わりはない。


 お金が無いから魔学院には行けず、魔力が無いせいで周りからは蔑まれ、苦痛なことを定期的に繰り返し偽り続ける毎日。

 自殺する勇気も無く、生きにくく死ににくい世界にしか見えない。

 そもそも生きている時点で、存在する時点で必ずお金はかかる。管理された毎日に将来のことなど考える余裕さえない。


 そして現実逃避的に思うのだ。

 もしも魔法がない世界ならきっと僕は上手くいったはずだと。果てには魔力があるから魔物は存在し、戦争は終わらないのだと。

 魔力が無ければそもそも生活が成り立つのかは不安だが、きっと僕ならきっとその世界の技能に目覚めて上手くやれるはず。

 想像が妄想になり、冷静になってから自己嫌悪するもそれすら他人のせいにしてしまう。


 けれども思わずにはいられないのだ。

 魔法がない世界ならきっと…。


魔法があったらとかよく考える作者ですが、魔法があったとしてもどうなるのか。なかったら良いのになんて魔法のある世界の住民が思ってるかもしれない、そんな事を書きたかった…訳では無いです。ただ、そんな話に落ち着いただけです。魔法があればもっとうまく書けたかもしれませんが(・ω<) テヘペロ

この短編は修正、加筆を大幅にしていく予定です(所々意味不明なので)

読んでくれた読者様、ありがとうございました!

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