5.クエスト
曇り空の下、クオンとリュウセイが肩を並べて疾走する。
ガウとニコラスの姿はない。
そこにはこんな理由があった。
事の始まりは1時間半前。
4人がワクチン探しをしていた時、肉食獣に襲われ、ガウとニコラスと分かれてしまった。
クオンとリュウセイは1時間ほど2人を捜索したが見つからず、そこに1機のヘリコプターが着陸し、貴族が映るモニターを観せられた。
貴族の口から告げられたのはクオンとリュウセイにクエストを与えるということ。
その内容というのは残酷なものだった。
武装集団に拘束されたガウとニコラスは病院に閉じ込められている。
救助するには2人が閉じ込められている倉庫の鍵が必要。
カギは病院内に隠した宝箱の中に収容されている。
制限時間はクエストを受けてから2時間以内。
クエストをクリアできなかった場合、病院内に仕掛けられた時限爆弾が作動し、爆破される。
勿論クオンとリュウセイに選択肢などない。
2人は指定された病院へ疾走するが、何しろ2人がいた場所よりもかなり遠くに病院はあった。
病院に到着した頃にはすでに制限時間の30分を消費していた。
その上病院は凄まじく立派で巨大だ。
この病院内から宝箱を見つけるのは困難だろう。
だが弱音を吐くわけにはいかない。
2人は異様な気配を醸し出す病院を見上げ、意を決して屋内に踏み入った。
昼間だというのに、屋内は薄暗く不気味な雰囲気だ。
2人は自分たちの足音だけが反響する階段を駆け、ガウとニコラスがいる最上階の8階へ上った。
2人が閉じ込められているという倉庫は容易く発見出来たが、ドアは重圧で蹴破ることはとても出来そうにない。
リュウセイはドアを叩き、向こうにいるであろうガウとニコラスに向けて叫ぶ。
「ガウ、ニコラス!
無事か!?」
「リュウセイか……?
悪ぃ、捕まっちまった」
「謝るな馬鹿。
ニコラスは?」
「無事だ。
クオンも一緒か?」
「ああ。
必ず助け出す、だから大人しく待ってろ」
「期待してるぞ!
じゃあ俺は寝る!
おやすみ~」
相変わらず呑気なガウの声を聞き、リュウセイは顔を綻ばせた。
「さて、じゃあ俺たちは手分けして鍵を探すぞ。
俺は1階から4階、お前は5階からこの8階を探す。
いいな」
「うん」
「制限時間10分前には必ずここに戻って来る。
鍵を入手したら報告せずに戻って来ていい。
1分でも早く2人を救出したいからな。
それと、互いに何があっても駆け付けることはするな」
「……うん」
リュウセイの言葉にクオンが頷くのを確認すると、2人は各々のすべきことを成すために行動開始した。
武装集団に支給された腕時計で時間を確認する。
クエスト開始から1時間10分経過。
残り時間は50分。
8階、7階と見て回ったクオンだが、ここまでなんの異常も見られず、宝箱の影も形もない。
次は6階。
クオンは拳銃を構えながら病室に踏み入った。
カーテンが閉め切られた薄暗い病室には割れた窓ガラスの破片が散乱している。
警戒しながら1歩1歩進んで行き―――クオンは息を呑んだ。
ベッドの陰、壁にもたれ掛かっているミイラ化した人間がいたからだ。
肉食獣でないことに安堵するクオン。
ふと、ミイラ化した人間の手に気になる物を見つけた。
注射器に入った透明感のある赤い液体―――ワクチンだ。
クオンは愕然とする。
20年間ワクチンを探し求め、初めて自分の力で見つけたのだ。
