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エピソード7 出撃

Episode7

登場人物

加地 伊織:主人公

館野 涼子:妹

難波 優美:友達

源 香澄:先生

池内 瑠奈:姉


涼子:「お兄ちゃん、朝だよ、起きて!」

涼子:「ほら、ご飯できてるよ。」


誰かに、揺り起こされた。


寝ぼけ眼で見ると、戸口に立つ優美が固まっている。


涼子:「ほらぁ、優美ちゃんも座って。 ちゃんとご飯食べないと元気でないよ。」

優美:「あ、私は、ヨーグルトで良いよ、買ってあるから。」


もう一度確かめるがやはり、戸口に立つ優美の眼が点


涼子:「お兄ちゃん、お味噌汁さめちゃうよ。」

伊織:お兄ちゃん…

伊織:「って…涼子?」


伊織、ソファから滑り落ちる



涼子、甲斐甲斐しく朝の支度する

涼子、何時ものツインテールっぽい髪を解いている


伊織:「これはこれで、ありかもな。」

優美:「そういう訳にも行かないでしょう…。」


伊織、優美、深い溜息

涼子を椅子に座らせる。


伊織:「お前は玄武なのか?」

涼子:「私は涼子だよぉ」

伊織:「俺の知ってる涼子は、「お兄ちゃん」とか「お味噌汁」とか言わなかったけどな。」

涼子:「涼子、変る事に決めたの。 それで、もっとみんなのお世話をしてあげるの。」


伊織、優美、無言で顔を見合わせる


優美:「涼子、玄武を此処に出してみて。」

涼子:「えぇ? 良いけど…。」

涼子:「出ておいで。」


涼子の合図と共に、首に巻きついていた蛇のビジョンが解けて涼子の膝に降りる。


伊織:「完全に憑依されたって訳じゃないみたいだな。」

優美:「でも、影響を受けている事は確実だわ。」


涼子、玄武を撫ぜる。 触れないんだけど。


涼子:「良く見るとこの子可愛いわよね。」


伊織、ひらめく


伊織:「そういえば、涼子、目隠しは。」

涼子:「えっ、持ってるけど…涼子、もうああいう事は、恥ずかしいかなって…。 でもお兄ちゃんがやりたいって言うなら、涼子は…しても良いよ…。」

優美:「貴方たち本当にどういう関係だったの?」


優美、ちょっと軽蔑の眼差し



香澄:「おはよう。 今度は何の騒ぎ? って和の朝食!」


香澄、登場


香澄:「誰作ったの、これ?」

涼子:「私だよ! 下のスーパーでお味噌も売ってたんだよ!」

香澄:「食べていい? …って、この子誰だっけ。」




伊織:「涼子、どうしていきなり皆の世話をする様になったんだ?」

香澄:「結構美味いぞ、2週間ぶりの味噌汁!」


涼子:「涼子、憧れてたんだぁ。 誰かがご飯作ってくれたり、誰かのお世話してあげたり。」

伊織:「お前の家ははっきり言って育児放棄だったからな…。」

涼子:「だから、お兄ちゃんのお世話が出来て、涼子楽しいよ。」


伊織、苦笑い



香澄:「でもどうしてお兄ちゃんなんだ?」

涼子:「涼子、ずっとお兄ちゃんが欲しかったの。 駄目?」


涼子、じっと伊織の目を見る

伊織、照れる


伊織:「別に…良いけど。」

優美:「あなたねぇ~」


香澄:「まあ、優美の暴走きゃぴきゃぴキャラと違って、取り立てて害は無さそうだし、当面様子を見ようか?」


伊織、優美の顔を凝視


伊織:「それにしても、自分の願望の性格になるんだとしたら、優美ってやっぱり…」

優美:「馬鹿! それ以上言うと…、」

伊織:「何だよ、」


伊織、何故か強気

優美、現在 白虎封印中


優美:「き、きらい。」




香澄:「さてと、昨日キースって奴がよこした手紙だが、」

伊織:「英語だから何書いてあんのかまるっきり…」

香澄:「ポストコード(郵便番号)と日時、それと条件が書いてあったわ。」

優美:「どんな条件なの。」

香澄:「伊織を含む全員で来る事。」


伊織:「やはり、俺を亡き者にするつもりなのか?」


伊織、深い深い溜息


香澄:「それで指定の日時は明後日の正午なんだけど…今晩行ってみようか。」

伊織:「何故?」

香澄:「相手の言う通りにしたら、相手に都合が良いに決ってるじゃないの。 それにこっちは戦う事が目的じゃない。 要するに青龍を取り返せれば良いわけよ。」


香澄、たて肘


香澄:「それに、イケメンゾンビ相手に勝てる方法が未だに思いつかないのよね。 しいて言えば、二人がかりで動きを封じている間に青龍を奪って、後で負傷した仲間を治癒させるくらいかな。」


