エピソード4 前夜祭
Episode4
登場人物
加地 伊織:主人公
館野 涼子:意外と世話好き
池内 瑠奈:酔っ払い
源 香澄:酔っ払い
難波 優美:ワインオープナ
涼子の様子がおかしい。
昨日あんな事があったばかりだからかも知れないが…とにかく感情表現が希薄なのが涼子らしいと思っていたのだけれども、今日は少し違っていた。 何度も何度も伊織の顔を見つめてくる。 これまでにも無表情に伊織を観察してくる事は何度か有ったのだが、それとも違う。 何だか潤んだ瞳でほーっと見つめてくるのだ。 そして頬を赤らめる。 この反応…どこかで見た事がある。
そこへ香澄と瑠奈が運転練習から戻ってきた。
香澄:「何回ワイパー動かせば気が済むのよ、いい加減なれなって!」
瑠奈:「香澄ちゃん厳しすぎ! はっきり言って鬼ね。 大体左手が忙しすぎるのよ、シフトでしょ、ウインカーでしょ、ハンドルでしょ、」
何時の間にか「香澄チャン」に昇格している。
伊織:池内さんって案外人懐っこいんだ。 …と言うか友達居なかったんだろうな~、今まで。
香澄:「でも、まあ大体OKよね。 明日、仕上げにオックスフォードまで行って見ましょう。」
二人は大量のスーパーの袋を携えていた。 このマンションは一階が大手チェーンの巨大スーパーになっていて、大抵のものはそこで手に入る。 流石に日本の24時間コンビニエンスと言う訳には行かないが、それでも結構夜遅くまでやっているから便利である。 伊織も昨晩トランクスを買い増しに行った。 当然、香澄に色々からかわれたのだが、それは又の機会…。
伊織:「買いこんで来ましたね。」
香澄:「パーティやりましょう。」
伊織:「何で又、パーティ? なんですか??」
香澄:「突撃前の前夜祭よ。」
伊織はスーパーの袋を受け取ると、中身をテーブルの上に並べていった。 大量の各種酒とソフトドリンク、それと鳥の丸焼きにハム、ピザ、レディミール(惣菜)、スナック類…。
伊織:「何だか、楽しそうだな…。」
優美:「私の食べられるものが無いじゃない…。」
何時の間にか優美が隣に立っていた。 そういえば、優美がヨーグルト以外に何かを食べるところを見た事が無い。
伊織:「お前、一体何なら食べられるんだ?」
優美:「生野菜サラダとヨーグルトと果物。 ちゃんと覚えておいてよね。」
伊織;「だから大きくなれないんだぞ…。」
言いかけて思い出した。 この女性の前で身長の話はご法度だったのだ…、以前それで殺されかけた事がある。
優美はジロッと伊織の事を一瞥すると、意外におとなしく部屋へと戻っていった。
香澄:「誰か料理できる人居る? …居ないよね~。」
瑠奈:「まずは飲むましょう!」
香澄:「涼子、悪いけどレディミール温めてくれる? 針で何箇所かラップに穴開けてレンジでチンすれば良いだけ。」
香澄、瑠奈、あっと言う間に缶ビール一缶空ける。
伊織:何だか、嫌な予感がするな…
涼子が甲斐甲斐しく温めた惣菜を運んでくる。 不思議な事に、何だか嬉しそうだ。
香澄:「何これ、外れ!」
瑠奈:「美味しくない~。 だからクリームパスタにしようって言ったのにー。」
香澄と瑠奈は、これまた不思議な事に意気投合している。
伊織:「たしかに美味しくないな…これ。」
涼子:「…」
伊織、涼子、別のテーブルで細々と食事
伊織:「鳥の丸焼き食ってみない? なんだか上手そう…」
伊織、涼子と鳥を切り分ける。
伊織:「まずい…というか、味がしない。 塩かけてみようか。」
涼子、ほーっと伊織の顔を見つめてる。 再び頬が赤い。
あっと言う間に缶ビールの空き缶が増えていく。
伊織:まだ夕方だって言うのに、何で大人って言うのはアルコールを飲みたがるんだろうか?
30分経過、…そろそろイギリス飯批判も話題が尽きて、伊織が餌食になる
香澄:「伊織もこっちに来て飲もうよ。」
伊織:「俺、未成年だってば。」
香澄:「こっちじゃ未成年だって少しくらいは飲んでも良いって事になってるの!」
無理やり引っ張られて香澄の隣に座らされる。
香澄:「昔は水が危険だから子供は皆ビール飲んでたんだって。 知ってた?」
香澄、自分の使っていたグラスを伊織の前に置く
グラスの淵に、リップの跡が残っている。
グラスに濃い褐色の液体が注がれて…生クリームの様なきめ細やかな泡がグラスの淵を覆っていく。
伊織:これが、…ビール。
瑠奈がじっとこっちを見つめている。 何だか口元がニヤニヤしている。
伊織、グラスに口をつける
伊織、泡しか口に入らない
伊織、思い切ってグラスを傾ける
伊織、何だか苦い液体が舌を侵食していく
香澄:「どう? 初めてのビールは?」
伊織:「微妙~」
伊織、口元泡だらけ
伊織:「でも、意外に悪くないかも知れない…。」
瑠奈:「伊織、香澄ちゃんばっかりずるくない?」
瑠奈、視線が厳しい
伊織:やばい、「伊織」になってる…
香澄:「駄目よ、あんたこの前 酔った勢いで伊織にセクハラしたでしょう。」
瑠奈:「してないわよ、そんなこと。」
伊織:いや、しました
香澄:「大体、要求不満溜めるからいけないのよ、日々発散しないと…。」
瑠奈:「香澄ちゃんは発散しすぎ! 空港でも伊織にディープキスしてたでしょう、みっともない。」
香澄:「なんか、ぷにょぷにょしてて気持ち良いのよね。 全体的に…」
香澄、伊織に抱きつく
伊織:俺は抱き枕かなんかなのか?