クオンの胸中から嬉しさが込み上げ、知らず知らずのうちに微笑を洩らしていた。
だがそれも一瞬で霧散する。
以前貴族が言っていた言葉が頭をよぎる。
羅刹を変異させる毒薬ブラッド・オメガ。
駒たちの脅威と言っても過言ではない代物が、監獄内に隠されている。
しかもワクチンと見分けがつかないと言うではないか。
ならばクオンの眼前にある物もワクチンではなく、ブラッド・オメガの可能性があるということ。
クオンは神妙な面差しで液体を見つめる。
「イチかバチか、運に任せるしかないか……」
クオンの胸中でしこりのように居座る危惧。
それを受け入れるようにクオンは液体に手を伸ばした。
だが、手にする直前でクオンの目の色が変わり飛び退き、ミイラに拳銃を向ける。
僅かにミイラの身体が揺れたのだ。
クオンがミイラを睨み付け、トリガーに指を掛けた瞬間―――ミイラの背後から小猿のような生物が顔を覗かせた。
無食獣だ。
力んでいたクオンの肩から力が抜け、拳銃を下ろす。
無食獣は小首を傾げるような仕草を見せながら、金色の大きな瞳でクオンを見上げる。
その愛らしい姿にクオンは顔を綻ばせ、液体を手に取った。
カーテンの隙間から射し込む日差しに赤い液体がキラキラと煌めく。
これがワクチンであることを願いながらクオンが液体を見つめていると、自分の背後で不穏な影が揺らめくのが注射器に映った。
殺気を感じたクオンが迅速にその場から飛び退いた直後、それは拳を振り上げ、床を陥没させた。
クオンがその場に留まっていたら無事では済まなかっただろう。
クオンの眼前で鋭利な牙を剥き出しにする化け物、2メートルはある巨体、容貌はゴリラと相似している。
肉食獣だ。
ぐるぐると喉を鳴らし、クオンを睨み付けている。
クオンを喰うつもりだ。
危機感を肌で感じたクオンは呼吸することも忘れるほど銃を連射した。
銃弾は1発も外すことなく肉食獣に命中したが、肉食獣は倒れるどころか悲鳴さえも上げない。
クオンの攻撃に肉食獣の双眸に灯る殺意が濃厚なものになる。
銃では倒せないと悟ったクオンは腰の黒刀に手を伸ばすが、そうはさせまいと言わんばかりに肉食獣の拳がクオンの腹部に叩き込まれた。
「がっ……」
クオンは声にならない悲鳴を洩らし、壁面に背中から激突した。
豪快な破壊音が轟く。
老朽化が進んだ壁面はクオンが激突したせいで陥没していた。
壁面を伝い、クオンは脱力したように床に座り込む。
腹部を押さえ血反吐を吐きながら咳き込むクオン。
肉食獣の怪力により肋骨が折れていた。
僅かに力むだけで腹部に強烈な痛みが走る。
肉食獣が威嚇しながらクオンに接近して来る。
ここで喰われたとしても、僅かな肉片が残っていれば羅刹は再生する。
だがそんな残虐な死など経験したくなかった。
クオンは痛みでおののく身体を気合いだけで立ち上がらせ、黒刀を抜刀し肉食獣と対峙する。
口内を冒す鉄の味と、腹部と背中を駆け巡る激痛にクオンの顔が歪んだ。
思わず奇声を上げてしまいたくなるような激痛にクオンの目が霞む。
クオンがふらついたその時―――肉食獣はクオンの首を掴み持ち上げた。
喉が圧迫され、意識が薄れていく。
だがその時、霞む視界の中で先刻の無食獣が肉食獣の手に噛み付く光景が映った。
短く悲鳴を上げた肉食獣は無食獣を鷲掴みにすると、無慈悲に壁面に投げ付けた。