伊織:「誰が、戦うんだ?」

香澄:「あてに出来そうなのはレベル3の優美と涼子ね。」


伊織:「涼子? 大丈夫かあ?」

涼子:「お兄ちゃん! 涼子頑張るよ!」


優美:「まあ、妥当な判断ね。 問題は私が本当にあてになるかと言う事だけど。」

香澄:「シロの暴走のことか?」



瑠奈:「おはよう、みんな早いねぇ…、おっ! 味噌汁。」




同日19時、バイブリー

結構有名らしいホテルの傍に車を停める。 暗くなるまで時間調整。


涼子:「お兄ちゃん。 あそこのお家すっごく可愛いんだよ。 おとぎ話の村みたい。 ねえ、一緒に見に来てよ。」

伊織:「涼子ぉ、お兄ちゃんはこれから殺されるかも知れないんだぞ、とてもそういう気分にはならないよ。」


伊織、何だか、「お兄ちゃん」が気に入っているかも知れない

香澄、優美、車に戻ってくる


香澄:「当然、伊織はここで待機ね。 ホテルに部屋を取ってきたわ。」

優美:「かなり強引な交渉だったけれどね。」

香澄:「此処からは車一台で行く。 伊織、耳の通信機は未だ生きているわ。 実は、私の耳にも同じものを仕込んである。 これで、お互いに…色んな事が出来るね。」


香澄、頬を赤らめる


伊織:「いや、そうじゃないですよね。 何かあったら連絡ですよね。」


香澄、意味深な沈黙


香澄:「とりあえず、最前線へ戦いに行く妹の最後の望みを適えてあげたらどうかな?」

伊織:「最後言うな!」



伊織、涼子と並んで小川沿いの小道を歩く。


それは蜂蜜色の家と呼ばれているらしい。 今も実際に人が住んでいるらしいが、イギリスの観光パンフレットを見ると「イギリスで最も美しい村」という振れ込みになっていて、観光スポットとして紹介されている。


確かに美しい気がする。 というか、ダンジョン冒険RPGの村っていう雰囲気だ。 美形な若者が一人、村の風景画を描いていた。


涼子:「見て、お兄ちゃん、あの人上手だね。」


若者は二人に気付き、人懐っこく微笑みかけてきた

二人も思わず微笑み返す


伊織:「こっちの人は誰にでも愛想良く挨拶するんだな。」



伊織、不意に立ち止まる

涼子、伊織に振り返り、頬を染める


伊織:「涼子。 気をつけるんだぞ、絶対に無理しないで、危なくなったら直ぐに逃げるんだよ。」

涼子:「分かってるよ。 香澄さんが言ってたじゃない。 契約者は殺されないって。 だから、きっと大丈夫だよ。」


涼子、おとぎの村で夕陽に染まる


涼子:「ねえ、お兄ちゃん。 涼子のお願い聞いてくれる?」

伊織:「何だよ、改まって。」

涼子:「キスして。」


伊織、困る。

伊織、ちょっとだけ。




優美:「そろそろ行くわよ。」


優美、戻ってきた二人に車から声をかける


香澄:「伊織、通信機のスイッチをonにしておいてね。 あと、これホテルの部屋の鍵よ。 ベッドで待っててね。」


伊織、さらっと流す

瑠奈、助手席で緊張、半泣き

涼子、後部座席に搭乗


伊織:「優美。 気をつけろよ。」

優美:「あら、私にはお別れのキスしてくれないのかしら?」


優美、意地悪そうな眼差し

伊織:見てたのか…


優美:「伊織、封印を解いて。 コインの片方を私に頂戴。」


伊織、コインの半分を優美に手渡す


伊織:「頼んだぞ、シロ。 優美を護ってくれよ。」




伊織、遠ざかる車を見送って、とぼとぼとホテルに向かう。

その入口で、一人の若者が立ちふさがる。 さっき、絵を描いていた若者だ。


アリスター:「カジ クンだね。」

アリスター:「始めまして、私の名はアリスター。 レイチェルの手の者だ。」

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