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  作者: こここ
23/27

駐車場

これほど深い暗闇を今まで知らなかった。

天を覆う枝の隙間からかじろうて夜空からの光源によって視界は保たれている。

凄烈な水のような大気が喉を肺を頬を指先を撫でて浸す。

木々の間の瑞々しい陰影へ向かって歩を進めた時だった。

突然手首に火が点る。

「藤」

風が止み森閑とする山林の中でその声は矢のように藤の胸の辺りに届いた。

火の正体は楓の手の熱だった。

手首を掴まれそれ以上の前進を阻まれている。

色彩の無い世界で天から注いだ星の細やかな輝きを楓の瞳は内へと閉じ込めている。

「そっち暗いから。足元、危ないよ」

小さな子供に与えるような注意をされ腹立たしい。

藤は腕を大きく振って楓の手から逃れた。

けれどそれ以上は先に進まずもとの道を引き返した。

少し出遅れて落ち葉を踏む足音が後ろから聞こえてくる。

まるで迷い犬になつかれてついてくるようだと藤は密かに思った。


並んだ自販機の発する青白い光がその狭い一帯に夜の暗闇の侵入を拒んでいる。

パーキングエリアの駐車場に他の車体は無い。

商品は随時入れ替えてあるらしいから、穂村はそう言って楓の掌に硬貨を落とし、一足先に車を降りて行った。

自販機の前に立ち商品を選ぶ。

驚くほど品揃えはいい。

缶を片手に二人並んで柵に凭れる。

藤はいつもの琥珀曹達で、楓は見たことのない物があると珍しげに青紫の缶を選んだ。

「変わった味がする」

楓の感想に興味を引かれ味見をする。

藤と同じ炭酸水だがはじける泡が仄かに花の香りを放つ。

楓はあまり好みではなかったようだが、藤は気に入りそのまま交換をした。

「さっきはあんな所で何をしていた?」

尋ねる声に責めるような響きがある。

「何も」

「急にいなくなったりしないでほしいよ」

業務に差し支えが出ると暗に伝えられていると藤は感じた。

「悪かったな」

苛立ちが沸き上がる。

深い溜め息が隣から聞こえた。

(少し歩いた程度で!)

振り向いた藤が見たものは項垂れて顔を覆う楓の姿だった。

「頼むから、俺を傍に置いてくれ」

責めるのではなく懇願する楓に藤は困惑した。

「どうして、お前がそんな事を望む?それはお前が望むべき事じゃない」

(そうだ、望むべきはもっと別の道だ)

その瞬間強い反発を滲ませた眼差しが藤に突き刺さる。

「おい、車に戻れ」

青白い電燈に照らされた穂村が二人を呼んでいる。

先に視線を外したのは楓だった。

何も言わず歩き出す。

感情を無理矢理閉じ込め藤もその後を続く。

薄い影を幾重にも背に張り付かせ前を行く楓の後ろ姿を藤はその目に映した。

距離の開いた後ろ姿では何を思うのか分からなかった。



ちょっと短いですが、更新しました。

お話が全く進んでいないと今気づきました。


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