激突した無食獣は床に無造作に落下するとけいれんを起こし、やがて動かなくなった。
事の顛末をただ無力に見つめるしかなかったクオン。
動かなくなった無食獣を見つめ、歯を食いしばった。
クオンの中でふつふつと怒りがたぎっていき―――渾身の力で肉食獣の腕を斬り落とした。
耳をつんざくような悲鳴を上げのたうち回る肉食獣。
停止していた呼吸、クオンの身体が酸素を求め肺に激流し、苦悶の表情を浮かべ咳き込む。
クオンはのたうち回る肉食獣を冷徹に見据えると、黒刀を振りかざし肉食獣の首を斬り落とした。
鮮血が噴水のように噴出し、クオンを汚す。
頭部と切り離された胴体が不気味にけいれんしている。
だがそれもじきに完全に停止するだろう。
クオンは深く溜息を吐くと無食獣に目を向けた。
「……ごめんなさい」
くだらない争いに巻き込んでしまったこと、守れなかったことに対しての懺悔の言葉を零し、クオンは液体を手にその場をあとにした。
―――1階から4階で宝箱を探すリュウセイ。
ここまでは何の収穫もない。
残すは1階だけ。
上階で破壊音と悲鳴が何度か聞こえてきた。
おそらくクオンの身に何かあったのだろうと察しは付くが、リュウセイは駆け付けない。
クオンの強さを認めているというのもあるけれど、今はガウとニコラスを救出するため自分の役目を果たさなくてはならないから。
リュウセイはもう何度目になるか分からない期待を込め、病室に踏み入った。
割れた窓ガラス、引き裂かれたシーツとカーテン。
散乱したガラス片を踏み締めながらベッドの下を覗き―――目当ての物を発見した。
掌くらいの宝箱を開けると、そこには銀色の質素な鍵が横たわっている。
ようやく見つかった鍵にリュウセイは一瞬安堵すると、一目散に倉庫へ疾走した。
残り時間10分。
リュウセイが倉庫に駆け付けた時、すでにクオンの姿があった。
「鍵はあった?」
「ああ。
時間がない、開けるぞ」
リュウセイは鍵を鍵穴に差し込み、回し開けた。
カチャッ、と軽快な解除音が鳴る。
重厚な扉を引き開けると、寄り添って眠るガウとニコラスの姿が確認出来た。
すやすやと気持ちよさげに寝息を立てている。
人の苦労も知らずに、とリュウセイは恨みがましく2人を見つめた。
「おい、起きろ」
リュウセイが靴先でガウとニコラスの腹部をつつくと、2人は顔をしかめ目を覚ます。
ガウは寝ぼけ眼でリュウセイとクオンを見上げた。
「ありゃ?
扉開いたんだなー」
「呑気に寝てやがって……
ほら立て、時間がない。
早くここから脱出するぞ」
リュウセイは眠そうに目を擦るニコラスを背負うと、クオンとガウを伴い階下へと疾走した。
残り時間は5分を切っている。
だが走行先には出口が見えていた。
脱出するには歩いていても充分余裕がある。
だが油断は禁物。
リュウセイたちは1秒でも早く脱出するためとにかく走る。
しかしあと20メートルというところで禍々しい影が行く手を阻んだ。
表皮を覆う漆黒の鱗に、正気を失った青い双眸、剥き出しの牙に鋭利な爪、額から突き出る2本の角―――変異した羅刹だ。
「……この状況、ちょっとまずいんじゃない?」
「ちょっとじゃなくてかなり、な」
ガウとリュウセイの顔が強張る。
腕時計を確認すれば残り時間はあと3分を切っていた。
不死身の羅刹相手に戦う術などないことを痛感していたリュウセイたちは立ちすくむしかない。
