第15話 迷子捜すのって大変だよね
珍しく真面目なお話
王との謁見の翌日
此処は、エキスペル王国の首都ラエザルにある
冒険者ギルドのとある一室での事
そこには、およそ15人程度の冒険者達が集まっていた。
「さて、お前ら今日集まってもらったのは
他でもない国王様からの緊急な任務を伝えるためだ」
ラエザル冒険者ギルドのギルドマスターであるガイアは
普段の砕けた雰囲気など微塵も感じさせないような
重苦しい気配を纏って目の前の冒険者達に語りかけた
「コレは、この国の重大な危機でもある
俺は、お前らを信用しているが万が一の事があっても
この情報は、国外には決して洩らすんじゃねぇぞ」
いいなとばかりに険しい表情で念を押すガイア
そんな彼に彼を信頼する冒険者達は勿論だとばかりに頷いた。
「それじゃあ伝えるぞ、今回の緊急任務は
今、行方不明となっている
国王様の一人息子であるエルヴィル様と
そのエルヴィル様の側近騎士であるライハード殿の捜索だ」
その言葉に何を話すのかと興味を抱いていた冒険者達がざわめく
それもその筈、国王の息子であるエルヴィルはこの国唯一の王子であり
何時かは、この国の国王となりこの国を支えていくはずの重要人物である。
何故、王子という本来厳重に警備され守られる存在が
行方不明となっているのかという不審と疑問に冒険者達がざわめくも
ガイアは手を軽く上げ、彼らをせいした。
「それぞれ言いたい事があるのは分かるが
今は黙って聞いていてくれ」
「お前らも知っていると思うが、実は先日
エルヴィル王子が先月の獣害で被害にあった
地域の視察を行う為、現地に赴いたんだ
勿論、護衛として約50人の選りすぐりの騎士や魔術師を連れてな」
此処までは、冒険者たちも知っていた事であった。
また、獣害というものは時々発生する獣が異常に凶暴化し
周囲に存在する町や村を徹底的に破壊する災害の事である
今回の獣害での視察という物も冒険者や町の人々に広がっていたが
エルヴィル王子が行方不明になっているという
情報までは知らなかったのだ
「まぁ、エルヴィン王子が行方不明なんて
他国に知られたら大変だがらな
この情報はこの国でもトップクラスの秘密情報だ
お前らが知らないでも無理はない」
ガイアが言ったとおりエルヴィン王子がいま行方不明という情報は
他国にとっては、このエキスペル王国に恩を売る、または脅しの材料に使うなど
様々な用途に使う事が出来るエルヴィン王子を手に入れる事ができる
重要な事実なのである
「まぁ、エルヴィン王子が行方不明になったのは
不幸か幸いかヒドラの魔境のすぐ傍での事だ
他国も迂闊には近づけん
実をいうと先日の視察でエルヴィン王子とその護衛は
何者か、からの襲撃を受けた・・まぁ恐らくは他国だろうがな
その際、エルヴィン王子は行方不明になったと聞いている
また、その護衛たちの多くは負傷し捕らえた襲撃者はすべて
捕まった瞬間に自害し事情は聞けなかったそうだ」
「なっ!?襲撃って!それにヒドラの魔境って一大事じゃないですか!」
一人の冒険者が悲鳴のような声をあげるが無理はない
ヒドラの魔境というのはエキスペル王国のすぐ傍に存在する
巨大な山々がある場所の事である
そこには、BやCランクの契約獣が徘徊し
数年に一度はAランクの契約獣も確認されているらしい
それゆえ、あまりの危険さに迂闊に魔境に立ち入る事もできず
本気の覚悟で契約獣を探す冒険者にしか魔境に立ち入る許可はおりない
「あぁ、だからいち早くエルヴィン王子を探しに行かなければ成らない」
「ギルマス、エルヴィン王子がヒドラの魔境以外に
行ってしまったという可能性はないんですか?」
ガイアはそう言った冒険者の言葉に首を横に振る
「いや、ソレはないな今回王子たちが使用した道で
襲撃されたと考えられる場所を進むと小さな村があるんだが
村人に事情を聞いたところ王子たちの亀車が通った形跡はないらしい
そうなるともう進める道は、ヒドラの魔境しかないという事だ」
冒険者たちの中に静寂が訪れる
中には厳しい顔つきで何かを考え込む者もいた
今回の件はソレほどまでに難しい事なのである
元々、ヒドラの魔境は危険地帯であり恐らく王子が無事でいても
その魔境の中を突き進んで無事で居られる確立は100%中
おそらく40%がいいところであろう
そして40%を勝ち取り王子と共に魔境を出ることが出来ても
その後には、王子を襲撃した者達が潜伏していても可笑しくはない
・・・いや、きっと再び襲撃してくるだろう
相手もヒドラの魔境で王子が生き残っている可能性が
限りなく低いといってもその目で王子が死んだ事を確認せねば
襲撃者を送った根源の者達も納得はしないからだ
ソレゆえ、今回の依頼には
1:ヒドラの魔境の何処に居るかも分からない
エルヴィン王子とその騎士の捜索
2:王子を連れて魔境を脱出
3:王子を狙った襲撃が再び起こる可能性があり
ソレを潜り抜けながらの国への帰還
この3つの難関を突破することが重要と成るのだが・・・
「無理・・だろ」
冒険者の中からポツリと声が響く
他の冒険者も口には出さないが同じ意見だった。
そもそも、希望を持つために考えないでいるが
エルヴィン王子が生存しているのかさえ危ういのだ
そんな人物を探しに凄腕の冒険者が10人入ったら
4人しか出て来れないような魔境に探しに行く事など
中々、できるものではなかった。
「あぁ、言っておくが今回の任務は強制ではない
王子行方不明の情報は秘密にしてもらうが
行きたくない奴は無理に連れて行くつもりはない」
キッパリと言い切るガイアの言葉に数人は
驚いたような表情で彼をみた。
「その・・ギルマスは今回の任務どうするんですか?」
「んぁ?俺か?俺は行くに決まってんだろ
この任務にはエキスペル王国の未来が掛かってんだ
こんな重要なときに俺が動かないで如何する?」
胸を張って断言したガイア・・その姿は正しく
ギルドマスターの称号に相応しい人物だった。
そんな彼に冒険者達は憧れ尊敬する・・だが
この任務の危険性に自分も付いていくと言い切れる
冒険者は中々居なかった・・・しかし
「そうか、ならば俺も行こう」
ふと部屋の隅から声が掛かった。
少し前に出てきた暗殺者AとBは実はすごい凄腕の暗殺者ですw
あと少しで主人公と冒険者達がであう予定w