20分経過、
香澄:「伊織、今度はワインに挑戦してみようか。」
伊織:なんだかドキドキしてきたぞ。 これは良い事なのか? それともアルコールによる副作用なのか??
香澄:「空ける奴何処? 涼子ぉ…キッチンにワインオープナー無い?」
涼子、一生懸命探すも見つからない
香澄:「どっか無い? 優美、優美ってばあ! くるくる回す奴作ってよ。」
優美、のそのそと部屋から出てくる。 かなり不機嫌そう
優美:「全く、シロをなんだと思っているのかしら。」
香澄:「優美、あんたもこっち来て座んなさい。」
優美:「絶対にイヤよ。 酔っ払いほどたちの悪いものは無いわ。」
香澄:「あんた、そんなこと言うと桜川に告げ口するわよ。」
優美、いきなり真っ青になる
優美:「ば、馬鹿じゃないの! あなた。 …な、何言ってんのよ、友達の言う事なら何でも聞くに決まってるじゃない…」
優美、明らかに挙動不審、動きがぎこちない
優美、凍りついた表情のまま伊織の隣にチョコンと座る
優美:「わ、ワインオープナを作れば良いのよね…」
優美、声が上ずっている。
瑠奈:「何なに? 桜川って誰なの?」
優美、沈黙
缶切があっと言う間にワインオープナに変形
何だかシロもオタオタしている
瑠奈:「おおぅ、イタリアの赤…」
香澄、優美のグラスにナミナミと注ぐ
香澄:「良いから、優美も飲め!」
優美:「わ、分かったわよ。」
優美、半泣きになってる
20分経過
伊織:「渋い…」
伊織、言いつつも、既にグラスに二杯目のワイン
テーブルには既に2本のボトルが空いている。
横を見ると…優美の様子が変だ。 明らかに眼が虚ろ。 顔が赤い。
伊織:「お前、大丈夫か?」
優美、いきなり伊織のむなぐらを掴む、
優美:「だいたいあんたは、誰彼お構い無しにちやほやして!」
優美、眼が怖い
優美:「私にもキスしろ、」
伊織:「えっ?」
優美、伊織をソファに押し倒す、馬乗りになる
香澄:「おっ! 行っちゃうのか?」
優美:「あんた、吾妻にも香澄にも池内にもキスしたでしょう!」
優美、問答無用で伊織にキスしようとする
伊織、それを辛うじて回避する
伊織:「まて、優美、落ち着け! お前こんな事で本当に…」
香澄:「よーし脱がすぞ! 解剖だぁ!」
香澄、伊織の両腕を取ってばんざいの格好にさせると、自分のお尻の下敷きに
香澄、伊織のTシャツを指でなぞって、すっぱりと両断する
瑠奈:「伊織脱がされちゃうの? …手伝っちゃう!」
瑠奈、伊織の両足をお尻で押さえつける。 ズボンのベルトを外し始める。
伊織:「止めろー! 優美、助けてくれ」
伊織、必死の形相
優美、伊織の腹に馬乗りになったまま
優美:「助けて…くれ?」
伊織:「助けてください…。」
優美:「…」
伊織:「優美さま。」
優美:「いいじゃない、減るもんじゃないし。」
優美、ちょっと赤くなる
瑠奈、ジーンズを引っ張りおろす
伊織、いよいよトランクス一枚に
香澄:「なんだかんだ言ってる割に…」
香澄、にんまりしながら伊織の胸に…
伊織:「こいつら、コロウより たち悪い!」
伊織:「涼子、…たすけて!」
涼子、頬を赤く染め 呆けた表情で伊織を見つめてる
気が付くと…全身湿気に包まれて冷たくなる
まとわり付く水蒸気が皆の身に着けているものを…溶かしてしまう
馬乗りになった優美の裸が目の前に! 濡れた内腿の感触が、…危険!!
伊織、鼻血
伊織:「涼子、お前! 何やってん!」
優美:「ひゃん!」
伊織:「ばか! 何 変な声だしてんだよ!」
優美:「だって、なんか当たった…」
伊織、理性限界突破!
伊織:「もう限界だ! シロ! たすけろ~」
瞬間! 電流が水に濡れた一同を痺れさせる!
…数秒の痙攣の後、倒れこむ一同。
伊織、ヨウヨウノ体で逃げ出し、トイレに駆け込む
香澄:「こらぁ、そこで篭城するなぁ。 ここトイレ一つしか無いんだってばぁ!」
瑠奈:「もれるー」
伊織:「知らん!」