リュウセイとガウが悔しげに唇を噛み締める横で、クオンが赤い液体が入った注射器を握り締めた。
「……私が羅刹を食い止める。
その間に君たちはここから脱出して」
「食い止めるってどうやって―――」
クオンが手にする液体を目にしたリュウセイは言葉を呑み込み、クオンの考えを察した。
羅刹にワクチンを駆使するつもりだ、と。
確かに羅刹にワクチンを投与すれば殺すことだって可能になる。
だが同時にリュウセイには懸念もあった。
もしクオンが手にする液体がワクチンじゃなかった場合、羅刹は殺せない。
本物のワクチンであって欲しいが、クオンにとっては複雑なことだろう。
今までワクチンを探して来たのに、それをみすみす手放すことなんてしたくないはずだ。
所詮互いの望みのために利用し合う関係。
自分の身に不都合が起きたら慈悲など抱かずに、ワクチンを手に逃げればいい。
リュウセイがクオンの立場なら惑うことなくそう行動していた。
だから何故クオンが自分たちを庇おうとするのか、リュウセイには理解しがたかった。
疑問を抱くリュウセイをクオンが見つめる。
「時間がない。
生きたければ私に従って」
普段の無感情な瞳とは違う意思の強い瞳。
生きたければ……
そう言われてしまったらクオンに従わざるを得なかった。
リュウセイとガウが神妙に頷くのを見届けたクオンは、毅然とした足取りで羅刹に歩み寄って行く。
クオンが羅刹の眼前に立った瞬間―――鋭利な爪がクオンの腹部を貫いた。
「ぐっ……」
歯を食いしばり、うめき声を洩らすクオンの腹部から滝のように鮮血が溢れ出していく。
同時にクオンは拳銃で羅刹の胸を撃ち抜いた。
短く悲鳴を上げる羅刹の爪がより深くクオンの腹部を抉る。
クオンは身動きが取れぬよう、自身を貫く羅刹の腕を掴んだ。
「……捕まえた。
走ってっ!!」
クオンが背後にいる3人に叫ぶと、リュウセイとガウは出口を目指し一目散に駆け出した。
すぐ横を走り抜けていく3人に喰らい付こうと羅刹がもがく。
その反動でクオンの腹部に深々と突き刺さる羅刹の爪が、肉を抉るように体内で暴れ回った。
例えようのない激痛に気が遠くなりそうになるのを必死に留め、クオンは注射器を羅刹の腕に突き刺した。
赤い液体を投与する。
果たしてワクチンなのか……
求める答えは羅刹の身体に変化として表れた。
表皮を覆う漆黒の鱗が花びらのようにはらはらと剥がれ落ちると、鋭利な爪や牙、角が消え、人間の姿へと戻ったのだ。
イチかバチかの賭けだったが、どうやら液体は正真正銘のワクチンだったようだ。
先刻クオンが撃ち抜いた銃傷が致命傷となり、羅刹は苦しむ間もなく絶命した。
ふと腕時計に目を落とすと、残り時間はあと30秒。
もうじき病院が爆破する。
クオンはこのまま動くつもりはなかった。
普通の人間なら致命傷となる怪我を負ったせいで動けないというのもあるが、爆破程度で羅刹は死なないだろうという確信があったからだ。
脱力したようにクオンが座り込むと、ふとクオンの腕が力強い温もりに引き寄せられた。
顔を上げると、そこにはとっくに脱出したとばかり思っていたリュウセイの姿がある。
「何座り込んでるっ!?
早く逃げるぞ!」
クオンに口を開く猶予すら与えず、リュウセイはクオンを抱き抱え、出口に向かって全力疾走した。
「……何故戻ったの?
