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皇帝の系譜  作者: 夢中闊歩
1章 0歳時代~1歳時代
7/15

皇帝の出会い

お待たせしました。仕事が忙しくて…。

 日々調教を積み、着実に成長を遂げている俺のもとに一人の女性が訪ねてきた。短く切っている黒髪を風に靡かせ、まっすぐに俺のもとにやってくる。そして前の前まで来るとじっと俺のことを観察し始める。


「ふーん、彼がシキノテイオーなのね?」


 どう一言話すと俺の周りを歩き、更に観察する。俺はもう2歳になる直前で結構体が大きい(確か490キロぐらいは今ある)ので、小さな彼女を見下ろす感じになっている。


「柔らかい筋肉、雄大な馬体、そして理知的な目、成程、外見は合格ね??」


 ん?合格?一体何が合格なんだ??そう考えていると、厩舎の入り口から走ってくる坂下さんが目に入る。こら、走っちゃだめだろ。



「久留ジョッキーごめんなさい、早くおこしになられるなら言ってくださればよかったのに。シキノテイオーをご覧になりましたか?」


 俺らの側まできた彼女の「ジョッキー」という言葉が気になった。ジョッキー?なんで今ジョッキーが俺に用があるんだ?


「坂下さん、この子に乗ってみてもいい??それで決めるわ」


 久留ジョッキーと呼ばれた彼女が、俺の鼻づらを撫でながら言った。


 え、ちょっと待って、なんで俺の知らない間に話が進んでるんですか(当然です)




 あれよあれよという間に調教の準備をさせられ、トラックコースを楽走する。最初っから坂下さん、このご予定だったらしいので、まあ良いとする。最初は久留ジョッキーの腕も分からないので、あまり本気にならず、ゆっくりしよう。




 私は久留夏希、29歳のジョッキーよ。某天才ジョッキーよりも凄い天才だ!と言われることもあるけど、それは間違いだと思うわ。彼の方が何倍も凄いと思うわ。


 さて、私は今日友人の坂下のオファーに答えて、育成牧場までやってきた。目的は彼女絶賛のシキノテイオーである。彼女とは縁あって友人でいるのだけれど、その彼女が絶賛する馬ということで非常に興味があった。そして彼を一目見て絶句した。


 二歳になるかならないかであるのに、既に雄大な馬体。しかもまだ成長途中であるそうで、早熟馬ということではないそうだ。全身についている柔らかい筋肉、そして非常に理知的な目である。私が今まで乗ってきたどの馬よりもすばらしい逸材だと思った。だから坂下の思惑に乗り、調教を手伝ってみたのだけれども…。



 最初はトラックコースで馬なりで走ってみた。この時点で既に特筆すべき点を見つけたの。それは重心が低く、更に上下運動が少ないということ。これ程安定していれば、瞬時にトップスピードに乗ることができるし、更にコースが悪くてもしっかりと走ることができる。


 その後は、トラックコースで追うことや、坂路コース、ウッドチップなど様々なコースで追って調教を行って私の予感は確信に変わった。この馬なら将来G1を狙える…!


 この時期にしては圧倒的なスタミナ、どんなコースでも対応できるパワー、状況によって変えられるスライド。そして何より私の指示に瞬時に答える知性。私は感動に震えた。このような逸材がいるなんて、今でも信じられないが、自分が乗っている馬がまさにそれであった。


 話を聞いたときは正直うーん、と首をかしげたものよ。血統的に悪くはないけど、旧世代の血統だと思い、本当にいるのかしらとも思ったの。今ではその考えが間違いだと思っている。


 坂下のオファーに応じて…いや、私から頭を下げてのせて下さいと頼むべきね。



 本人の知らない間にまた評価があがり、主戦ジョッキーも決まったのであった。

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