表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜の異世界での過ごし方  作者: たろっと
異世界転生編
3/17

第3話 竜って当たり前に火を吹けるものだと思ってた

さて俺は今、最大の難関に立ち向かっている・

目の前には先ほど苦労の末捕まえた

白い毛並みで小さな角の生えた愛らしい兎モドキ


そんな兎モドキを食わんとする俺・・・しかし


『(グルゥ・・グルルル?)コイツ・・どうやって食べればいいんだ?・・・』


俺は首を傾げながら唸る・・

やっぱり、野生の竜らしく生でガブリかな?と思ったものの

ここはやはり前世、人間の俺としては生肉は遠慮したい


残念ながら前世の記憶が殆ど残っている俺は

自分が生肉食べる姿考えただけでもお腹壊しそうだ・・


目の前で「逃がしてぇ~」「食べないでぇ~」と

目をウルウル潤ませながら此方を見つめる兎モドキを放置し

考えた俺は、やはり此処で一つの結論に至る


・・うん、やはり肉は焼くに限るよね!・・


そう考える俺だが、残念ながら

此処で兎モドキを焼いて調理する夢は果たせなかった・・


何故なら理由は簡単!“火が無い”からである!


この広大な山に広がる人も住んでなさそうな大自然で火など早々在る訳もなく

自分で火を起こさない限り、火は決して手に入りそうもなかった。


しかし、俺は自分の小さい鱗に覆われた黒い手を見る


『(グウォォォォオ~!!)こんな手で火なんて起こせるかぁ~!!』


前世でも火など起こした事も無かった現代っ子の俺が

こんな子竜の手で火種を作る事など出来る筈もない・・


・・・・しょぼん、と落ち込む俺だったが

ふと自分のまだ見慣れない黒い尻尾が目に入りある事を思いつく・・


『(グルゥ!グルルルル!)そうだ!今、俺って竜だった!』


そう、今は俺は竜なのだ!

竜といえば全てのファンタジーの夢!

空を飛んで火を吹く・・・・・そう!火を吹くのである!


『(グルルゥウウウ~)俺も一応竜なんだし火ぐらい吹けるかもな~』


思い立ったが吉日とばかりに

俺は思いっきり深呼吸をして火を出すイメージで

お腹に力を()めながら一気に息を吐き出した!


その結果・・・・・


何も起こりませんでした・・


『(グ、グルゥ?)あ?あれ?』


幾ら力を籠めて息を吐き出しても

それは、ただの息で草むらの葉を揺らす程度の

働きしかしてはくれなかった。


『(グルゥ、グルルゥウウウ?)もしかして、魔法みたいにイメージするのかな?』


小説などで魔法はイメージが大切だと

読んだ記憶のある俺は、すぐに火をもっとリアルに

イメージしながらもう一回、息を吐き出した!


その結果は、またしても何も起こらない・・


『(グオォ~グルゥゥウ?)可笑しいな~何がいけないんだろ?』


首を傾げる俺だったが

ふと頭に幾つかの考えが浮かび上がる



①この世界には魔法が存在しない


②この世界の竜は火が吹けない


③ただの俺が雑魚なだけ



・・・この3つが浮かび上がるものの

俺としては③である事を願っている!


だってせっかく竜に転生したのに

魔法がなくて竜は火が吹けないだなんて、あまりにもガッカリだ!


しかし、火が吹けないからには

どうやって目の前の兎モドキを食べようかと

俺が再び、考え始めた時だった。


「キュイイイイィィィィ!!」


何処からか小動物の悲鳴のようなものが聞こえる・・


恐らく小動物が天敵か何かに襲われたのだろうと

心の中で手を合わせ南無南無と呟く俺・・

そして再び、兎モドキを食べる方法を考え始める・・


今、「えっ?助けに行かないの?」と

思った人はいるだろうが断言しよう!


ハッキリ言って助ける気は全く無い!

助けに行っても子竜の俺など大きな熊にでも会えば

即、食べられてゲームオーバーである。


しかし、助ける気などない俺であるが

遠くから漂ってくる匂いにふと思考を停止させられる


『グオ?グルル・・(ん?この匂いは・・)』


ある匂いを嗅ぎ付けた俺は

兎モドキを縛ってある(つた)を銜えて

転がった兎モドキが悲鳴を上げたが無視し

先ほど悲鳴が上がった方向に全力で駆け出す・・


俺が一体何の匂いに釣られたかというと

それは・・・肉の焼ける美味しそうな匂いである。


肉の焼ける匂い=火がそこにある!

そんな方程式が頭の中で成り立った俺は

すぐさま、その場所に走りつく・・


そして様子を伺う様に草むらに潜みながら

顔を覗かせる・・・するとそこには


「ぐきゃきゃきゃ!」

「ぶおっぎゅぎゃ!!」

「ぐげぐげげげ!!」


奇妙な声を上げながら焚き火を囲む

3匹の緑色の生き物がいた・・


そう・・あれは・・

ファンタジーにおいての王道雑魚キャラ!

殆どが悪者として扱われる残念キャラのゴブリンである!


豚の顔を潰し、目玉を巨大化させて緑に着色したような

醜悪な顔を見てしまった俺は改めて


『(マジで此処って異世界なんだな~)』


心の中で現実を確認するものの

一先ず状況確認が先だなと

3匹のゴブリン達の周辺をよく見渡す


すると3匹が囲む焚き火の中には

こんがりと焼かれている(いたち)のような小動物がいた

また、3匹の後ろには木で作られた(おり)の中では

深い緑色をしたリスのような生き物が忙しなく動き回っている。


俺は、一旦後ろに下がり

どうしたものかと考えたものの


やはり、せっかく見付けた火を諦めるのは難しい・・しかし

こんな子竜の体で3匹に勝てるのか?と聞かれれば

答えはやはり否である。


諦めるしかないかと元の道を辿ろうとした俺だが

そこである事に気付いた・・


『(ん?あのゴブリン達ってなんか小さいし武器持ってないや)』


・・・そう、ゴブリンの標準装備であろう棍棒をあの3匹を持ってはいなかった。

そして体長も100cmあるかないか位である。

・・・・・自分が小さいせいで気付かなかった・・


俺も子竜とはいえ(自称)中型犬程度の大きさはある

コレなら勝てるか?・・・と考え始めた矢先・・


「きゅい!きゅいきゅいぃ!!」


再び悲鳴が聞こたのでゴブリン達の方向を向くと

そこでは檻に入れられていた緑色のリスが今まさに

檻から出され、石によって撲殺されんとゴブリン狙われていた。


兎モドキを食べようと模索する俺が言うのも何だが

目の前で愛らしい小動物が撲殺などされれば少々目覚めが悪い・・


『グルゥウ、グルルルルゥ(仕方ないから、出来るだけ頑張ってみるか)』


俺はそう言いながら重い腰を上げ

戦う方法を考えながら静かにゴブリン達に近寄るのだった。



草木が生い茂る森の中・・そこでは、ゴブリンの子供達が

初めて狩りをして捕まえた獲物を見せあい・褒めあいながら

楽しそうに談笑をして、獲物を焼いていた・・

しかし・・ゴブリンの子供達は知らない・・

今、自分達の後ろで赤い目を爛々に光らせた黒竜が

自分達の事を狙っているということを・・

漸く主人公が戦います!

因みに主人公が気付いてないだけで

主人公の中型犬サイズは結構大きいですw

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