羅刹は爆破されても死なないのに……」
「不死身だからって何度も死のうとするな。
見てるこっちの身にもなれ。
顔見知りが死んだら、さすがにショックだろ。
……もっと自分を大事にしろ」
ぶっきらぼうな言葉。
だけど言葉の端々にリュウセイの思いやりが垣間見えた気がした。
20年間、クオンが同伴者と心を通わすことなど1度もなかった。
互いの望みのために利用出来る関係であればよかったから、心を通わす必要性も感じなかった。
だけど今回は何かが違う。
明確なことはクオンにも分からないが、今回の同伴者にはクオンの心を揺るがすだけの何かがあった。
その証拠にずっと探し求めていたワクチンを無駄にし、リュウセイたちを助けてしまった。
一体何がクオンにそうさせたのか、考えても答えは掴めない。
クオンの胸中に生まれた言い知れぬ感情。
不快だと感じることはない。
むしろ温かくて、他人の温もりに包まれているような心地よさを覚える。
どこか幸福感にも相似した感情にクオンは僅かに笑みを零し、リュウセイに身を委ねた。
残り時間あと数秒というところでリュウセイとクオンが病院内から飛び出して来る。
少しでも遠くに逃れるためにリュウセイは夢中で走る。
そして、ついにその時が来た。
爆破予告時間―――しかし爆発は起こらない。
病院はしん、と静まり返っている。
先に脱出していたガウとニコラスの元に駆け付けた2人。
4人は相変わらずそこに異様な雰囲気を纏ったままそびえ立つ病院を呆然と見上げた。
「なんで爆発しないんだ……?」
ニコラスの心の声が零れ落ちる。
ここにいる4人が思っていることだ。
4人が状況を呑み込めないままでいると、上空飛行していたヘリコプターの1機が4人の眼前に着陸する。
掲げたモニターに映像が映し出された。
4人にクエストを与えた張本人、年配の貴族の男だ。
舞踏会で装着するような仮面で顔を隠している。
『クエストクリアおめでとう。
楽しんでくれたかな?』
「お前どういうつもりだ?
爆破するとかぬかしやがったくせに……」
『なんで爆破しなかったかって?
お前たちの恐怖に歪む姿を楽しむための戯れに過ぎん。
本当に爆破してもよかったが、俺は優しい人間だからな。
爆破はしないでやったのだ。
嬉しいだろう?』
嘲笑する男を前に、リュウセイとガウの顔に怒りが浮かぶ。
もしこの場に男がいたら、2人は殴るだけでは済まさないだろう。
『さて、楽しませてもらった礼を言おう。
このクエストを監視カメラで観覧していた他の貴族も随分楽しんだようだからな。
では皆さん、またの機会に。
さようなら』
ぷつりと映像が切れる。
リュウセイは湧き上がる怒りを抑えるように拳を握り締めた。
「あいつら、どこまで人を馬鹿にすれば気が済むんだっ……」
「ああいう人の命を弄ぶような奴らは今に痛い目見るって。
んなことよりクオン、随分無茶したみてぇだが大丈夫か?」
「平気。
羅刹が死なないの知ってるでしょう?」
「知ってるけどさー、いくら不死身でも痛みはあんだから無茶はすんなよ。
自分を大事にしろって」
「……リュウセイと同じこと言うんだね」
ガウの言葉にクオンはこそばゆい感覚を覚え苦笑した。
すると、ニコラスがクオンの服の裾を引っ張り、クオンを見上げた。
「―――助けてくれてありがとう」
思わぬ言葉にクオンは目を丸くする。
頬を紅潮させ、照れ臭そうに唇を引き結ぶニコラスを見つめ、クオンは微笑を浮かべ頭を撫でた。
「無事でよかった」
「あっ、当たり前だろ!
僕は生きてここから出るって決めたんだ!
そう簡単に死んでたまるかっ」
「なんだよニコラスー、照れてんのかー?」
「ち、違う!
そんなわけないだろ!」
「子供のうちに素直になっといたほうがいいぞー。
大人になってひねくれる奴もいるからな」
ガウが皮肉を込めた笑顔の先には仏頂面のリュウセイがいる。
リュウセイは煩わしげに舌打ちをすると、クオンに視線を向けた。
「それよりよかったのか?
結局あれはワクチンだったんだろ?」
「いいの。
使って後悔はしてない」
「……なんで俺たちを守るために使った?」
「さあ? 何故だろ……
自分でもよく分からないけど、守りたいから守った。
それじゃ駄目?」
相変わらずクオンは表情の変化が乏しい。
無表情な顔でそう言われても素直に納得出来ないことだ。
だけど今はそれでよしとする。
曖昧な答えだけど、明確な答えがいつか分かる気がしたから。
そう思い、リュウセイはどこか嬉しげに頷くのだった。